満州っ子 平和をうたう

アクセスカウンタ

zoom RSS 「雲流るる果てに」−25−

<<   作成日時 : 2010/04/05 08:04   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

眞鍋信次郎 [まなべ・しんじろう] ー九州専門学校ー福岡県出身・昭和20年5月25日、南西諸島方面にて戦死、22歳。搭乗機ー銀河ー(「雲流るる果てに」151〜155頁)

    「燕の詩」に思ふ

 姉さん、その後元気に過してをられる事と思ひます。兄さんもその後ずんずんと快方に向かってをられる事と思ってをります。先日ヨシ子の手紙で、又昨年のやうに妙見で町内運動会が催された事を知りました。あの時は兄さんも非常に1元気でしたね。早くあの時のやうな元気を取り戻されるやう切に自分が祈ってゐると伝へて下さい。
 さて、自分がどういふ生活をしてゐるかは、母やヨシ子から聞かれたらわかる事と思ひますが、大変元気にやってゐますから少しも心配される事はいりません。この上とも軍務に精励して、完全に御奉公の誠を尽して参ります。


画像
  散る櫻 のこる櫻も 散る櫻
 
 未だかういう大悟の境地をしかと把握してはゐませんけれど、これは本当に真理だと思ひます。凡そ生をうけたるものはすべて死すべき運命をもって生まれて来ております。必ず死なゝければならないんです。だから死すべき運命をもって生れて来ております。必ず死なゝければならないんです。だから死すべき好機を発見して死ぬ事が出来たならば大いに意義ある人生を過し得た事になると思ひます。御国の為に死ぬといふ事は天地と共に窮りなき御国日本と、とこしへに生きる事であると思ひます。

画像  
  散る時が 浮ぶ時なり 蓮の花

 万一自分が命を御国に捧げるやうな事になった場合は、以上の趣旨をよくわかるやうに母にいひ含めて下さるやう御願ひします。
 永年自分にかゝる積りで苦労されて来られたお母さんですから、折角これ迄そだてゝきたものを亡くすといふ事はつらい事とは思ひますけど、自分としては最上の人生を過しえたんですし、また陛下からのあづかりものである我々は、当然陛下の御為に御捧げ申上げねばならぬものであるといふ事をいって、決してみっともないぐち等こぼされぬやう注意して下さい。

 変な事ばかり書きましたが、しかし散るべき時にはにっこりと散る。だが生きねばならぬ時には石にかぢりついても生きぬく、これが本当の日本男子だと思ひます。御安心下さい。
 も一つ自分の御願ひを聞いて頂きたい。次に書く白楽天の「燕の詩」

 
 梁上に隻燕あり      翩々たり雄と雌と
 泥を銜む両椽の間     一巣に四児を生ず
 四児日夜に長じ      食を索めて声孜孜たり
 青蟲は捕へ易からず   黄口は飽く期なし
 嘴瓜弊れんと欲すと雖も 心力疲るるを知らず
 須臾にして干来往     猶恐る巣中の餓ゑんことを
 辛勤三十日         母痩せて雛漸く肥えたり
 喃々として言語を教え   一一毛廣を刷ふ
 一旦羽翼成り        引きて庭樹の枝に上る
 翅を挙げて回顧せず    風に随って四に散飛
 雌雄空中に鳴き      声尽くる迄呼べども帰らず
 却って空巣の裏に入りて ちうしゅうとして終夜悲しむ
 燕、燕、悲しむ勿れ    爾当に返りて自ら思ふべし
 思へ爾が雛たりし日    高飛して母に背きし時を
 当時父母の念       今日爾まさに知るべし
 
 
 思ひます。しかし真理とは極めて平凡なものです。だがその実行は中々出来ないものです。以上の如く彼等の子を思ふ心、まして我々の両親の我々をいつくしみそだてられた恩の大きさに於いては非常に大なるものと思ふ。色々の大なる苦難にうちかって、我々をこのやうにそだてあげられた御恩について考へてみよう。涙が流れる。どうしてもお母さんだけにはあの苦難の道を考へては、充分に孝養ををつくさなければ、我々の良心がゆるしませんね。自分は現在軍籍に身をおいてゐる故、直接お母さんに孝養をつくす事は出来ない。忠を以てこれにかへたい。貴女とヨシ子は以上の事をよく考へて、よくよく自分の分までお母さんに孝養をつくされん事を伏して懇願する。我々は道義の国日本、忠孝の国日本に生をうけてゐます。姉弟妹三人がっちりと固くスクラムを組んでやりませう。

 理屈ぽい事あかり書いたが、こんな事は貴女にはよくわかってゐると

  
  樹静まらんと欲すれど風やまず
  子養はんと欲すれど親またず
  ゆきて追ふべからざるは親なり

 
 です。以上については、よくよくヨシ子に云ひふくめて下さい。これが貴女に対する最大のねがひです。最後に御両親様に宜敷く、また兄さんの全快の一日も早からん事を祈って擱筆します。
 健康に御注意下さい。
 姉上様                                       信次郎拝 

 

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「雲流るる果てに」−25− 満州っ子 平和をうたう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる