読書は心の森林浴をモットーに 『赤旗。・潮流』

たたかう本屋です。地域とつながりを絶やさないため、理不尽な出版流通の仕組みにあらがうため、まちの文化を守るために▼大坂市中央区・谷町6丁目の駅近くにある隆祥館書店。店主はシンクロ水泳の日本代表選手だった二村知子さん。小さな店内には日本や世界の今を映し出す骨太の作品が並びます。しかも売上た数がすごい。500冊を売って全国1位を記録した本も▼新刊を読み込み、来店する一人ひとりの顔や好みを覚え。その人に合った作品をすすめる。読書は心の森林浴をモットーに、つくってきた信頼関係があります▼もう一つの信念は差別を扇動するような本は置かないこと。そこには大手書店ばかりに優先配本しながら、ヘイト本を押しつけてくる取次店への怒りも込められています。先代の父、義明さんは、「本は毒にも薬にもなる。右から左へ流すものではない」と。創業70年余の苦闘の歩みはジャーナリストの木村元彦さんが『13坪の本屋の奇跡』にまとめています▼作家と読者の集いも頻繁にに開いてきました。先月は「都」構想の問題点を考えるトークイベントを。大坂の伝統を継いでいくためにも「都構想には反対です」と知子さんはきっぱり▼読書週間が始まりましたコロナ禍で読書量は増えているにもかかわらず、各地のまちの本屋はつぎつぎと姿を消しています。この20年でほぼ半減したとの調べもあり、隆祥館書店のたたかいは続きます。きょうも思いを込めて。「手にとる本を未来につなげていきたい」(2020・10・31)

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憲法に明記された学問の自由 『赤旗・潮流』

「学匪」(がくひ)という中国から伝わった蔑称があります。学問や知識で民心を惑わし、社会に悪影響をおよぼす学者や学生を指します。その屈辱の言葉を国の議会で投げつけられた学者がいました▼戦前に憲法学の最高峰といわれた美濃部達吉です。国家を法人とみなし天皇は法人たる国家の最高機関という学説が国体を揺るがす危険思想だとして弾圧されました。ときの政府は全著作を発禁とし、公職からも追放。不敬罪での告発、右翼による襲撃へと進んでいきました▼この排撃の嵐のなかで言論や学問の自由も奪われ、立憲主義は停止し、歯止めを失った権力の暴走が日本を破局的な戦争に引きずり込んでいった。『「天皇機関説」事件』の著者、山崎雅弘さんは今に重なる警鐘を鳴らしています▼戦後、憲法に明記された学問の自由の保障。それが、こうした歴史の反省のうえに刻まれたものだという認識はあるのか・・・。学術会議の人事に介入した菅首相に対志位委員長が国会でただしました▼理由も明らかにしないまま任命を拒む侮辱。これまでの政府答弁さえすべて覆す横暴。これは全国民にとっての大問題で、強肩をもって異論を排斥する政治に未来はないと▼美濃部は当時、国民一丸となって国防の強化にまい進するよう求めた軍部の小冊子にこう反論していました。「国民を奴隷的な服従生活の中に拘束して、いかにしてこのような急速な文化の発達を実現することができようか。個人的な自由こそ、実に創造の父であり、文化の母である。(2020・10・30) 【追記】「滝川事件」を主題にした黒澤明監督の映画・”わが青…

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テレビ小説「エール」と軍歌 『赤旗・潮流』

戦時中を覆った軍歌から、平和を掲げる戦後のヒット曲へ。NHKのテレビ小説「エール」が時代と音楽の転換を描きだしています▼主人公の古山祐一は、作曲家・古関裕而がモデル。時代の流れに呼応するかのように、「戦地に行く人々を励ます」といって求められるがまま、次々に軍歌作っていきます。しかし、戦場で兵士が無残な死を遂げるのを目の当たりにして、自分を責めることに・・・▼戦後、実際の古関が反省したかどうかは定かでありません。むしろ、自作の軍歌を「快心の作」と愛着を持って回想しています。自衛隊歌にも取りかかりました▼ドラマはフィクションですから、人物像をそのままなぞる必要はないでしょう。しかし、軍歌には消してはならない重要な意味が含まれています。「エール」にも描かた「人々を戦争に駆り立てた」という事實です▼美空ひばりのヒット曲などを手がけた作詞家の故石本美由紀が語っていました。「軍歌には依頼した側の意思が全面的に込められている」と。NHKも古関にニュース歌謡、国民歌謡の名で作曲を依頼して戦意をあおりました・「音楽は軍需品」とされた時代。放送も軍国主義の宣伝機関です▼朝ドラの戦後編ではテレビから明るい歌声が流れます。戦災孤児を見つめたラジオドラマ「鐘の鳴る丘」の主題歌や、戦災受難者の再起を願う「長崎の鐘」。これらの歌に耳を傾けると、軍歌が闊歩する時代が再び訪れることがないようにと、そんな思いがいっそう強くなります。(2020・10・29) 【追記】戦争の語り部・随談家の小沢昭一さん(故人)が「戦争の話をするとき私…

