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zoom RSS 山田和夫描く「特攻映画」A

<<   作成日時 : 2011/06/02 06:06   >>

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「その瞬間、彼らはまだ生きていた」ー特攻を描いた日本映画の歩みー映画評論家・山田和夫

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 (二) 私は特攻を「志願」した
 
 1945年8月15日、私は岡山県倉敷海軍航空隊で水上特攻隊「震洋」の要員として敗戦を迎えた。17歳である。

 前年四月、旧制中学四年終了で第14期海軍甲種飛行練習生として鳥取県美保海軍航空隊に入隊した。当時の学校教育とは社会環境のなかで、幼児から日本は神の国と教え込まれ、天皇のために命をささげることは日本人の名誉とされて成長、戦争の急迫がひしひしと感じられるようになって、ひたすら直線的に国のために少年航空兵を志願した。

 入隊した海軍の生活は、今回新藤兼人監督が32歳で海軍に召集された体験を「陸に上がった軍艦」(監督・山本保博)に映画化した、あの通りの愚かなまでの野蛮な制裁と訓練の日日。それで日本の戦争と軍隊に疑問を抱く思考力さえ、当時の私たちは持ち得なかった。そして戦局が一層に悪化、少年航空兵の訓練は中止され、1944年末には特攻隊要員(「掌特攻兵」と呼ばれた)に志願せよと申し渡される「志願」とはいえ、「志願」以外に兵士にとって選択肢は事実上ない、いやそれ以外の選択肢を知らない環境にいた。「命令」におる強制と同じだ。


 石原特攻映画で大西中将が「特攻は命令ですか?」と質問されたとき、「志願という名目の、命令でやるのだ」と答えるところがある。この偽瞞(ぎまん)に満ちた特攻美化映画でわずかに真実に近づいた部分、「一晩志願するかどうか、考えろ」と上官に言われた晩のことをいつまでも忘れることが出来ない。まだ何も知らない15〜16歳の少年でも、絶対的な死しか待たない特攻を選ぶことを迫られたとき、絶望的な苦悩しか生まれてこない。

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 あの夜の苦しみをこれからの若者に二度と味あわせたくない。その気持が戦後生き残った私を反戦平和の道に立たせた最大最強の原因であった。そして全員が「志願」、1945年4月、水上特攻隊「震洋」(爆弾を積んだベニヤ板のモーター・ボートで突入する)の特攻要員として岡山県倉敷海軍特攻隊へ移った。そして9月1日に実施基地に出発する二週間前に敗戦を知った。

 「もし敗戦がニ週間おそければ・・・・・・」と書き、アメリカのニュース映画ではじめて特攻機突入のシーンを見たとき、「涙は出た」けれど到底「拍手」をする気になれなかったのも、私自身にささやかな特攻体験があったからである。もちろんまだそのときには、自分の特攻志願が侵略戦争遂行に奉仕した無知の愚行であったとする、はっきりした認識に到達していなかったけれども、そしてそのような軍国主義の呪縛(じゅばく)から完全に解き放たれるまでには、もう少し社会科学を学習し、戦争の本質を理解、とくに自分が何も知らないまま他民族を侵略する犯罪的な戦争を「国のため」と思い込んでいた主観的な世界のあやまりに気づく必要があった。

 
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 その「あやまり」を気づかせるのに、大きな力となったのは、戦後日本映画の急速な高揚から登場した黒沢明監督の「わが青春に悔いなし」(1946年9であり、亀井文夫・山本薩夫共同監督の「戦争と平和」(1947年)である。「わが青春に悔いなし」は戦前・戦中を通じて反戦運動に命を賭(か)けた夫の遺志を継ぎ、さまざまな圧迫と屈辱に耐えて生き抜いた女性を描いた。私が何も知らずに特攻にまで盲目的に突進していた時、あの戦争が侵略戦争であると真実を訴え続けた人たちのいることを教えた。

 「戦争と平和」は南方への輸送船が撃沈され、中国沿岸に漂着した日本兵が、中国を流浪するうちに日本の侵略が中国民衆にあたたおそろしい災害と罪悪を知る。この映画は劇映画ではじめて日本の戦争が侵略である本質を映像によってあばき、私を呪縛していた純粋な祖国への献身という観念を根本的に打ち破ってくれた。たとえ特攻志願した自分の気持ちに偽りがなかろうと、客観的には大義なき戦争への一つの盲目的献身にすぎなかった。それが真実であった。

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