日本には梅雨という季節がある 『東京新聞・筆洗』

春夏秋冬に加えて、日本には梅雨というもう一つの季節がある。時折、語られる日本の「五季節」を最初に唱えたのは、一説に、戦後、気象と健康の関係の研究などで知られた医学者、藤巻時男さんという▼「はしり」や中休みがあって、蒸し暑くなったり、冷えたりしながら続く。春とも真夏とも違う季節はたしかに独特で、時に健康や心理に影響しよう▼そんな五季節にこれほど説得力を感じる年もなさそうだ。長い梅雨が各地に水害をもたらした今年である。ようやく九州北部と中国、四国が昨日、梅雨明けし、真夏の明るい光景が伝えられた。猛暑の訪れを意味する景色ではあるが、梅雨明けまであとひと息の地域からみれば、うらやましくも思える▼<白昼のむら雲四方に蕃茄熟る>飯田蛇笏。蕃茄(ばんか)はトマトの漢名という。空の青と雲の白に地上で濃く色づく作物。雨の中に色鮮やかな景色が浮かぶが、今回の長雨は作物から日照時間を奪った▼収穫減などでニンジン、ジャガイモといった野菜が値上がりしている。昨年の倍ほどの値がつくこともあるようだ。トマトの色や生育に影響が出た地域もある。高値はしばらく続きそうだ▼思えば一昨年は梅雨に続き、「災害級」の暑さが訪れた。昨年は台風の災害が10月まで続いた。「災害季」ちう長い季節が定着していないか。用心しつつ、普通の季節感が恋しくなる。(2020・7・31) 【今日の出来事】1991年米ソ、戦略兵器削減条約(START1)調印 【追記】日本から春と秋がなくなったという人が大勢いる。「ニ季節」だ。暑さが過ぎればすぐ「冷房」に。寒…

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やっと認めた「黒い雨」 『赤旗・潮流』

ねずみ色の雲がもくもく上がってきて、そのうち空が真っ暗になり、雨が降ってきた。外にいた私と弟が家に帰ると、白いシャツには黒い染みができていた▼1945年8月6日の朝、当時5歳だった本毛(ほんげ)稔さんは、そのときの黒い跡が忘れられません。弟は日に日に具合が悪くなり1カ月後に肝硬変で死亡。自身も小さい頃から鼻血が止まらず、白内障や緑内障を患い3度も手術。いまも後遺症に悩まされています▼本毛さんの自宅前には水内(みのり)川が流れています。その川が黒い雨指定地域の境にされました。本毛さんの集落は国の援護の対象外に。黒い雨を含んだ沢の水を飲み、畑の野菜も食べた。「なぜ、国はこんな線引きをしたのか」▼被爆を認められない苦しみや怒りは数冊にもおよんだ証言集にも。その訴えに背お向けてきたやり方を覆す判決が広島地裁でありました。これまで対象外とされた原告を被爆者として認め、医療費が無料となる手帳の交付を県と市に命じました▼被爆75年に至り、ようやく正された理不尽さ。判決までの5年の間に16人もの原告が亡くなっています。原爆被害にあい、さらに国から冷遇されて命を落としていった人たちの無念はいかばかりか▼「黒い雨」の著者、井伏鱒二は後に語っています。取材を通じて「ぼくはことがらにたいしてまじめになった。作家としてではなく、社会的な事実と真摯にむきあったこうした姿勢が国にあればもっと早く多くの被爆者が救われただろうに。(2020・7・30) 【今日の出来事】1912年明治天皇死去(明治時代終わる) 1971年岩手県雫…

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ハングルは民族共通の証し 『赤旗・潮流』

解放直後のことでした。ソウル駅の倉庫から膨大な量の草稿が見つかりました。それは苛烈な弾圧下で民族の言語を守ろうとした人たちの結実でもありました▼「内鮮一体」の名のもとで朝鮮民族を支配した戦前の日本。皇民化は名前や言葉にもおよび、朝鮮語の辞典をつくろうとした学会も取り締まりの対象になりました。逮捕され拷問されながらも失わなかった民族の誇り。彼らの願いは後世に引き継がれました▼そのたたかいを描いた韓国映画「マルモイ」が日本で上映されています。タイトルの意味は副題にもある「ことばあつめ」。初めて試みられた朝鮮語辞典の名称でもあるといいます。女性監督のオム・ユナさんは史実をもとに熱く、笑いと涙を誘いながら▼ハングル文字は15世紀半ばに世宗王(セジョン)が学者を集め、つくらせたとされています。「訓民正音」の名で公布し、庶民に普及をはかりました(『朝鮮史』)。朝鮮の人びとにとって、ハングルは民族共通の証しです▼「言葉は民族の精神を盛った器」。映画にも出てくるセリフは、抑圧のなかでも、かけがいのない存在をつないだたたかいの意義を。こうした人たちが歴史にいた事実とともに伝えます。戦後、朝鮮語大辞典は完成に至りました▼言葉を大切にする思いは、どの民族も同じでしょう。ひるがえって、いまの日本はどうか。権力者たちの言葉の軽さ、空疎さが取りざたされています。文化や社会の土台をゆるがす偽りの言葉や意味の空洞化。歴史に無反省な人たちによって。(2020・7・29) 【今日の出来事】1921年ヒトラー、ナチス党首に就任 19…

