「学徒出陣」と姉の“老春”

東京新聞に「あけくれ」というコラムがある。文字通り日常の暮らしのなかでのホッとするような逸話が綴られ読み手のこころを和ませてくれる。三日ほど前の「姉の“老春”」がいい。80半ばの姉のトキメキとあの「学徒出陣」が重ねられていて同世代の思いに迫ってくる。
 
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 老人ホームに入所している姉から久しぶりに電話があった。心なしか若やいだ明るい声にホッとした。聞けば、最近隣の部屋に九十歳になる男性が入居してきて、食卓も偶然同じになり、話をするようになったという。
 ホームの男性はどちらかというと無口で近寄り難い人が多く、楽しい会話など皆無だったので、その男性の話題の豊富さと明るさに、すっかり意気投合したというのだ。三日前には、彼から花の鉢を贈られて胸がドキドキしてしまったという。
 六十八年前、雨の中、神宮外苑で学徒出陣の恋人を見送り、泣きながら帰ってきた姉。戦争に翻弄(ほんろう)された青春は人を愛することさえ許されなかった。そんな姉が八十半ばで胸をときめかせている様子が受話器の向こうから手に取るように伝わってくる。
 お姉さん、精いっぱい“老春”を楽しんで。喫茶店にも映画にもどんどん行きなさい。妹も応援しています。(安達礼子 83歳 千葉県松戸市)


【追記】10月(21日)になれば思い出される68年前の神宮外苑での学徒出陣壮行会。青春を苦渋の中で過されただろう老姉妹。年をへて新しいトキメキを迎えた姉に寄せる妹の思いやり、微笑ましいエッセイに読者も応援の眼差しで読んだことでしょう。

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