満州っ子 平和をうたう

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zoom RSS 「雲流るる果てに」−46−

<<   作成日時 : 2010/09/03 06:30   >>

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石橋申雄 [いしばし・のぶお] 東亜同文書院ー神風特別攻撃隊第一筑波隊、昭和20年4月6日、沖縄周辺輸送船団攻撃中、戦死。搭乗機・零戦。25歳(「雲流れる果てに」235〜238頁)

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     絶  筆
   
   遺 書
 
 拝啓 機動部隊来襲と共に数十年来の大雪寒気殊の外でありましたが、大雪の消ゆると一緒に、はやくも木々も芽を吹きはじめ、春近しの感が深いものがあります。

 種々御心配の御様子でありますが、お陰を以て壮健軍務に精励してをりますので御安心の程願ひます。尤も斯るドタン場に立至り、生等の途は明かに決して居ることゝ御覚悟あられますやう、子として親に向って斯様な事は申上げにくいのではありますが、父上ならば明白に御推察下さると存じ、又それを喜んで下さることゝ存じますので一応申上げておきます。

 今のうちに思ってゐることは何でも言うやうにとのお言葉、誠に有難く、斯程までに思って頂きながら、子として何等孝養も尽くさぬまゝ、と考へる時、些か後髪をひかれる思ひが致します。兄弟のうち小生一人のみ手塩にかけて頂き、且又最高学府までやって頂いて、今斯うして海軍士官として下っ端ながら人の上に立つ身になって過去を振り返って見ますときに、苦労らしい苦労もなく、又苦しかったその当時思ったことも今は代えって懐かしく、想ひ出深く感じられます。

 
 同文書院は勿論、小学校の折kらも友人にも恵まれ、今斯うして海軍生活をおくってゐる間にも同僚との間も和を以て第一とし、友人の誰彼も好感を以て交ってくれるのは決して自惚ではなく、之も父上の幼少よりの御教育の賜物と深く感謝してゐる次第です。既に還暦を超えられた父上に些かでも楽な生活をして頂き度いといふのが小生の唯一つの希望でありましたが、返って御心配のかけっ放しだといふのも、一つは時局の然らしむるところと御容赦願ひます。

 兄、弟共に出征し、幸子は未だ幼く甚以て心許ない次第ですが何卒御自重あって、御幸福に御生活下さるやうお願ひ致します。

 身一度軍籍にある身の云々するのは如何かと思ひますが、時代の声は従来の考へ方に些か変化を及ぼし、「後のことを思ふ」と云ふ消極性と対立して、自己の生命を一すじ現世に残すとの考へもあります。この問題に関しては自分の意思を明白にし度くはありません。

 唯父上の御意思に任せます。結婚し度い相手などはありません。若し明日の運命のはっきり定まった男に対して、喜んで嫁ぐといふ者があって、それが父上の御気に入るやうでしたら結婚してもよいと思ひます。


  三月八日                                       申 雄

父上様


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   絶  筆

父上様

 九州の春は早いのですね、櫻も菜の花も美しく戦場さながらのこゝにも何となくなごやかな気分を与えてくれます。
 昨夜はぐっすり眠りました。夢さえ見ないほどでした。頭もすっきり気分も爽快です。
 同じ地続きで、ちょいとそちらに廻り度い気もしますね。
 お寺、水源地(何れも伯父、叔母)等によろしく。
 六日早朝                                        申 雄

  
  (註) 出撃当日鹿屋基地にて書いたものらしい

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