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「踏みにじった 一斉休校」 『赤旗・潮流』

問題が起きるたび学び合ってきた。何が正解かわからず手探りだったから▼福島で予定した52回目の全国保育団体合同研究集会は、新型コロナ感染拡大防止で中止。「このままじゃ追われない!」とネット配信を準備しています。2011年に起きた福島第一原発事故。子どもの健康を守りながら、育ちをどう保障するか。日々問う保育でした▼砂場の砂は触っていいか。どうしたら外で遊べるか。「とにかく学び合い、語り合った」と福島大学名誉教授大宮勇雄さんは話します。コロナ禍という正解のない世界に再び放り込まれましたが「語り合えばかすかな」一致点が見え、安心につながる▼正解が見えないのは学校も同じ。くらし家庭面のシリーズ「ここから始まる 学校でいま」には、教職員の苦闘がつづられます。楽しみだった行事が中止、やめないのはテストと授業だけ。「音楽って不要不急なの?」と自問自答し、心が沈んでいた。休校を喜ぶ子どもを見て、自分の力のなさに落ち込んだ・・・▼一斉休校は、子どもの育ちも教職員の専門性も踏みにじりました。対策を考え合う時間だけでもとの願いも、「一斉」の号令でかなわなかった。ある小学校教員は、この時代に求められる仕事は何かと知恵を集め、一歩を踏み出します。別の小学校教員は「『子どもの命を守ること』と『学校生活を充実させること』という実現困難な両立を学校はめざすしかない」と▼せめて対話の努力は惜しまないでいたい。今を生きるおとなの責任として。82020・7・28) 【今日の出来事】1914年第一次世界大戦始まる 1951年国連で難民条…

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「幸せなら手をたたこう」『東京新聞・筆洗』

昭和四十年の実話らしい。ドロボウが家に忍び込んだ。家人に見つからないように隠れていたところ、テレビから「幸せなら手をたたこう」が聞こえてきた▼この歌をご存知の方なら分かるだろう。「手をったこう」の九ちゃんの歌声に続いて、このドロボウ、「ばん、ばん」と手拍子を打って、家人に見つかり、御用になったそうだ。立川談志さんが、「現代落語論」の中に書いていた。「世知辛い世の中にこんな間が抜けた楽しい奴はまたとない」▼「楽しい奴」とはまったく思わないが、これもいささか間が抜けた話が、東京都府中市の九十代の男性からキャッシュカードをだまし取った二十一歳の男が逮捕された。男の正体が見破られたきっかけは、漢字だったそうだ▼男は刑事のふりをしていたらしいが、連絡先として渡してきたメモは誤字だらけだった。「刑事」は「形事」。「特殊詐欺防犯係」の「詐欺」という字も書けていない▼不審に思って通報したというが、それはそうだろう。自分の職業や肩書をきちんと書けない人はいない▼妙な人間が訪ねてきても応対しないのが一番だろうが、書き取りも効果があるか。「けいじ」に加えて、「ははおや」という漢字を書けと出題してみたらいい。悪いことをする前に、なにか大切なことを思い出してくれるかもしれない。(2020・7・27) 【今日の出来事】1953年朝鮮戦争休戦協定調印 1976年ロッキード事件で田中角栄元首相逮捕

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温暖化が進めばこの地球は 『赤旗・潮流』

ロシアの作家チェーホフは130年前、シベリアを横断旅行しています。その記録は次の会話で始まります。「シベリアはどうしてこう寒いのかね?」「神様の思召しでさ」(「シベリアの旅「神西清訳」)▼鉄道が敷かれていないころのこと。5月なのに身を切る寒風が吹き、川の氾濫などに遭いながら、作者が馬車で渡った時のスケッチです。そのシベリアで今、「熱波」が問題になっています▼今年1~6月の気温が、2010年までの30年間の平均気温より5度以上も高い異常な状態が続いたというのです。6月20日には北極圏に位置する町で38度を観測。これらを分析した欧州やロシアの科学者たちの共同研究チームが今月、報告書を発表しました▼「人為的な気候変動がなければあり得なかった」と。さらに気候変動によって高温状態が頻発すると警鐘を鳴らします。報告書には、高温状態による永久凍土が溶けることで環境汚染などをもたらしているとして、今年5月に起きた、凍土に建てられた燃料タンクの崩壊例を挙げています▼同様の研究は日本でも行われ、2018年の記録的猛暑の発生確率について地球温暖化との関係で研究者が分析。地球温暖化がなければ記録的猛暑は起こらなかったとする結果でした▼暑さだけではありません。気象庁は、温暖化が進めば今世紀末には20世紀末と比べて、滝のように降る雨の発生回数が2倍以上に増えると。温暖化の抑制に逆行する政府の石炭火力発電推進をやめることは待ったなしです。(2020・7・26) 【今日の出来事】1945年対日ポツダム宣言発表 【注】1785…

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涙と雨の歌からしのばれる 『東京新聞・筆洗』

1938年から40年にかけて、日本の流行歌は雨と涙で明け暮れた。とルポライターの竹中労さんが書いている。<ああかえり来ぬ心の青空/すすり泣く夜の雨よ)は淡谷のり子さんが歌った「雨のブルース」。ヒットした「古き花園」では、二葉あき子さんが<白きバラに涙して/雨が今日も降る>と歌っている▼いくつもの涙と雨の歌からしのばれるのは、太平洋戦争前夜のくらい世相である。40年は最初の東京五輪が開かれるはずの年だった。返上が38年に決まっている、世相の一部ををなす出来事であったさろう▼せんそうによる返上が世の中に落胆をもたらす一方で五輪を開いている場合ではないという論調もあった。いずれにせよ、日ごとに五輪開催を想像するのが難しくなっていく時代であった▼戦禍での返上とは違うけれど、悲しい雨にかすんだように祭典を想像し難くなっているようだコロナ禍がなければ、きょうは開会式がある日だった▼東京に集まった選手の表情に客席の国際色、開幕に先がけて試合があるサッカーなどの盛り上がり・・・。いまはどれも想像し難い▼一年後のことも思い浮かべるのが難しくなっているようで、世論調査では中止を望む人も多い。こんな状況だが「心の青空」を感じる一年後になってほしいと願う。身の丈を小さくする必要があろう、ハードルの高さを考えると時間は少なそうだ。(2020・7・24) 【今日の出来事】1927年芥川龍之介自殺 1950年GHQ、新聞関係者のレッドパージ勧告

