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zoom RSS 「雲流るる果てに」−49−

<<   作成日時 : 2010/09/09 07:41   >>

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本川譲治 [もとかわ・じょうじ] 慶応義塾大学ー東京都出身ー神風特別攻撃隊菊水雷櫻隊、昭和20年5月11日、南西諸島にて戦死、25歳。搭乗機「天山」。

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   聖書を抱きて

 回春の候新緑漸く萌さんとして四囲輝きを増します。
 然し人の子の世界は戦乱に渦巻いて今正に、暗雲天を蔽ふかの如くであります。
 先日は母上様より詳しく我が家の状況並びに都のことなどお知らせ戴き感謝に堪へません。戦局正に筆舌に尽し難く、我々も愈々最後の御奉公を致す時が参りました。幸福なる国に生れ、幸福なる家に育ち、幸福なる希望に生くる感激感謝は限りなくあります。

 我らは今こそ此国のために切に祈らねばなりません。日本の隆盛、然り、天父の嘉し給ふ隆盛を切願します。「イザヤ」「エレミヤ」の言々切々たる正義の声を思ふにつけても我らは祈らねばなりません。

 顧みれば私のために極めて大なる辛苦を以て色々御養育下され、唯々感謝あるのみであります。特に霊的方面に於て我が家は祝福せられあるを思ひ、如何なる外的のものも毀つ能はざる平安を感じます。

 常々御両親様も仰せられし如く、私こそ幸福者の一人であると泌々思ふ次第であります。色々此時に幼かりし日の楽しき思ひ出を懐かしみます。これは人の子として当然の姿であり、決して安価な感傷に非ざることを信じます。私の恩師、多くの先生方、親戚、朋友、知人等一人一人の顔が浮びます。

 一人一人御禮を書く暇もありません。呉々も何かの機会によろしくお伝へ下さい。


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 私は故若林翁の贈られし小型の聖書と、その袋(これは植村環先生の下されしもの)と、讃美歌を持って行くことに致します。聖書こそ人類に与えられし最大の書であり、救の兆、希望の旗であります。実に、草は枯れ、花は落つ、されど主の聖書は永遠に保つなりであります。とにかく我等には永遠の希望、永遠の希望があります。然し「パウロ」の言ったやうに「我は罪人の頭なり」との意識が胸をいたませます。然し『我が憐憫(あわれみ)も蒙りしは主我を首(こうべ)に寛容をことごとくあらはし、この後、かれを信じて永遠の生命をうけしめんんとする者の模範ととなしたまはん為なり。願はく万世の主、即ち朽ちざる見えざる唯一の神に、世々限りなく尊貴と栄光とあらんことを・・・・・・』と叫ばざるを得ません。まことに「ヨハネ」の言へるやうに『恩籠により我ら今神の子たり』『後いかん未だ顕はれず主の来り給ふ時我らこれに肖(に)んことを知る』とあるのは真実であります。
 
 浅野先生よりの最後の激励のお手紙の中にも(これは大事に持って行きます)『我は我に力を与ふる基督によりて一切のことをなし得るなり』とあります如く、我らは唯主なる葡萄の小枝であります。主のため国のため、如何なる所にありても全力奉仕の生涯を送らねばなりません。『我らの国籍は天にあり・・・・・・されば我の慕ふ所の兄弟我の喜び我の冠たる我が愛する者よ、今我が勤むる所に従って・・・・・・堅く主に立つべし』

 私は我が家の上に天の恩籠愈々豊かなるを信じ祈ります。
 我が愛しまつる御両親様、我が弟妹、我らの生命は永遠であります。

 テニスンの歌ひし如く、砂洲を越えるとすぐに私は、私の水先案内にまのあたり遇ふことが出来るのです。健康に呉々も御留意の上、栄光の日に向ひて邁進されるやう切に祈ります。また会う日は遠くないのであります。

 聖句は何処の箇所も私の愛惜するものであります。権威と天来の香りを放つ聖句こそ生命そのものであります。聖句こそ生命そのものであります。暫時なる地上の幕屋より聖句によりて永遠の幕屋を示されたる我らは幸福であります。

 〇二、○子殿、愈々健康に注意して親孝行をして下さい。さうして日本のために世界のために神様のために善き業に励んで下さい。再び会う日は遠くないのです。一度しか来らない人生を本当に悔ひなきものたらしめて下さい。私の最も望む所は堅く信仰に立つことであります。私のやうな躓き多き者も、これが故に永遠を望み、救主にすがりまつるを得るのであります。

 勉強して下さい。世界一流の目標に向って、新しき真理を毎日一つづゝ採る喜びは大きいのです。私も長生きせばこの趣味は忘れられません。では主にありて御平安を切に祈ります。生きてゐればまた書きます。

 復活節もすぎる頃
 我が愛する御両親様
     弟妹へ                                             譲治拝
                                 (註・昭和20年4月7日付消印)


【追記】 クリスチヤン同士で殺し合いさせるなんて!「これが 戦争?」

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