広島[「まるで地獄じゃ きょう8月6日」 『東京新聞・筆洗』

終戦後も、使われたはずである。「慰霊」の「霊」は旧漢字の「靈」と難しい。器をかたどっているらしいが、見れば、横一列に並ぶ「口」がある。慰霊に望む時、人は今この世にいない人びとが発する言葉に、耳を済ませるものかもしれない▼きょうは広島原爆忌。午前八時十五分の投下から。「草木も生えない」と言われた七十五年の月日がたって、迎える慰霊の日である▼・・・<ピカは人が落とさにゃ落ちてこん>。耳に響いてくる言葉があるとすれば、「原爆の図」の画家丸木位里さんの母スマさんの嘆きもその一つだろうか、<まるで地獄じゃ・・・鬼の姿が見えぬから、この世の事とわ思うたが>などの言葉とともに書き留められ語り継がれる▼人が落とす恐れが、この歳月にしてなお消えていない核兵器である。手を合わせながら七十五年の人の営みを問うなら、心にはさらにどんな言葉が返ってこよう▼史上初の核実験から七十五年を迎え、トランプ米大統領は先日、実験を「素晴らしい偉業」と語ったそうだ。地球上にいまだ1万発以上の核弾頭があって、保有国の米中は緊張の渦中にある。核兵器禁止条約は日本が参加せず、発効もしていない▼<しずかにみみを済ませ/何かが近づいてきはしないか・・・午前八時十五分は/毎朝やってくる>生誕百年を迎えた詩人石垣りんさんの『挨拶』。聴くべきものが多い慰霊の日だろう。(2020・8・5)東京新聞 【今日の出来事】1945年広島原爆投下

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