
そんな思いもあって映画『母 小林多喜二の母の者当たり』(三浦綾子原作、山田火砂子監督)を観た。言うまでもなく多喜二は昭和8年、治安維持法違反の疑いで拘束され、その日のうちに拷問で殺された作家だ。映画館は補助椅子まで出て珍しい盛況ぶりだったが、よく見ればシニアばかり。若者は「キングコング」の方へ行ってしまうのかねえ。
映画自体は「劇映画」としている通り、学芸会のようなお芝居と紙芝居みたいなショットの連続。しかし十分ごとに泣かせてくれました。そして殺された多喜二が十字架にかけられたイエスに重ねられていて、原作者も監督もクリスチャンだったと知った。ただ、マリアがイエスを抱く「ピエタ」に当たる場面、多喜二の遺体を前に母セキが「多喜二! もう一度立ってみせねか! 皆のためにもう一度立ってみせねか!」と叫ぶのには打たれました。
そうだ、今こそ多喜二を先頭に立ちあがらねばならぬぞ。そう決意して映画館を出ましたが、帰宅して杖を置き忘れてきたことに気付きました。(ホーム住人)
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