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「胸打たれる夜間中学の映画」『赤旗・潮流』

「学ぶことは生き延びること」。その言葉は、動詞の現在進行形で英訳されました▼夜間中学のドキュメンタリー映画『こんばんはⅡ」の英語字幕版が完成。新型コロナで中断していた、公立夜間中学の設置を求めるキャラバンを後押しします。優しい気持ちに包まれ、無性に学びたくなる。夜間中学の豊かさに胸打たれる映画です▼字幕版完成後、初の一般上映会は来月14日横浜で。会場のあーすぷらざには、4カ国語で対応する外国人相談コーナーが設置されています。学びから暮らしに至るまで、多数の資料に出会える情報フォーラムも。2006年の窓口開設以来のスタッフ、加藤佳代さんは言います。「ちょっとした情報のかけらを使って、一歩踏み出してほしい」。字幕版上映スタートの地にふさわしい空間です▼「子どもが学ぶ意欲を持てない・・・」。英語字幕版を担当した関美江子さんは、日本語指導に悩んでいました。5年前、夜間中学の学びに目覚めて以来、安心の場の必要性を痛感します。その人が抱えるもの、願うことを丸ごと知る努力を惜しみません▼人のつながりでたどり着くことが多い夜間中学。その存在を知らされないことで学びを保障されない人たちがいます。この国で人間らしく生きていきたい。失われた尊厳を取り戻したい。そんな願いに背を向ける流れも生まれています。時の政府は物言わぬ人々を求めているのでしょうか▼黙っていては思うつぼ。私たちは学び、つながり、そしておしゃべりをあきらめません。(2020・10・28)  

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「平和」の対義語は「戦争」だけではない

 「平和」という言葉の意味は熟知しているつもりでいたが、あるとき必要に迫られて辞書(新明解国語辞典 第5版)を引いて「ハッ!」とさせられた。「戦争や災害などが、不安を感じないで生活できる状態」と書かれていた。つまり、「平和の対義語(反対語)はドンパチと銃火を交える戦争だけでなく「災害」(台風、洪水、地震、大火、伝染病)が肩を並べて明記されているのだ。  年初来の新型コロナウイルスの猛威は、世界中の平和が損なわれているといってもいいのではないか。とりわけ、この日本は地震、台風などの「災害」に頻繁に見舞われ、災害列島化している・  この国の平和を保つためには、政府が”おためごかし”に出動させる自衛隊(隊員は体を張って奮闘しているが)の一部を災害救助隊として改組。常日頃の諸準備とその対応に充てる必要はないのか。かつて、私の住む江東区の高齢者集会などで呼びかけられた「平和なくして 福祉なし」という合言葉を、今こそ強く噛みしめたいと思う。 【追記】「豊かな自然こそ『平和の象徴』」と題して、ブログ「満州っ子 平和をうたう」(2014年3月)に私が書いた一文が由来。

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唯一の被爆国でありながら 『赤旗・潮流』

「今度こそ、母さんを助けるぞ」・そう叫んで目が覚めたときの言いようのない悔しさ。先月91歳で亡くなった岩佐幹三さんは生前、同じ夢をくり返し見たと語っていました▼16歳だったあの日、広島の爆心地から1・2㌔の自宅で被爆。崩れ落ちた家の下敷きになって原爆の業火に生きながら焼かれる母を救えなかった「罪」を生涯背負いました。そして、死者にたいする誓と決意を胸に核兵器廃絶を命の限り訴えつづけました▼3年前、国連で核兵器禁止条約が採択されたとき、岩佐さんは喜んでいました。「母や妹をはじめ、原爆で亡くなっていった人の死がむだではなかったということを明らかにしてくれた」。発効が決まったことを知ったら、どんなに・・・▼被爆75年、核兵器の全面禁止にむけた歴史的な全身の歩み。歓喜と祝福が相次ぐなか、日本政府への失望や怒りがひろがっています。唯一の戦争被爆国でありながら、いまだに核の傘に便り禁止条約に背をむける 。被爆者や運動を否定するような姿勢に終始しています▼菅首相就任後の初の所信表明演説。「国民のために働く内閣として新しい時代をつくる」といいながら、そのための柱も画期をなす施策もない。対峙する市民と野党の共闘の土台となる政策には、新しい日本を切り開く道が鮮やかに▼そこには核兵器禁止条約を直ちに批准することも。いつか、核なき世界が実現したときのことを岩佐さんはつづっています。「母さんたちと一緒にお空に上ってお星さまになりたいね」(2020・10・27) 【追記】これでも、日本政府は「批准しない」という。日本人であ…

