
「肉がさけるけん太れんとさ」被爆者いう
下村 眸(74) 東京都大田区
長崎への原爆投下で背中一面に大やけどを負い、その後の人生をかけて核兵器の廃絶運動を続けた谷口稜瞱(すみてる)さんが今年八月、亡くなった。下村さんは20年ほど前、長崎での原水爆禁止世界大会で谷口さんの講演を聴き、後に新聞で読んだ谷口さんの言葉が胸に突き刺さった。それを伝えたい思いが句となって新たな命得た。
・モノクロの影落とす八月の雲
池田秀夫(76) 東京都江戸川区
◆同盟は平和の枷(かせ)ぞ鳥渡る 坪井利剛(71) 埼玉県富士見市 2017・11.5
【評】<いとうせいこう>日米同盟にのみしがみついていると、他の国際関係の可能性を失い、十区を危険にさらすと作者。自由に飛ぶ鳥に学べというのだろう。
◆とんぼ来た平和な国を探し当て 橋爪朋子(63) 三重県桑名市 2017・11・6
【評】<黒田杏子>目の前にやってきてくれたとんぼ。どこから飛んできたのだろう。平和な国を探し当て。ここを読むととてもホッとします。
◆最強の一手は「対話」秋の声 荒井孚(81) 千葉県松戸市 2017・11・7
【評】<いとうせいこう>暴力ではどちらが勝っても次世代に恨みが残る。それがまた暴力を生む。人類は歴史を学んでその不毛を知ったではないか。対話を。
◆白寿にも反戦叫ぶ兜太翁 幅 茂(63) 名古屋市北区 2017・11・8
【評】<黒田杏子>満98歳の金子兜太さんは数えで白寿。反宣の旗を掲げる大先輩への敬意いと信頼。 <いとうせいこう>99歳で、いや99歳だからこそ声をあげる人への大きな共感。
◆封印の戦死の便り額の中 多賀与四郎(79) 栃木県さくら市 2017・11・9
【評】<黒田杏子>硫黄島で戦死された長兄の告知を父上はその場で封印。額に収められたため、今日まで家族の誰も見ていないその戦死報。
◆草を刈る伸びて又刈る平和かな 小室英朗(65) 茨城県北茨城市 2017・11・10
【評】<いとうせいこう>草は刈ればなくなるが、また生えてくる。自然の力を厭うことなくまた刈って畑を作ってゆく。その営為に平和の繰り返しを感じる。
◆ミサイルの打上げの日や平和館 水津幸一(73) 川崎市高津区 2017・11・11
【評】<黒田杏子>その日、「川崎市平和館」を訪ねていた作者。「横田めぐみさん」コーナーなどの展示にあらためて戦争と平和を考えさせられて。
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