日本には梅雨という季節がある 『東京新聞・筆洗』

春夏秋冬に加えて、日本には梅雨というもう一つの季節がある。時折、語られる日本の「五季節」を最初に唱えたのは、一説に、戦後、気象と健康の関係の研究などで知られた医学者、藤巻時男さんという▼「はしり」や中休みがあって、蒸し暑くなったり、冷えたりしながら続く。春とも真夏とも違う季節はたしかに独特で、時に健康や心理に影響しよう▼そんな五季節にこれほど説得力を感じる年もなさそうだ。長い梅雨が各地に水害をもたらした今年である。ようやく九州北部と中国、四国が昨日、梅雨明けし、真夏の明るい光景が伝えられた。猛暑の訪れを意味する景色ではあるが、梅雨明けまであとひと息の地域からみれば、うらやましくも思える▼<白昼のむら雲四方に蕃茄熟る>飯田蛇笏。蕃茄(ばんか)はトマトの漢名という。空の青と雲の白に地上で濃く色づく作物。雨の中に色鮮やかな景色が浮かぶが、今回の長雨は作物から日照時間を奪った▼収穫減などでニンジン、ジャガイモといった野菜が値上がりしている。昨年の倍ほどの値がつくこともあるようだ。トマトの色や生育に影響が出た地域もある。高値はしばらく続きそうだ▼思えば一昨年は梅雨に続き、「災害級」の暑さが訪れた。昨年は台風の災害が10月まで続いた。「災害季」ちう長い季節が定着していないか。用心しつつ、普通の季節感が恋しくなる。(2020・7・31)
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追記】日本から春と秋がなくなったという人が大勢いる。「ニ季節」だ。暑さが過ぎればすぐ「冷房」に。寒さが過ぎればすぐ「暖房」に。エアコンは年中フル稼働。これも地球の温暖化のせいか。日本はもう亜熱帯地方になりつつある。「季語」の使い方に苦労する俳人もきっといるに違いない。人間が国土を乱開発したことに自然がリベンジを開始した。

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