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「GO TO トラブル」『赤旗・潮流』Go To トラブル」 「Go To トラブル」 『赤旗・潮流』

いったい、どこへ向かわせようというのか。連休前のきょうから見切り発車のまま始まる。「GO TO トラベル」。迷走、混乱で制度も定まらないなか、安倍政権が強行します▼消費喚起策として1兆3500億円の税金を投じる事業。しかし全国一律から都民と東京を対象外としたことやキャンセル料をめぐり、政府の対応は二転三転。事業者の募集も説明会も、始まったのはきのうからというドタバタです▼世論調査は軒並み、反対が圧倒的多数に。東京に限らず大都市を中心に再び感染がひろがるいま、大量の移動に心配や不安がつきまとうのも当然です。このままでは「GO TO トラブル」になってしまうとの懸念も▼コロナ対応の無責任さはますます。前倒ししてまで外にでることを促しながら、西村担当相は改めてテレワークの徹底を経済団体に呼びかけました。方針や戦略なき政府の朝令暮改。国会も開かず、決定も経過も不透明なまま、命と安全が脅かされています▼早い実施を訴えていた自民党の二階幹事長が事業の受託団体や関連団体から献金を受けていたー。本紙日曜版のスクープです。経済界や観光業界から強い圧力があったとも報じられています。ひも付き支援に安心はありません▼コロナによる国内の死者は千人をこえ、致死率は世界平均とほぼ同じ。とくに70代以上が8割を占め、高齢ほど亡くなる割合は高くなっています。行く側も迎える側もリスクを抱えての旅行。これで夏休みの楽しい思い出になるのか。(2020・7・23) 【今日の出来事】1894年日本軍、朝鮮王宮を占領 1918年富山県魚津町…

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井上ひさしさん 没後10年 『赤旗・潮流』

「むずかしいことをやさしく/やさしいことをふかく/ふかいことをゆかいに/ゆかいなことをまじめに/書くこと」▼記者として心がけていることは、小説家で劇作家の井上ひさし氏の言葉です。氏が55歳だった1989年から75歳で亡くなる2010年まで暮らした鎌倉市の鎌倉文学館で、没後10年を記念した特別展が開かれています▼みずみずしい緑の山並みと、波光きらめく海に囲まれた古都。氏は、この街の緑地保存運動にも力を注いだといいます。「生活者の視点」を掲げ、日本の農業を壊すとして米の自由化に反対し、「平和のために」と叫ばれた時が危ないと自衛隊の海外派遣に警鐘を鳴らし、被爆者の取材を重ねて核廃絶を訴えました▼2004年「九条の会」発足に参加。翌年「鎌倉・九条の会」を立ち上げます。「平和」という言葉が力を失っていると指摘し、「日常」を使いました。「『平和を守る』『憲法を守る』というのは『わたしたちのいま続いている日常を守ることだ』と言い直すようにしています」と▼最後の戯曲となった「組曲虐殺」は作家・小林多喜二の評伝劇です。天皇制国家の苛烈な弾圧下、言葉の力で社会を変えるべく奮闘する多喜二が、自らを励ますために歌います。「愛の綱を肩に/希望めざして走る人よ(略)あとにつづくものを/信じて走れ」▼震災後も原発に固執し、核兵器禁止条約に署名せず、憲法改悪を画策する現政権を、氏はどう思うだろう。希望めざして走れ、と励ます声が聞こえます。(2020・7・21) 【今日の出来事】1953年沖縄、伊江島農民「乞食行進」でベイ軍政に…

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「スペイン風邪」と与謝野晶子 『赤旗・潮流』

「スペイン風邪」は今から100年前、世界的に大流行した感染症です。5億人がかかり、世界中で数千万、日本でも38万人余が死亡。そのほ とんどが2波、3波によるものでした▼当時の歌人、与謝野晶子は新聞の寄稿文でわが子が感染したことへの不満をつづっています。「人事を尽くす」ことが人生の目的なのに、あらゆる予防と抵抗を尽くさず、むざむざ病毒に感染して死の手にとらえられることは「魯鈍とも、怠情とも、卑怯とも、云ひようのない遺憾な事」。予防と治療にすべての可能性をつくすべきだと(「市の恐怖」)▼いまの安倍首相や西村担当相、東京都の小池知事にも聞かせたい晶子の思い。別の評論「感冒の床から」にも、危険を防ぐために大工場や大展覧会、学校など多くの人間が密集する場所の一時的休業をなぜ命じなかったのかと政府を批判しています▼子どもたちの病気を何度か短歌にしていたことも。スペイン風邪の前になりますが、歌集「火の鳥」には(わが子故マリヤの像に抱かれるエスさへ病める心地するかな)。子の身を案じる親の心情が切々と伝わってきます▼「死の恐怖」には、私が死を恐れるのは、私の死によって起こる子どもの不幸を予想して、できる限り生きていたいという欲望のためだ、との一節もあります▼再びコロナウイルスがひろがりをみせるいま、命を守るために人事を尽くす。時代をこえた呼びかけがよみがえります。(われいまだ病みて命を護るより苦しきことに逢はざりしかな)(2020・7・20) 【今日の出来事】1969年アポロ11号月面着陸 1971年日本マクドナ…

