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zoom RSS 「雲流るる果てに」−22−

<<   作成日時 : 2010/03/24 13:36   >>

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西田高光 [にしだ・たかみつ] 大分師範ー大分県出身ー神風特別攻撃隊第五筑波隊長、昭和20年5月11日、鹿児島県鹿屋基地発進、南西諸島にて特攻死。23歳 搭乗機零戦。

▼空青く 雲白く 海碧し
画像
   進出命令下る
 
 四月二十五日 (昭和20年)

 愈々出撃も余す二三日だらう。明日より菊水四号作戦あり。一号より三号まで多大なる戦果と共に、数多の戦友は散華した。

  ひととせをかへり見すればなき友の
  数へ難くもなりにけるかな

 
 四号作戦終れば、愈々俺の中隊突入の番だ。最後まで自重せん。沖縄は断じて敵にゆづらず。生命もいらず、名誉も地位もいらず、只必中あるのみ。深山のさくらの如く、人知れず咲き、散るべき時に潔よく散る。何の雑念も含まず。
 夜十時、進出命令下る。

 
 四月二十六日
 
 〇五〇〇起床、進出準備完成。
 〇八〇〇より司令、飛行長、その他上官より送別会をして頂く。
 十一時頃ダグラスにて九州に向け出発。地図を見比べ、空より飛び去る祖国に訣別す。再び見る事なき祖国の島々、またなつかしく、うるはしき佐多岬を経て佐賀の関の煙突を望む。なつかしき故郷の一角だ。着きて富高の地、この土の連なる所に故郷の父母、兄弟、恩師、教へ子、友あるを想ひ、亦なつかしさひとしほなり。最後の壮挙に征かんとし見る九州の緑、ふるさとの山河、幼き日の思ひ出が次々と浮かんで来る。

  
  この土のつらなる果てに母ありて
  明日の壮挙の成るを祈るらん

 
 暗い防空壕の中で爆弾の音を聞きながら・・・・・・。必らず命中する。生涯の総力をかけて、今こそ二十三年の生けるしるしを示すのだ。我が五体極めて壮健なるをよろこぶ。
 
 弟 へ
 
 久光、あとは頼むぞ。続く弟多くして兄は幸福だ。莞爾として断乎やる。良勝、実達の面倒を見て立派な日本人として共に進め。

 久光は随分叱ったな。兄として何も兄らしい事もせず、せめて一度ぐらひ酒でも間に置いて話がしたかった。お前はいゝ人間だ。随分叱りいじめたが、それもお前のためにと思ってな、枕元にパイ缶(パインアップルの缶詰)がある、お前にやりたいが・・・・・・。
 男らしい男になれよ、俺の分も孝行してくれ、たのむ。
 では元気で。
 健康は生きるためにも絶対に必要だ。

 
 五月一日
 
 朝より梅雨の如き雨なり、夜ビール十本入手、大いに飲みて歌へば空晴れて星出づ。明日は出撃のことならん。
 吾今日も生あり、明日の必中にこそ捧げん。

  
  訣別の歌  
  
  云ふ勿れ君よ
  別れを世の常をまた生き死にを
  海原のはるけき果てに
  熱き血を捧ぐる者の大いなる胸を叩けよ
  満月盃に砕きて暫したゞ酔ひて勢へよ
  吾等征く沖縄の空
  君も亦これに続け
  この夕べ相離れまた生死相へだつとも
  何時の日にかまた萬朶の櫻を共に見ん
  云ふ勿れ君よ
  別れを世の常をまた生き死にを
  空と水うつところ
  悠々として雲は行き
  雲は行けるを
 
 
 五月三日
 
 雲量一〇、愈々沖縄の最後的決戦、即ち菊水五号作戦は明日を持って開始さる。夜、後続特攻隊来たる。八時頃コンソリの奇襲を愛く。飛行機炎上数機。人員数名死傷、夜より愈々決戦の火蓋切らる。一夜中爆音、陸続として特攻機沖縄に向かう。
 
 五月四日
 
 菊水五号作戦第一日、〇二〇〇頃より開始。夜明けに数十機の特攻機出撃す。爆装戦闘機隊、桜花隊、彗星艦爆隊、他隊より征空隊陸続として出撃。陸軍も同様、大特攻隊は沖縄周辺の艦船に突入す。
 吾等が目標の敵機動部隊は石垣島、宮古島付近南下中のため、攻撃命令下らず。ただあの友この友を失ひつゝ、悲憤今日も亦生き延ぶ。 


         つづく 

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