涙と雨の歌からしのばれる 『東京新聞・筆洗』

1938年から40年にかけて、日本の流行歌は雨と涙で明け暮れた。とルポライターの竹中労さんが書いている。<ああかえり来ぬ心の青空/すすり泣く夜の雨よ)は淡谷のり子さんが歌った「雨のブルース」。ヒットした「古き花園」では、二葉あき子さんが<白きバラに涙して/雨が今日も降る>と歌っている▼いくつもの涙と雨の歌からしのばれるのは、太平洋戦争前夜のくらい世相である。40年は最初の東京五輪が開かれるはずの年だった。返上が38年に決まっている、世相の一部ををなす出来事であったさろう▼せんそうによる返上が世の中に落胆をもたらす一方で五輪を開いている場合ではないという論調もあった。いずれにせよ、日ごとに五輪開催を想像するのが難しくなっていく時代であった▼戦禍での返上とは違うけれど、悲しい雨にかすんだように祭典を想像し難くなっているようだコロナ禍がなければ、きょうは開会式がある日だった▼東京に集まった選手の表情に客席の国際色、開幕に先がけて試合があるサッカーなどの盛り上がり・・・。いまはどれも想像し難い▼一年後のことも思い浮かべるのが難しくなっているようで、世論調査では中止を望む人も多い。こんな状況だが「心の青空」を感じる一年後になってほしいと願う。身の丈を小さくする必要があろう、ハードルの高さを考えると時間は少なそうだ。(2020・7・24) 【今日の出来事】1927年芥川龍之介自殺 1950年GHQ、新聞関係者のレッドパージ勧告

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