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いま、よみがえるアイヌの文化 『赤旗・潮流』

連続テレビ小説「エール」のモデルとされる作曲家の古関裕而さんは、歌謡曲にもクラシック調の旋律を使いました。その代表曲の一つに「イヨマンテの夜」があります▼伊藤久男さんが歌う勇壮な曲は紅白歌合戦にも取り上げられ、それを通してイオマンテとも呼ばれるアイヌの熊送りの儀式を多くが知りました。日常生活をアイヌ(人)とカムイ(神)の交流と考える人びとの精神文化を象徴する儀式といわれます▼ところが戦後、北海道知事の通達によって禁じられ、2007年に撤回されるまで「野蛮な儀式」とされてきました。その祈りの歌や踊りが、いま若者たちによってよみがえっています▼アイヌ文化復興の拠点として白老町に開業した民族共生象徴空間ウポポイ。なかにある体験交流ホールでは、重要な伝統芸能を上演し紹介していました、単なる過去のの儀式の再現ではなく、未来につなぐために工夫しながら。舞踊グループのひとりは「伝承のきっかけにして、民族の誇りを伝えたい▼ウポポイは昨年成立した新法によってアイヌを先住民族と定め、虐げられてきた歴史と文化を学び直す国のセンターとして政府が位置づけたもの。しかし現政権の閣僚からは、これまでの偏見や差別を助長し、アイヌ民族の存在を否定する発言が相次いでいます▼多様で豊かな文化、異なる民族との共生を尊重していく社会をつくることは国際的な流れに。それは人間と自然が調和し、みなが幸せに生きられるアイヌの世界にも通じています。(2020・7・19) 【今日の出来事】1947年ビルマ(現ミャンマー)アウンサン将軍暗殺 1949…

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将棋の歴史に新たな道 『赤旗・潮流』

将棋には天来の妙手と呼ばれる指し手があるらしい。誰もが予想できない、計算や理屈をこえた、ひらめき。天から降ってきたかと思われるほどの一手だと▼最年少でタイトルを得た藤井聡太・新棋聖の将棋にはそれがある。棋界のレジェンド、加藤一ニ三さんが『天才の考え方』でたたえています。渡辺明三冠に挑んだ今回の勝負のなかでもAI(人工知能)をしのぐ手を指したとして話題になりました▼いまや、この世界もAI世代が主流。藤井さんも研究のための将棋ソフトを使うそうですが、うのみにせず自分で考えて解釈しているといいます。トップ棋士を驚嘆させる読みの量やスピード、斬新で独創的な指し手。彼の姿に人間の秘めた可能性を感じる人は多い▼中学生プロになって以来、数々の最年少記録を更新。終盤の強さに比べ劣勢になることがあった序中盤も磨き、いまではまったくすきが見当たらないとライバルたちを嘆かせるほど成長は著しい▼研究熱心とともに感心するのが対局の態度です。誰よりも深く長く頭を下げ、負けを告げるときは潔く、勝っても相手への敬意を忘れない。棋聖となっても「より精進したい」と口にする謙虚さは、真摯(しんし)に将棋と向き合う表れなのかもしれません▼一夜明けた記者会見。まだあどけなさが残る笑顔で掲げた色紙には「探究」と書かれていました。あすは18歳の誕生日。将棋が好きでつねに研さんを怠らない。その情熱があるかぎり、長い将棋の歴史に新たな道が切り開けるはずです。{2020・7・18) 【今日の出来事】1925年ヒトラー『わが闘争』発表 1936年ス…

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コロナ禍で「音楽・芸術」が大打撃 『赤旗・潮流』

ほんの数分ではありますが、鍵盤の奏でる旋律が心に染みます。NHKBSの「駅・空港・街角ピアノ」が静かな人気を呼んでいます▼世界各地の駅や空港、街角に置かれた一台のピアノ。立ち寄る誰もが自由に弾くことができるのです。元バンドマンで靴磨きの男性はボブ・ディランを。「僕のピアノが人を幸せにする」とさらりとひと言。目の不自由な女性によるAKB48の曲も忘れられません▼先ごろ、もう一度聴きたい演奏を募った特集を放送しました。リクエストした20代の女性は「受験勉強が手につかなったときに曲調と歌詞が心に突き刺さった」。それは若者の気持ちに寄り添う教師のピアノでした▼演奏する人と聴く人の人生が交錯します。人々が音楽への愛情、親しみを寄せていることがわかります。その音楽・芸術がコロナ禍で公演などの中止・延期がが相次ぎ、大打撃を被っています▼当初、安倍首相は「税金を使った補償はしない」という姿勢でした。第2次補正予算で560億円を芸術支援に充てることになったのは、アーティストや世論に押されたから。それでも6900億円といわれる損失にはお呼びません▼イギリスは1人あたり34万円、ドイツは個人の生活維持のために総額1兆2千億円の支援を。「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要」。ドイツ政府はこんなに明解なのに文化。芸術への心に染みる、わずかな言葉さえ聞こえてこない。安倍政権への疑念はここにも根深いものがあります。(2020・7・17) 【今日の出来事】1955年カリフォルニアにディズニーランドオープン…

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「声をあげた赤木雅子さん」 『赤旗・潮流』

寝室に置かれた2枚の寫眞はゆれる感情を写していました。つらかったときを忘れたくない、でも明るく元気だったときの顔も見たいー。大切なパートナーを亡くした無念をテレビでもらしていました▼公文書の改ざんを命じられ、それを苦にしてみずからの命を断った近畿財務局の職員、赤木俊夫さん。自責の念にかられ、人が変わってしまった姿を傍らで見てきた妻の雅子さん。人生を書き換えられた2人の思いは一緒です。真実を明らかにしたい▼国有地を8億円も値引き、払い下げてもらった森友学園。そこに厚遇したと疑われる箇所はすべて修正せよ。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りをもっていたという俊夫さんは、上司からの指示に反対し抵抗したものの泣く泣く押しきられました▼「私や妻が関係していれば、総理大臣も国会議員も辞める」。この安倍首相の国会答弁から始まった改ざん。俊夫さんは残した手記で内閣が吹っ飛ぶようなことをしてしまったと▼死に追い込まれていった夫の手記を公開し、再調査を求めて声をあげた雅子さん。当時、改ざんを指示したとされる財務省の佐川・理財局長と国を相手取った裁判で改めて訴えました。いったい、だれが、何のためにやったのか▼雅子さんの原因究明の呼びかけに集まった48万をこえる署名。そこには、事件を闇に葬らせない決意とともに、人から大事なものを失わせる政治への怒りがあります。命を犠牲にしてまで生き延びようとする政権に終止符を打つために。(2020・7・16) 【今日の出来事】1945年アメリカ、人類史上初の原爆実験を行なう

