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zoom RSS 公主嶺小同窓会誌 第6章 エピソード −15−

<<   作成日時 : 2016/12/09 07:12   >>

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 鉄道線路の草むらの茂みに、きりぎりすが鳴いていた。果てしなく広がる高粱畑から、さわさわと葉づれの音がしていた。帰りの通学列車に乗り遅れた私は、公主嶺をあとに大車(ターチョ)の轍のある凸凹道を大楡樹に向かって歩いていた。(記念誌215頁上段)

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    高粱畑に息をひそめ
        横山治雄(26回生)
 

 後から「チャ チャ」と御者の声が聞こえてくる。振り向くと幌馬車が一台近づいて来た。見つかると馬賊にさらわれる。
 私は高粱畑にとび込んだ。むちの音が近づいて来た。畝の間に伏せていた私の体は、固くなって振えていた。幌の中から男の話し声が聞こえる。蹄と車のきしむ音が段々と小さくなっていた。私は高粱畑を抜け出すとまた走った。ランドセルの本がガタガタと揺れた。行く手の草むらのかげに、遠方信号後のシグナルが見えかくれした。鉄橋を渡ると、線路の右手にに水田の稲穂が波を打っていた。左手には赤煉瓦の満鉄社宅が点在して見えた。私の家はその一角にあった。私の体から力が抜けていった。
 当時の鉄道付属地は治外法権であったが、沿線には時折匪賊が出没し守備隊と交戦していた時代である。これは私の腕白時代小二(昭和4年)の夏も終わりに近いある日の思い出である。

【注】「匪賊」とは辞書によると「集団で略奪などを行った盗賊」の意。だが他国に進入しながら君臨する日本に抗うものはすべて「匪賊」と見なして、弾圧し、自国の行為を正当化した。
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