「大統領の権威」はもうはりぼて 『赤旗・潮流』

昭和を代表する名優、初代中村吉右衛門は、舞台を降りると口が達者な人ではなかったらしい。気のきいた芸談は多くなかったというが、なにげないようで味わい深い言葉も残している。「はりぼての石を重そうにもってみせるのが芝居だ。歌舞伎評論家千谷道雄さんの著書にある▼考えてみれば、舞台ではりぼてなのは石や小道具にかぎらない。親子や男女、主従の情や縁、不思議な因果も、持てば軽い、つくりものである。舞台でいかに重く見せるか。試される役者の力量、極意だろう▼病をいかに軽く見せるか。そこに政治の極意を見ている人もいる。新型コロナウイルスへの感染が明らかになったばかりのトランプ大統領が、もう退院した▼大国のリーダーとして、ウイルス感染に関する危機管理について反省の思いもさぞあろうと思えば、違っていた。ウイルスを「おそれるな」などと述べ。コロナや病状を軽く見せる言動を繰り返している▼回復が順調なら喜ばしい。ただ重症者に使う薬を投与されたそうだ。周囲に感染者が増えていて自分の陰性の診断が出る前にもかかわらず、活動し始めた▼選挙のための動きと見透かされそうなのに、大喜びで喝采する支持者がいる。ウイルスは思うより軽いと信じる米国民が増えないか。大いに気がかりだ。人気回復の極意かもしれないが、大統領の権威が、はりぼてに近づこう。(2020・10・9)

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この記事へのコメント

  • 永井至正

    【訂正】本ページは[赤旗」ではなく、「東京新聞・筆洗」でした。お詫びして訂正します。
    2020年10月09日 11:02