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今日、創立98周年 『赤旗・潮流』

「どこよりも誠実にみえました」。だれの誘いでもなく、みずから一員になった理由を、彼女は静かに語りはじめました。この政党なら、まちが いないと信じて▼いまの政治はひどい。学校の総合職を務める千葉在住の女性は日ごろから思っていました。政権の相次ぐ不祥事や疑惑、税金の集め方や使われ方ー。何から何までおかしい。まっとうな政治にするには、どうすればいいのだろう▼出した答えは、日本共産党に入ることでした。ネットで自宅近くの党事務所を検索し、手続きの問い合わせ。党について学びながら先月末に入党しました。20代の彼女は、子どもを安心して育てることができる社会をめざしたいと希望を込めます▼もっと身近に政治を感じてみたい。党本部に、入りたいとメールした都内の大学生は、高学費の問題とともに憲法や民主主義、外交にも感心を寄せる青年です。共産党の考え方に共鳴し、将来は政治にかかわる仕事をしてみたいと話します▼埼玉で介護職に携わる30代の男性は政治を変えたいと最近入党。福祉のきびしい現状や社会的弱者の息苦しさ。生活に困っている人たちがこれだけ多いのに軍事費に巨額を費やす矛盾。「いまのままでは日本は沈没してしまう」と危機感を募らせています▼3人に共通しているのは、この党に新しい日本の未来を感じていること。だれもが差別されない公平で平等な社会、みんなが幸せに生きられる平和な世界。それを実現するために力をあわせよう。きょう、創立98年。(2020・7・15) 【今日の出来事】1922年日本共産党、非合法裡に結成 1949年国鉄労…

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8月6日 [8月6日 「午前8時16分」 『赤旗・潮流」

居間の壁一面に飾られた16個の柱時計。いずれも針は、広島に原爆が投下された8月6日の「午前8時16分」を指しています▼96歳になる岩手県原爆被害者団体協議会元会長の斎藤政一さんが、運動を通じてコツコツ集めました。いま原爆パネル展で青森県内をを巡回中です▼船舶通信隊の陸軍少尉として広島の兵舎で被爆しました。爆心地から1・8㌔地点です。「軍の施設は海岸線にありました。なのに、人口密集地に対する原爆投下は、、子どもや非戦闘員の大量殺りくをねらったもの。人道上も国際法も許されない。二度とあってはならない犯罪です」▼救護にあたる途中見た光景が忘れられません。焼けただれ、衣類もなくなり皮膚が垂れ下がった12,13歳の女子学生の集団が「お母さん、助けて」と叫んでいました▼斎藤さんは原爆放射線の後遺症で、天候に変化、気圧の変動で船酔いしたように具合が悪くなります。家族の支えで、2010年と15年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に最高齢被爆者として参加しました。国連本部の原爆パネル展で訴えました。「平和を壊すのも人間です。平和をつくるのも人間と信じたい」▼コロナ禍で延期になったNPT会議は、来年1月開催で調整中です。斎藤さんは体調整えながら意気込みます。「禁止条約が採択されて3年。新しい可能性のもと惨状を知る被爆者として、米国をはじめ核保有国にたいし非人道的兵器は廃絶しかないと訴えたい。道半ばで逝った仲間の思いを重ねて迫りたい」(2020・7・14) 【今日の出来事】1789年バスティーユ監獄襲撃事件(フランス…

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支配者のようにふるまう人間 『赤旗・潮流』

ぷぅーん、ちくり。刺されたところが赤く腫れて、かゆい、かゆい。ああ、いまいましい。私たちの血を吸う蚊はなんとも嫌な害虫。でもこんな話を聞けば・・・▼張りめぐらせた防御網を突破し、相手の隠れ家の奥深くまで侵入。気づかれないように巨大な体内にある目標物を奪う。そして、ふたたび忍者のように脱出し生還しなければならない。この困難な使命をなしとげるヒロインこそ、メスの蚊であるー▼蚊はメスだけが血を吸い、命がけの侵入と脱出は、すべてわが子のため。ふだんは花の蜜や植物の汁を吸ってくらす穏やかな昆虫。しかし産卵のためにたんぱく質が必要になり、人や動物の血を吸いにくるのだといいます。農学博士・稲垣栄洋(ひでひろ)さんのエッセー集『生き物の死にざま』で知りました▼土の中で何年間も過ごしながら子孫を残すために成虫となり、ひと夏の短い命を終えるセミ。メスに食われながらも交尾を続けるオスのカマキリ。危険を顧みず森と池の往復をくり返すヒキガエル・・・。命のバトンをつなぐ生死の営みは哀切と驚きに満ちています▼ひるがえって人間はどうか。今感染症や災害が世界にひろがるなかで無力感にさいなまれる人がいる一方で、これまでの生き方や社会のありようを変えようという新たな動きも▼まるで支配者のようにふるまう人間も自然の一部です。この地球上で営々と生命をつないできた仲間として、もっと謙虚であれ、と呼びかけられているようです。コロナ後の時代をどう生きるのかと。(2020・7・12) 【今日の出来事】1954年「人間ドック」始まる 1963年生…

