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満州っ子 平和をうたう
TVドラマ「赤い月」をみた
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作成日時 : 2008/09/18 09:09
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なかにし礼の「赤い月」がテレビ東京で二夜にわたって放映された。旧満州で生まれ育ったものにとっては見逃せず五時間をいっきに見終えた。ストーリーもさることながら自分の少年期、少女期を過ごしたあの時代と赤い夕陽の沈む雄大で無垢なまでの大地を思い遣って、少なくない衝撃を受け郷愁を感じたに違いない。
国益に従わされた 庶民の痛恨の想い
−テレビドラマ「赤い月」を見てー
しかし、表現をはばかるまでの辛酸をなめた人々にとっては、男と女の情念の絡みを中心にすえた全編の話の展開には眼を背けたくなる焦りにも似た想いが込みあがってきたことも否めないだろう。
鮮烈に甦ってきたシーン二つ
僕にとって鮮烈に甦ってきたシーンが二つある。一つは、時おり、いや随所に流される「何日君再来」の呟きにも似た歌唱である。メロデイーもさることながらその歌詞だ。「好花不常開 好景不存在・・・」と、今でも記憶は確かであり、懐かしさに口ずさむほどだ。一説ではこの歌は、当時まだ進取の気風にとみ、躍動感あふれる八路軍(共産軍)の中から生まれた「別離の歌」だという。凄惨な抗日戦争のさなか、そこには親子の、そして若い男女の悲しくも辛い別れがあったのだろうか。「あなた、いつ帰るの!きっと帰って!」という意味だ。戦後一時期この歌は軟弱だということで中国国内では禁止されたと聞く。
二つ目は、ドラマの最終盤、波子に扮する母親・高島礼子の台詞(せりふ)。「ほら、見なさい、あれが日本よ。ほんとうに日本に着けたのよ!」と指さす内地の山々に子どもたちの目が涙であふれている。同じことが僕にも甦る。引き揚げ船「興安丸」で釜山から山口県の日本海側・仙崎港の沖合いに辿り着いたとき、朝もやのなか日本の山々が浮かび上がっている風景に眼を見張る僕。「あれが日本よ、山があるでしょう、緑でいっぱい。満州では見られなかったものね」とのおふくろの言葉がわすれられない。
激動の時代をもっとダイナミックに描けば
とにもかくにもこのドラマは、六十年前の僕に戻らせてくれた。さまざまなことが思い出されて書きつくせないが、「はっ」と思いついたことがある。この「赤い月」をあの山本薩夫さんに撮ってもらったらどうなっただろう。きっと日本の満州国での悪行の数々をもっとリアルに、関東軍の無様な姿を描き出してくれたに違いない。それに、いまのイラク侵略戦争の米・英軍の蛮行と重ね合わせて。
加えて、国益に従わされた人々の痛恨の想いを、いたわるように切々として描き、激動の時代をいつも背景ににじませて庶民の心をしっかり掴む山本さんです。常日頃、山本監督は「映画は分かりやすく、楽しくなくては・・・」(山田和男「日本映画の歴史と現代」)が口癖だったという。
もし、存命だったらおそらく得意の娯楽性をふんだんに織り込んだダイナミックでスペクタクルな作品に仕上げたのではなかろうか。テーマがテーマだけに惜しまれてならない。
戦争がいけないのよ。戦争があったからなのよ
ラストシーンで「戦争がいけないのよ。戦争があったからなのよ」と美咲こと市原悦子のさけぶような声がこのドラマの原作者・なかにし礼氏の、演出者・長尾啓司氏の私たちへ送るメッセージだと理解していることは言うまでもない。(04年5月・永井至正記)
直木賞作家・なかにし礼の実体験を基に書かれた同名小説を映画化したヒューマンドラマ。旧満州牡丹江を舞台に繰り広げられるテレビ東京40周年記念作品。映画の感想記は扇橋診療所機関紙「けんこう」に永井至正が投稿したもの。
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