「京アニ」の新作映画公開 『赤旗・潮流』

コロナ禍で一つずつ空いた席。周りからはすすり泣く声が聞こえ、あちこちで涙をぬぐう姿もみられました。物語の切なさとともに、突然命を絶たれ人びとに思いをはせて▼凄惨をきわめた放火殺人から1年2カ月。京都アニメーションの新作映画が全国公開されました。「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」。事件後、悲しみや再度にわたる公開延期をのりこえ、残された社員らが力を尽くして完成させた初めての作品です▼情緒あふれる世界観と人物の繊細な心理描写。光と影の濃淡や自然美を浮き立たせる色づかい。国内外に多くのファンをもち唯一無二の存在といわれる京アニ作品の魅力が存分に。終幕には制作にかかわった犠牲者の名も映し出されました▼小説が原作のこのシリーズは、戦争で両腕を失い義手となった少女が手紙の代筆を通じて愛の意味を学び、成長していく姿を描いたもの。石立太一監督は「見てくださった方が自分の大切なひとを思っていただければ幸いです」と▼一瞬にしてすべてを焼きつくした憎しみの炎。アニメーターとしての人生を断ち切られ、夢も奪われた36人の犠牲者。遺族や関係者、ファンをはじめ、いまも埋めようのない喪失感にさいなまれています▼移ろうときのなかでも変わらないもの、決して忘れてはならないこと。憎悪や憤怒の感情を赴くままにぶつけるのではなく、だれかを思い、ひとを愛する。そんなやさしさに満ちた社会でありたいー。作品にこめられたメッセージです。(2020・9・23)

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