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zoom RSS 「雲流るる果てに」−50−

<<   作成日時 : 2010/09/10 08:54   >>

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飯沼 孟ー横浜専門学校ー神奈川県出身、神風特別攻撃隊第二魁隊、昭和20年5月11日、南西諸島・沖縄方面で戦死。24歳。 搭乗機・零式水上偵察機。(「雲流るる果てに」245〜249頁)

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   憶ひ出の記 (4月12日)
 
 本日朝、佐波大尉他○○○名の特別攻撃隊申渡しあり、私もその一員として加へられた。遂に正式に特攻隊員ちなったのだ。もはや何ものも無だ。何も考へるまい。純一無雑で突入しよう。沖縄ではかうしてゐる間にも、幾つかの生命が敵空母と運命を共にしてゐるのだ。

 日本にだけしかない特攻隊、日本は今余裕が欲しいのだ。比島レイテ、硫黄島、西南諸島と相続いての死闘に、日本はいま疲労してゐる。この疲れを取り返すためには、西南諸島方面の敵艦船を全滅さすことだ。

 午後、幾組かの飛行機○○基地へ向け進出す。館山から一緒だった高木少尉、渡辺功男一飛曹も出た。遠からず俺達も出る事だらう。人生五十年、その半分の二十五年を無事に生き抜いたことも思へば不思議なくらゐだ。子供の頃が思ひ出される。三月十七日三浦君と会ったが、これが最後であらう。三浦君も遠からず行くであらう。

 突っ込む時は、どんなものであらうか?
 さっぱりした何とも云へぬ気持ちだらうと思ふのだが、何となく気に掛かる。

 横須賀も四月七日に帰ったのが終わりとなるかも知れない。それにしても、もう一度両親と兄弟姉妹に会ひたい。先日は母がゐないのでがっかりした。一番不憫に思はれるのは滋雄だ。あまりにもおとなし過ぎる。考へて見ると、自分にもその点が確かにあったかも知れない、軍隊に入ってから大分違って来たと思はれるのだが・・・・・・。

 滋雄よ、もっともっと強くなれ。そして立派な人になってくれ。

 お前が兄の年ぐらゐになった時、どんな人間になってゐるかを見たい。お前は俺と同じやうに地味に暮して行く性かも知れない。お前の好きな事をやって暮せ。しかし大望を抱け。完成せずとも良し。一つの目標を作ってそれに向って真直ぐに邁進するのだ。俺は理想主義を好む。それに到達せずとも一歩でも近づけば良いのだ。次に判断の物差を作れ。それには本を読む事だ。これは非常に便利なものだ。何かあった時、この物差にあてゝ見て、この事は良い事か、悪い事かと直ちに決定する事が出来る。俺は此の物差を得んものと七転八倒したのが、遂に得る事は出来なかった。確固たるものを得よ。現在のお前には少し無理な注文かも知れないが、成人してからこれを読んだら非常に感ずるところがあると思ふ。

 他の人達は、十分自分で過して行くことと思ふ。夫々個性のあるのは勿論だが、強いところが大いにあるやうに思ふ。

 家にゐた頃の俺は、夕食後一家揃って一日の出来事や昔話に花を咲かせるが、最も楽しい一時でした。
 子供の時はとても悪い子でした。海軍に入ってからは、家のためなら如何なる事でもすると云う気持ちなりました。或る時は、そのために、個人主義だと戦友から思はれたこともあるでせう。海軍に入る少し前は、今思ふと、最も物質的に欠乏した時でした。毎日食糧の購入に奔走する時代でした。男の私さへも、浅間しくも食糧の店に出入りしてゐたのです。それが今では、当時私が想像もしなかった白米を食してゐるではありませんか。一年や二年で、こんなにも私の環境が変化するとは思ひませんでした。

 私は、父に対しては一目置いてゐました。父に対する時は常に何となく畏敬の念がありました。文字で表はすならば、近寄りたいが近寄り難かったといふのが、父に対する真実の気持でありませう。父も海軍であったため、私が海軍に入ってから大いに参考となる点がありました。海軍の制度には興味を以って研究していたせゐもあります。当然、士官にはなれなかったでありませう私が今日こうして少尉の階級を与へられたといふことだけでも満足です。

 しかし、私が海軍に入って最も驚き且つ憤慨に耐へないのは、兵学校出の士官と特務士官と予備士官とは、判然と区別されてあり、何につけても誤解を招くのは我々予備士官です。或る航空隊の先輩が、この次に生れて来る時はアメリカ兵だと云ったのも一理あると思はれます。海軍の発展のために大いなる障碍となるのは、この点でありませう。
 急速に改善する必要があります。


【追記】 低速のフロート付き水上機を特攻機に仕立て上げるなんて、これはもう死地に行かせるのが目的としか言えない。

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