「ドコモ口座」と「ひも付け」『東京新聞・筆洗』

手もとの辞書で「ひも」の定義の一つはこうだ、「糸より太く、帯・綱より細いもの」。簡潔にして、なるほどとも思われる。結んだり、ほどいたりするのに、ほどよい太さが、ひもかもしれない。なるほどと思えないのが、後にある「ひもつけ(紐付け)」だ▼「衣服。調度などで紐をつけるべき所」と「言いがかりをつけたり、苦情を言い立てたりする者」しかない。「ひもづけ」と読んで、あちらとこちらのデータなどを関連づけることを表す、近ごろよく見る意味は、新しく加わったものなのだろう▼いや、さほど違和感はないかと思わせる事態である。NTTドコモの電子マネー決済サービス「ドコモ口座」で不正な預金引き出しが明らかになっている▼銀行口座との「ひも付け」に関し、本人確認などの仕組みが不十分だった。被害額は一千万円を超えて拡大している。苦情も寄せられたことだろう▼世に詐欺のたねはつきまじで、新しい技術や仕組みが現れれば、よからぬたくらみの新機軸も登場するのが近ごろの常である。銀行口座に関するひも付けなら、いっそうの厳格さが求められるとは、考えないものか▼競争の渦中にあるサービスという。銀行口座と簡単に結んだり、ほどいたりできるひもが、顧客増にプラスになるという思惑はなかったのか、検証も必要であろう。新サービスが不安のひも付きでは困る。(2020・9・11)

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