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「香港が焚書時代になる」『赤旗・潮流』

香港で人権抑圧を強める国家安全維持法が施行されてから10日あまりがたちました。市民の逮捕が相次ぐ一方、創意工夫をこらした抗議行動が毎日続いています▼「今日焚書(ふんしょ)、明日坑儒(こうじゅ)」。民主派の区議会議員が掲げた抗議の言葉です。法律の施行に伴い公共図書館で民主活動家らの著作の閲覧や貸し出しができなくなったことを非難しました▼「焚書坑儒」は古代中国・秦の始皇帝が自らの支配を固めるために行った思想言論弾圧です。実用書以外の書物を焼き捨てさせ、体制を非難する儒者を穴に生き埋めにしたとされます▼香港政府は昨年来の抗議行動で市民が使ってきたスローガン「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、われわれの時代の革命だ)」も処罰対象だ主張しています。国家安全維持法はもともとどんな言動が犯罪になるのかも不明確なもの。「香港が焚書時代になる」と懸念が広がるのは当然です▼言論封殺に抗して市民がいま新たに始めたのが、何も書いていない真っ白な紙を掲げ、スローガンを叫ばない形で行う抗議です。スローガンは禁止されても意思表示はやめないという意気込みです。当局は参加者を逮捕しましたが「白紙を掲げる人々を政府が恐れるとはおかしなこと」と市民は意気軒昂です▼今の世界では重大な人権侵害は単なる国内問題ではなく国際問題です。人権は自由を求める人々のたゆまない運動で勝ち取られ拡充されてきました。歴史をみれば香港市民のたたかいにこそ未来があることはあきらかです。(2020・7・11) 【今日の出来事】1950年日本労働組合総評議会(…

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「まだなんや!」大阪の10万円給付 『赤旗・潮流』

「なんでやねん」。大阪市天王寺区の喫茶店で男性客2人が声を張り上げていました。現金10万円の一律給付のことでした▼「おまえんとこ、きたか」「まだや」「大阪市は遅いねん」「業者に、丸投げしよったんや。しかも経験のないとこにな」▼一律給付は6月末までに全国の総世帯数のおよそ70%で完了しましたが、大阪市が給付を終えたのは約152万世帯のうち10・9%にとどまりました。全国の20政令都市のうちで最低です▼松井一郎大阪市長は記者会見で、遅れの理由について「システム稼働の遅れに加えて、届いた申請書の支払いまでの各工程において、滞留がが発生していた」と説明しました。コンピュターシステムの電力不足のため工事が必用だったとか▼市が委託した業者は過去にプレミアム付きの商品券の発券作業を担当した事業者、リーマン・ショックを受けた2009年の定額給付金制度の作業を経験した事業者ではなく、松井市長は「給付作業への認識が甘かった」と陳謝しました▼大阪市のコロナ対策は医療提供体制の強化はじめ市民・事業者や文化芸術団への支援でも他の政令市と比べ貧弱です。一方で大阪市が募った「雨がっぱ」は約33万枚が集まり、市は、「医療機関をはじめ必用とする現場で有効に活用」と感謝したもののおおくが活用されず山積み。「とにかく思いつきなんですよ」と、市職員も嘆きます。(2020・7・10) 【今日の出来事】1955年第1回世界母親大会宣言発表 【注】宣言→「生命を生み出す母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」

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地球全体が警鐘を鳴らす時代 『赤旗・潮流』

古来日本の文化とは川の文化でもありました。川の水を治め地を養い、米をつくる。人や物を運ぶ。個々の川には、その土地の歴史が刻みつけられています▼この国の川は急流で短い。降った雨は洪水流となって一気に海へ突っ走り、あとはたちまち乾いてしまう。その暴れ川の氾濫原に土地利用をもとめてきたのが日本人であった・・・。『水の文化史』を著した富山和子さんは、昔から水害は宿命的で治水が最大の課題だったと説いています▼しかしいま、魔物のように荒れ狂い、各地で人びとや町を飲み込んでいく姿は、もはや治めることができないほど激しい。数十年に一度、経験したことのない豪雨がぐり返される現実は、川とのつきあい方さえ変えてしまいます▼北極圏に位置するシベリアの町で40度近い気温が記録されるなど、地球全体が警報を流す時代、温暖化を抑え、異常なありさまを元に戻す責任もまた、人類に問われています▼「どんな試練なのか・・・」。一夜にして生活のすべてを失い、途方に暮れる被災者がもらしていました。コロナ禍に水害。列島の至るところで、命とくらしを脅かす危機があるいまこそ、政治が役割を果たすとき、ところが、ときの政府は自利ばかりを追い、疑惑にまみれ、人心や社会を沈ませています▼文化とはゆとりである。そう富山さんは呼びかけます。「先祖たちが培ってきたそのゆとりを現代の私たちが取り返せるかどうかが、いま自然からも歴史からも、試されているように思えてならない」(2020・7・9) 【今日の出来事】1955年ラッセル、アインシュタイン宣言発表 【注】…

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「平和」の対義語は戦争だけではない

「『平和』という言葉を辞書で引いたことありますか?」と問われたら、ほぼ大抵の人は「いいえ」と答えるでしょう。それは誰もが「平和」は日常的に頻繁に使われ、熟知しているつもりでいるからです。  ところが、かつて、必用があって辞書(新明解国語辞典 第五版)を開いて驚きました。第一義には「心配、もめごとがなく、なごやかな状態」と。続いて第二義として「戦争や災害などがなく、不安を感じないで生活できる状態」と、書かれていました。  「平和」の対義語(反対語)はドンパチと銃火を交える戦争だけでなく「災害・洪水」などが肩を並べて明記されているのです。そこで、今度は「災害」とはなんぞやと思いページをめくると「台風、洪水、地震、大火、伝染病」とずらり並べられています。  伝染病イコール感染症とすれば、ここのところの新型ウイルスの猛威は世界中が戦争の渦中にあるといってもいいのではないでしょうか。  これを書いているとき傍らのテレビが、一昨日来の熊本、岐阜、長野県の荒れ狂う河川氾濫の模様を、キャスターがこわばった調子で話しています。 ここ数年来、この国は地震、台風、洪水などに見舞われ災害列島化しています。日本列島は、常に平和が損なわれており、「平和日本を保持する」は日常的、永久の課題なのです。  

