
同じ年齢の少女として、わたくしはカナのようなみごとな魂と目とをもたない者であった。戦争を聖戦と教えられ、戦死を名誉と思い、情けなくも主体性をまったく失っていた。こんなわたくしにも、許婚者は「こんな戦争には反対だ。天皇のためには死にたくない」と語ってくれたのに。また隣家の青年は「こんな戦争で死んではいけませんよ」と言ってくれたのに。
岡部伊都子「解説」
石野径一郎「ひめゆりの塔」講談社文庫)
1954年からラジオ番組で放送された随筆をまとめた『おむすびの味』で認められる。以後、美術・伝統文化・自然・歴史・戦争・沖縄・差別問題・環境問題など幅広いジャンルをテーマに健筆をふるう。
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