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没後10年「井上ひさし展」 『赤旗・潮流』

作家の井上ひさしさんは夜型でした。夜食を自分でつくれるように、料理研究家のユリ夫人が簡単なレシピをいくつか教えたそうです。雑誌『東京人』の11月号につづっていました▼ひさしさんが「すっかり気に入りしょっちゅう作っていた」という一品をつくってみました。ニンニクとアンチョビをオリーブ油で炒め、ゆでたスパゲッティとあえるだけ。アンチョビとは塩漬けカタクチイワシの油漬け。おいしいけれど、少しショッパイ塩漬け・・・▼ユリさんが教えてくれます。「ひさしさんはしょっぱいものが大好き。それに麺類も。日本のコメを守れと論陣を張っているのに、『おれはスパゲティがあれば、コメなくてもいいかなあ』なんておどけていたこともあります」▼没後10年を記念して東京の世田谷文学館で「井上ひさし展」が開催中です。発見だったのはイタリアの芸術生活都市を訪ね、思索を深めた『ボローニャ紀行』の充実ぶりです『日常の中に楽しみを、そして人生の目的を見つけること」「困難にぶつかったら過去を勉強しなさい。未来は過去の中にあるから」など、珠玉の言葉が並びます▼レジスタンスで2000人が犠牲になり、戦後、市民運動の力で文化による街の再生を果たしたボローニャ。でも実現の道のりは平坦ではありませんでした▼ユリさんはいいます。「ひさしさんはよくいっていました。市民運動でも何でも負けてもいいんだ。その先につながる負け方をすればいいんだ、と」。なるほど千里の道も一歩からです。(2020・10・26) 【追記】困難にぶつかったら「温故知新」ですね。

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「核兵器の終わりの始まり」『赤旗・潮流』

「カーン、カーン、カーン」。終戦直後のクリスマスイブ。廃虚の原子野に鐘が鳴り渡りました。それは何もかも失い打ちひしがれる人びととって、希望の音でした▼原爆によって吹き飛ばされた長崎・浦上天主堂の鐘楼。しかし大鐘は奇跡的に壊れることなく、がれきの中から見つかりました。それを信徒らが丸太でつり上げ、打ち鳴らしたのです▼「澄み切った音が平和を祝福して伝わってくる。世界の終わりのその日の朝まで平和の響きを伝えるように・・・」。原爆で妻をを失い、自身も重傷を負いながら救護に奔走し、白血病で亡くなった長崎の医師、永井隆さんが手記につづっています(『長崎の鐘』)▼テレビ小説「エール」でもとりあげられ、モデルとなった古関裕而の代表曲のモチーフになった図書です。同名の歌を聴いた永井さんは『ほんとうになぐさめ、はげまし明るい希望を与えていただけた」と感謝していたそうです▼いま、もう一つの鐘が鳴ろうとしています。核兵器禁止条約の発効が目前に迫りました。批准した国と地域が49となり、発効に必要な要件まであと一つに。広島で被爆したサーロー節子さんは「核兵器の終わりの始まり」だと▼人類史の新たな歩みと連帯を示す条約。その発効を米国が妨害しているとの報道もあります。しかし、もはや一部の核大国が支配する時代ではありません。新たに手をつないだナウル共和国は太平洋に浮かぶ小さな小さな島国です。核なき世界を告げる、希望の音が響きはじめました。(2020・10・25) 【追記】先ほどの報道によると「核兵器禁止条約」の批准国がついに50…