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徹底して論戦避けた都知事選

「望外のご支援をいただいた」。再選された小池百合子都知事は喜びを口にしました。前回を下回る55%の投票率。都民はどんな思いで今回の選挙を見つめていたのでしょうか▼感染拡大のなかで活動が制約された選挙戦。コロナ対策やオリンピック、福祉や教育・・・。さまざまな争点があったにもかかわらず、小池知事は徹底して論戦を避けました。テレビ討論もなく多くの有権者に問題が見えないままの選択でした▼選挙中にNHKが実施した都民1万人アンケートがそれを反映しています。小池知事はどんな資質をもちあわせているか。上位に並んだのは発信力やリーダーシップ。決断力。しかしこれは、マスコミなどによってつくられたイメージによるところが大きい▼実際、公約にしてきた「7つのゼロ」の実現度を聞くと、ほとんどの公約で実現できていないとの答えが圧倒的。この4年間でくらしが良くなったという人はわずか6%。都民の意見が都政に反映されていないとの声も6割をこえました▼誰にでもやさしい、ぬくもりのある社会をー。東京のSNSやインターネットで発信した宇都宮健児さんの訴えは、期待となって若い世代にもひろがりました▼「日本経済の中心である東京の成長戦略をしっかりと進めていきたい」と小池知事。そこに都民のうめき声を聞く耳はあるのか。命やくらし、人権を後回しにする政治の転換。それはいま世界的にも求められていると宇都宮さん。「次につなげよう。新しい日本をつくる運動は続く」(2020・7・7) 【今日の出来事】1937年盧溝橋事件起きる(日中全面戦争へ)

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災害に対する認識改めなければ 『赤旗・潮流』

「人吉(ひとよし)・仲良し・こころ良し」。おだやかで大らかであたたか。熊本県の南端にある人吉・球磨の気質を称してこう呼びます▼深い山と谷に囲まれた山峡の地。隔たれた自然と、鎌倉時代から明治維新まで相良(さがら)一族700年の統治によって、独自の歴史や文化がはぐくまれたといいます。司馬遼太郎は『街道をゆく』のなかで「日本でもっとも豊かな隠れ里」と記しています▼文化庁の日本遺産にも認められたこの地で、人びとの心とくらしの礎になってきたのが球磨川です。その宝の川が、記録的な豪雨によって氾濫し、住民の命をうばい、町を一変させてしまいました▼もともと三大急流の一つに数えられ、たびたび洪水に見舞われてきた流域。球磨村では支流の近くにある特養老人ホームが水につかり、多くの高齢者が巻き込まれました。津波のように押し寄せ、施設内はすぐに身動きがとれなくなったという証言も▼数年前にも川沿いの高齢者施設が被災する事例がありましたが、早めに手を打つことはできなかったのか。いつ、だれが、何をするか。それを事前に定めた防災の行動計画をつくっていたそうですが、はたして機能していたのか。もとよりそれを上回る規模だったか。検証がまたれます▼大量の雨に襲われる時代。堤防などでは追いつかない現実もありあす。どこでも災害にたいする認識を改め、準備や避難の体制を整えておく。水とともに生きてきたこの国が率先してやるべきことです。痛ましい姿をくり返さないためにも。(2020・7・6) 【今日の出来事】1535トマス。モア斬首される 1944…

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問われる「災害」との向きあい方 『赤旗・潮流』

記録的な大雨によって広い地域に避難指示が出された日の夜でした。安倍首相をはじめ、自民党の国会議員が酒を酌み交わしていた「赤坂自民亭」から2年。西日本豪雨はそのすさまじさとともにだらけた政権への怒りが記憶されています▼河川の氾濫や堤防の決壊、土砂崩れやなだれこんだ大量の木や石、濁流にのみこまれた街や家々。目の前にひろがる無残な光景に被災者は一様に。「まさか、わが身にこんなことが起きるとは・・・」▼九州北部の集中豪雨も3年前と、最近はこの時期にくり返し発生する大雨。今年もまた、熊本や鹿児島で多くの犠牲者、浸水や土砂崩れなどの深刻な被害をもたらしました。一刻も早い救助、支援がまたれます▼次つぎと列島を襲う災害は新しい対応を求めています。激甚災害となった昨年の台風19号のような流域型洪水は、広い地域にわたり大規模な被害をうみました。いまや未経験の猛威を想定した行政、インフラ整備が欠かせません▼しかもコロナ禍のさなか。非難の仕方や避難所のあり方も問われています。こうした危機に際したときほど、政治がどこを向いているかがくっきりと、災害との向きあい方、備え方、被災した人びとのためにどれだけ力を注ぐか。そこから国のかたちがみえてくると、防災の専門家も指摘します▼共通している被災者の叫びはもう一つ。「この国の政治は、国民の命を守ろうとしているのか」。何よりも、そこに重きを置く政治。それは今も、この先にもつながるはずです。(2020・7・5) 【今日の出来事】1949年国鉄争議の渦中、下山事件起きる 【注】185…

