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zoom RSS 北原白秋と満洲公主嶺 土屋洸子

<<   作成日時 : 2016/01/02 05:21   >>

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1990(平成2)年3月28日、所沢市立図書館のカウンターで、「あった!」と私は思わず大きな声を出してしまった。「秋の牧場」の楽譜をとうとう探しあてた日のことで、例年になく早い満開となった桜の花を見ながら、だれかに「聞いて、聞いて」と話かけたい思いで一杯であった。(会報「満州公主嶺」合本)

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 昨年秋、「北原白秋が書いた『公主嶺』という詩を公主嶺学校の会報に載せたことがある」との広岡克己氏(陸軍公主嶺学校勤務)からの電話で、その詩の載っている『満洲地図』(北原白秋著、富樫寅平装幀挿絵、フタバ書院成光館、昭和17年9月)を知り、白秋と公主嶺のことを探し始めて、半年がたっていた。
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 九州柳川に生まれ、膨大な作品を残した歌人、詩人として有名な北原白秋(明治18年1月25日〜昭和17年11月2日)は、昭和5年2月末から4月6日までの40日間、満鉄の招きで満洲を旅行した。3月6日、大連に上陸して順次北上し、3月17日公主嶺の消印がある絵はがき2枚を妻菊子・長男隆太郎にあてて出しているから、この日、白秋が公主嶺に立ち寄ったことは確かである。 

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 白秋は帰国した後、満洲の風物や地名をテーマに数編の詩や二百数十首の短歌を書いた。そして、公主嶺の印象を『赤い鳥』(昭和6年9月号)に「秋の牧場 満洲公主嶺」として、また「公主嶺」と題する短歌(後注)を『日本評論』(昭和14年8月号)に発表した。
 白秋作詞「秋の牧場 満洲公主嶺」は草川信によって昭和6年8月15日に作曲され、同じく『赤い鳥』(同年11月号)に楽譜が掲載された(草川信の子息草川誠による).。



 昭和17年、すでに病床にあった白秋は、4月下旬から5月上旬の1週間に、口述筆記で80編の詩を集中制作し、それまで『赤い鳥』などに発表した作品22編と合わせた合計102編を「満洲地図」という詩集とした。「公主嶺」は「満洲地図」の中では、比較的早い時期の作品といえるだろう。

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 『赤い鳥』と『満洲地図』の「公主嶺」を比べてみると、題名を前者の「秋の牧場 満洲公主嶺」を後者では「公主嶺」とし、各聯1行目(5回)の「ころりん、ころりん、音がする」はすべて「ぱろん、ころんと音がする」に改められ、また、「うまこやし」は、うまごやし」に修訂されている。この作業は昭和17年4月末から5月初めにかけて行われたという(北原隆太郎)。
 北原隆太郎が「『満洲地図』は、思い病床で枯野を駆けめぐった父の夢。いわば辞世の意をこめたようで(後略)」(『白秋全集第27巻月報』岩波書店、1987年8月)と書いているように白秋の凄まじいほどの作品への執念がうかがえる。
 『満洲地図』の挿絵を描いた富樫寅平は、昭和16年ごろハルビンまで旅行した。白秋はこの歳絵が気に入って、コンビで日本の旅の本を出そうと話したそうだが、果たせない夢となった。(富樫夫人夏江の妹下田菊枝、田辺由利江による)。


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 「秋の牧場」は、「やまびこ児童合唱団」(主宰一瀬公弘、甲府市)によって、昭和60年4月29日に白根桃原文化会館で歌われた。
 昭和6年9月号の『赤い鳥』には「秋の牧場」の副題「満洲公主嶺」が小さい活字で付されているが、同年11月号の楽譜では省かれている。それで、「秋の牧場」が公主嶺を歌ったものと分からず、公主嶺関係者の目を引かなかったかもしれない。明るくのびやかで歌いやすい「秋の牧場」を、ぜひ多くの人に歌ってもらいたいものである。
 広岡克己氏は9月16日に開かれた第7回同窓会に、大切に保存されている『満洲地図』を私に見せたいと出席された。この日は、私にとって春3月に続いて2回目の大感激の日となった。多くの方のご協力によって「白秋と公主嶺」が明らかになったことを、心から感謝している。


】「公主嶺」という小題の短歌2首
 
 ・公主嶺馬駆ける見れば騾馬(らば)にして 著(ママ)ぶくれの子が風あふり来る
 ・寒々(さむざむ)と屯(たむろ)し移る羊にて 端(はし)驚けば皆騒(さわ)たちぬ
 (昭和14年11月28日発行の歌集『夢殿』では末尾が「騒ぬきぬ」に直されている)


■北原白秋作詞・草川 信昨曲 「秋の牧場」楽譜
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