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大坂都構想は独裁体制つくること 『赤旗・潮流』

「大阪市が持っている権限、力、お金をむしり取る」。前維新代表、橋下徹氏の言葉です。当時大阪府知事。2011年6月29日夜、大阪市内で開いた政治資金パーティーでのことです▼同年秋の知事・大阪市長選ダブル選を「大阪都」構想の信を問う最終決戦と位置付け。「大坂は日本の副首都をめざす。そのために今、絶対にやらなければいけないのは大坂都を作ること」▼「むしり取る」発言は大阪市廃止=「都」構想の本質を端的に表現しています。橋下氏は「今の日本の政治で一番重要なのは独裁。独裁と言われるぐらいの力だ」とも。大阪市が持つ権限。財源をむしり取り、「一人の指揮官(知事)のもとで、好き放題のことができる独裁体制をつくるということでしょうか▼11年11月のダブル選で橋下氏が大阪市長、松井一郎氏が知事に当選したものの15年の住民投票で「都」構想は秘訣。ところが、維新は公明党を抱き込み再度の住民投票が今11月1日にに実施されます▼投票を前に松井現大阪市長(維新代表)の発言が「やっぱり、都構想は大阪府独裁化」と波紋を呼んでいます。大阪市を廃止し4特別区に分割した場合、カジノを中核とする統合型リゾート(IR)誘致が計画されている新淀川区の区長が反対したら、府はどうするのか▼定例記者会見で問われた松井氏は名言しました。「事業自体の権限が大阪府知事にあるので、特別区長の考えが知事と違うからといって事業が停止したり遅れたりすることはありません」(2020・10・24) 【追記】生まれは橋の下、そのふるまいや「傲岸不遜」

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世界一貧しい大統領ホセ・ムヒカ 『東京新聞・筆洗』

 ひどいコロナ禍にみまわれた南米で、感染症の流行が、低く抑えられてきた国がある。ウルグアイだ。これまでの死者数は五十人余り。人口約三百五十万人とはいえ、深刻な状況のブラジルと国境を接しているのを考えれば、相当に少ない▼人口密度の低さなどいくつかの理由が挙げられている。ムヒカ大統領とその後任の大統領らの時代に、国の公衆衛生が大幅に強化されていたのが大きかったという専門家の声が、現地発の報道にあった。▼それが要因とすれば、大きな置き土産となったのかもしれない。「世界一貧しい大統領」と呼ばれ、国内外で愛されたホセ・ムヒカ氏が政治からの引退を表明したという▼2015年まで大統領を務め、85歳の今は議員だった。免疫系の持病があり、コロナ流行下で「もう人々のところに歩いていけなくなった」と語っている。報酬の大半を寄付し、清貧な暮らしぶりで知られた。「貧乏ではない。貧乏人とは、求めるものが多すぎる人のことだ」などの言葉が印象深い▼開発で国同士が対立する世界に向かって「発展が幸せに反してはなりません。人類の発展は幸福のためのものです」と述べた。国際会議での演説は、世界への置き土産であろう▼引退表明の議会では、成功とは「倒れるたびに起き上がるということだ」と語ったそうだ。今後は畑に出て、豆やタマネギを育てるらしい。(2020・10・23) 【追記】永田町の諸君、少しは見習ったら!

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世界一貧しい大統領ホセ・ムヒカ 『東京新聞・筆洗』

 ひどいコロナ禍にみまわれた南米で、感染症の流行が、低く抑えられてきた国がある。ウルグアイだ。これまでの死者数は五十人余り。人口約三百五十万人とはいえ、深刻な状況のブラジルと国境を接しているのを考えれば、相当に少ない▼人口密度の低さなどいくつかの理由が挙げられている。ムヒカ大統領とその後任の大統領らの時代に、国の公衆衛生が大幅に強化されていたのが大きかったという専門家の声が、現地発の報道にあった。▼それが要因とすれば、大きな置き土産となったのかもしれない。「世界一貧しい大統領」と呼ばれ、国内外で愛されたホセ・ムヒカ氏が政治からの引退を表明したという▼2015年まで大統領を務め、85歳の今は議員だった。免疫系の持病があり、コロナ流行下で「もう人々のところに歩いていけなくなった」と語っている。報酬の大半を寄付し、清貧な暮らしぶりで知られた。「貧乏ではない。貧乏人とは、求めるものが多すぎる人のことだ」などの言葉が印象深い▼開発で国同士が対立する世界に向かって「発展が幸せに反してはなりません。人類の発展は幸福のためのものです」と述べた。国際会議での演説は、世界への置き土産であろう▼引退表明の議会では、成功とは「倒れるたびに起き上がるということだ」と語ったそうだ。今後は畑に出て、豆やタマネギを育てるらしい。(2020・10・23) 【追記】永田町の諸君、少しは見習ったら!