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あした投票日を迎える日本 『赤旗・潮流』

自分は何者なのか。それを考えるとき、国に根ざす人びと多いが、自分たちはこの場所にあるー。何年か前にSEALDsのメンバーと対談したした香港の学生運動家が話していました▼植民地の長い時代をふくめ、複雑な歴史をたどる地。返還以降そこで”香港人”としてのアイデンティティーを確立するようになった。そして、言論の自由や政治への抗議デモといった守り継ぐべきもののために、声をあげていると▼「絶望の中にあっても、いつもお互いのことを想い、私たちはもっと強くいきなければなりません」(周庭さん)。中国で許されないことは香港でも許されない。そんな抑圧法が強行されるなか、民主的な活動つづける若者たちは厳しいたたかいを余儀なくされています▼「香港独立」の旗を掲げた市民が逮捕される現実。大国によって奪われようとしている大事なもの、自由に生きることへの希望さえも▼あした都知事選の投票日を迎える日本、どんな首都東京をつくるのか。都民の命とくらしを託せう人は誰なのか。周庭さんは以前、選挙に行くことの意味を私たちに呼びかけています。「香港人はずっと民主的な選挙制度を求めてきた、あなたたちがもっている権利を大切にして」▼先の対談を本にまとめた「日本✗香港✗台湾 若者はあきらめない」。彼らはこんな言葉で連帯の思いを。「きみたちの世界なんだ。きみたちの国なんだ。きみたちが問われているんだ」。(2020・7・4) 【今日の出来事】1776年アメリカ独立宣言 1946年フイリピン独立 【注】1934年キュリー夫人死す

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ロシアの憲法改正 『東京新聞・筆洗』

謎の中にあって、謎に包まれた謎であると英首相チャーチルは、その国を評したという。ロシアである。政治指導者や体制はかわるが・時の権力の道理に反した振る舞いが、しばしばまかり通る。「アネクドート」と呼ばれる風刺小話の多くも、そのあたりから生み出されてきた▼最近、ネットで教わった一つはこうだ。二人の会話。「プーチンは大統領の座を手放すのだろうか」「もちろんだ」「いつ」「即位すればすぐにね」▼ロシアなら驚くことはないのかもしれないが、永世の権力者の”即位”に道を開くかのような改正が実現した。プーチン氏の大統領としての在職期間はこれで、ゼロに戻って勘定されることになり、再選に関する任期制限には、引っかからなくなるのだという▼最長で83歳、2036年まで続投できるようになった。権力の座にある長さは、スターリンを超えるかもしれないそうだ▼景気の後退や石油需要の鈍化のなかで、任期満了が近づく。衰える求心力を取り戻す狙いもあるらしい。長年の利権の構造を守りたい人がいるのだとは聞くが、全国投票で支持した人々の心情も、なかなかはかりがたい▼大統領選の際に知った小話。「大統領、いい知らせです。再選されました。悪い知らせもあります。誰もあなたに投票していなかった」あくまでジョークであるが、謎の国らしさが伝わる。(2020・7・3) 【今日の出来事】1979年にしドイツ、ナチスを含めた殺人犯の時効廃止

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「『お登紀さん』あなたの出番でしょ」 『赤旗・潮流』

歌と共に時代を駆け抜けた歌手ならではの決断でした。東京・渋谷のオーチャードホールで、緊急事態宣言解除後、初の大規模コンサートを行った加藤登紀子さん。先陣を切った挑戦に大きな注目が集まりました▼観客は全員マスク姿で市松模様を描くように着席。無観客でもやろう、と決めた時、東京都から「1000人以下、かつ収容定員の半分以下」の目安の緩和が示されました。「『お登紀さん、あなた(の出番)でしょ』と天から声が降ってきたような気がして・・・」。できることがあれば動く。その心意気に観客も大きな拍手でこたえます▼2月末、政府のイベント自粛要請に、いち早くこたえたのがライブ・エンターティメント業界でした。ぴあ総研の調べでは、2月から5月末までに中止・延期したイベントは19万8000本。しかし損失補償はされず、多くの関係者が生活苦に直面しました▼「2,3カ月、経済がストップしただけで、多くの人が生きられないレベルの困窮に陥る社会は世界でも恥ずかしい」。これだけは書いてほしい、と本紙日曜版で加藤さんが語った言葉です▼NHK番組では、英国ロイヤルバレエ団で最高位のプリンシパルを歴任した吉田都さんが、日本ではダンサーが職業として守られていない、と話します。「芸術は生きる喜び、悲しみ、魂の叫びを表現・・・。人間が人間らしくあるために必用」▼コロナ禍であらわになる日本の政治の貧困。文化芸術をどう位置付けるか。国のあり方が問われています。(2020・7・2) 【今日の出来事】1950年金閣寺炎上 1964年アメリカ、公民権法成立…

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今日からレジ袋有料化へ 『赤旗・潮流』

穏やかな海に大小の島が浮かぶ瀬戸内。そこで、10年以上も前から海洋ゴミを減らすとりくみをつづけている若者たちがいます。岡山にある山陽女子中学・高校の地歴部の生徒です▼海上を漂い、海底に積もり、島に流れ着く大量のごみ。それを回収し、分析した情報を地域や社会に発信しています。多くは生活から出るプラスチックごみ。みんなの意識を変えることがきれいな海につながると啓発しています▼きょうからレジ袋が有料化されます。年間で300億枚以上が消費されるという日本。他にも容器やトレー、ペットボトル・・・。国民一人あたりのプラごみ廃棄量は米国に次ぐ世界2位です。削減に向けた一歩にしたいものですが、このコロナ禍で需要が増える逆風も▼人体や生物への影響、環境汚染の深刻さをみれば削減は待ったなしの課題です。このままでは、2050年には海洋プラごみが魚の量を上回るという専門家も。自分たちが捨てたごみを自分の口に入れているかもしれないと▼国民に負担させるだけでは解決しないでしょう。つくってから捨てるまで企業に責任をもたせる。大量生産、大量消費、大量廃棄から脱皮し、国は循環型社会への道筋をつける。その点でいえば、日本政府の対策は大きく立ち遅れています▼「つくる責任 つかう責任」。持続可能な世界をめざすために国連が掲げた目標の一つです。地球や社会のあり方が問われている時代。先の生徒の一人が述べていました。「身近な問題に無関心ではいけない」(2020・7・1) 【今日の出来事】1890年第1回衆議院総選挙 1944年戦後の国際経済秩…

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