
公主嶺懐古の歌七首
水尾 翠(旧姓荒井・教職員)
「荒井 翠先生。眼鏡の中の優しい眼差し、紺色のセーターが似合ったふくよかな胸は、子どもの目にも魅力的だった。・・・・・・虚弱だった私は、四大節の式や朝礼が長いとよく貧血を起こした。青くなって気を失いそうになるとスット先生が近寄って来られ、抱きかかえて衛生室へ運んでくださった。淡い甘い思い出である」。

・まぎれゆくことなき記憶深く持つ
わが青春の虹かけし土地(つち)
・楡 青柳(やなぎ) 月夜にながき影おくか
おもひ杳(はる)けし公主嶺の町
・ほの青き炎たつかと思ふまで
樹々一せいに萌えゆく五月
・ねじあやめつつましくして咲き揃う
敷島台の花の風炎
・ねじあやめ紫淡き花びらを
細く展(の)べたりその花茎に
・ロシア墓地に風車を染めて没(お)つる陽(ひ)の
さびしき色のいまも顕(た)つあり
・ロシア墓地に罪なき民等刎(は)ねられし
記憶もわれらの負うべき歴史
(34回生「会報」7号より)
【注】荒井 翠先生は存じ上げないが、生徒たちにとっては憧れの人。詩歌もよくした。右写真は満洲に多い「ねじあやめ」、下は中国文訳。
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