「『万歳』で送る姿に憤り」 堀 文子さん

もうすぐ終戦記念日。先の戦争では夫や息子、兄弟を失った多くの女性が涙に暮れた。一方で、女性たちは「総力戦」の戦時体制の下、戦争遂行の一翼を担いもした。(東京新聞・8月8日付ー特集「戦争と女性」から)以下は今年97歳になる日本画家・堀文子さんのメッセージ。

▼ほり・ふみこ(1918~)東京生まれ
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 先の戦争中、女たちがわが子や夫、兄弟を戦場に出す時に「万歳」と言わされた。その無残で愚かな姿をよく覚えています。人を殺しに行き、最後は殺されるというのに、名誉の出征だと言わされる。そのことに怒りもしない。その様子を憤りながら見ておりました。
 だから私は、女とマスコミがしっかりしていれば、戦争は防げると思ったんです。次の時代にはそれを訴えなきゃと思っていた。それが最近では両方駄目になってきました。メディアは政府の言いなりですし、女はきれいになりたい、いいものを食べたいということばかり考えている。まるで幼児化したようです。女として、母親として力を失ってしまった。日本の衰亡の証しだと思っております。
 背景には日本文化の劣化があるように思われます。日本語は乱れ、敬語が失われた。食べ物も家の造りも変えてしまった。弱者を思い、「もののあわれ」を感じる日本人は、強い者や派手な者を礼賛するように成り下がった。そのことを自覚してほしい。


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 昨年1月、東京新聞(右コピー)に投書をしました。政府が(特定)秘密保護法などという戦前の治安維持法のような法律を作ったので、黙っていられなくなったんです。そうかと思うと、今度は武器を輸出しても平気になり、自衛隊を他国の戦争に派遣してもいいといい始めた。戦争はやむを得ないと考えているのでしょう。一度世論が沸騰すれば、戦争に反対することもできなくなります。政府は必ず反対する人を捕らえ、牢獄に入れます。戦前もそうでした。
 美術学校時代、教頭が一人一人に面接で「あなたは何のために絵を描くのか」と聞きました。「私のために」と答えたら「危険思想だ、天皇陛下のために描くのだ」と怒られた。今なら笑い話でしょうけど、じき笑っていられなくなりますよ。近ごろも何かと「国益のため」と言うようになった。「危険思想」は取り締まられ、密告され、反抗できなくなるんです。
 なのに、国民がそうした流れに唯々として逆らわないことの恐ろしさを感じます。お上の言うことだから間違いないと思い込んでいるあたり、日本人は戦前と変わっていないようです。まず女たちが正しい判断力を取り戻し、戦わなきゃ駄目だと思います。(聞き手・樋口薫)


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