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コロナは人の生を奪うだけでない 『東京新聞・筆洗』

仲間に入れていただいている句会の今月の兼題に「うそ寒」があった。秋半ばから晩秋ににかけてなんとなく感じる寒さのこと。なるほど、朝晩はひんやりする▼わが身の無教養を嘆くばかりだが、「うそ寒」の語源を長い間、誤解していた。冬の寒さが本物だとすれば秋の寒さはまだそれほどでもなく、いわば「嘘」の寒さだから「うそ寒」。そう思い込んでいたが、これこそ真っ赤な嘘で「うそ寒」のうそは「薄」からきている▼<うそ寒や親といふ字を知てから>。遺産をめぐって義母と折り合いの悪かった一茶のやるせない句だが、その「うそ寒」の集計結果を見れば、「子という字」がますます小さくなっている。厚労省によると今年5月から7月にかけて受理した妊娠届けが前年同期に比べて11・4%のマイナスとなったそうだ▼新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。コロナによる経済情勢の悪化などで、出産をためらう空気が広がぅているのだろう▼コロナは生きている人の生命を奪うだけでは飽き足らず、新たな生命をこの世に送り出すことにさえ人を臆病にしてしまうのか。この結果、来年の出生数は大幅な減少が予想される▼歯止めのかからぬ少子化にコロナが拍車をかける。手はないのか。少子化の寒さはもはや「うそ寒」を過ぎ、思い出すのは同じ一茶でも<うしろから大寒小寒夜寒哉>の方である。(2020・10・22) 【追記】東京新聞10月21日付最終面の特集記事・「筆洗・解体新書」を興味深く読ませていただいた。コラム「筆洗」の書き手が明かす裏話である。筆者は1963(昭和38)年の生まれ…

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神宮外苑「出陣学徒走行会」『赤旗・潮流』

「いよいよ自分も出陣、徴兵猶予の恩典がなくなり、まさに学徒出陣の時は来た・・・」。77年前。1943年のきょう。「出陣学徒壮行会」が明治神宮外苑競技場で行われました「学徒出陣」の式典です▼東京帝国大学にこの年入学した松岡欣平さんは、戦没学生の手記『きけ わだつみのこえ』で、戦争の大義の肯定と否定の間で揺れる思いを綴っています。12月には陸軍に入営し、翌年に愛知県豊橋市にあった陸軍予備士官学校に入学▼東大赤門近くにある、わだつみのこえ記念館発酵の資料によれば、予備士官学校時代に『修養日誌』を残しています。上官の注意は「批判」をしたがる「学生気分」を一掃し、戦争目的の徹底に集中しています▼とくに上官が求めたのは、「淡白」になることです。「あらゆる角度から世の中を、わが生活を政治を経済を、文学、社会をながめて綴ってみたい」といった学生時代に培った批判精神の払拭(ふっしょく)です▼松岡さんはビルマ(現ミャンマー)方面軍第33師団の連隊の見習士官として配属、45年5月末にモールメン市街で亡くなりました。無謀なインパール作戦から撤退中の戦闘のさなかでした▼豊橋の陸軍予備士官学校(第15師団司令部)の跡地には戦後、私立大学が設立されました。軍の建物が残り、筆者の学生時代には、天井の高い兵舎が学生寮として使われ、大学の自治、学問の自由をよく論じ合ったものです。多くの戦没学生たちの無念、慟哭(どうこく)を忘れず、「学問の自由」を守るたたかいに生かしたい。(2020・10・21) 【追記】「学徒出陣」関連記事(「満…

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展望なき政府の場当たり政策 『赤旗・潮流』

北海道にしようか、沖縄にしようか・・・。知り合いが悩んでいました。せっかく安く旅行できるのだからと周りにせっつかれ、自分も乗り遅れないようにと焦って計画を立てて▼世はGo TOだらけ。「トラベル」は大手旅行会社が連日の大宣伝で旅情をそそる。「イート」もあの手この手で飲食店に客を呼び込む。今週には商店街の活性化をはかるキャンペーンも始まります▼官民あげての事業。コロナ禍で落ち込んだ需要を喚起するためといいますが、これでいいのかという疑問も募ります。実際、制度の不備が次つぎとあらわになり、不公平感もひろがっています。世論調査でも評価は割れ「トラベル」を利用したくないと答えた人は半数近い。感染拡大を懸念する声も大きい▼いまの迷走をみていると、現場の声を聞かず、上から推し進めた政策の弊害がくっきり。なによりも、ほんとうに困っている人たちの支えになっているのか▼コロナによる解雇や雇い止めは6万5千人をこえ、失業者は増えつづけています、商店や会社の休廃業も最悪のペースとなり、日々の食事にも困窮する家庭や学生も。命の重さをてんびんにかけるような格差が拡大しています▼これまでの構造を変えなければ、不平等・不公平の状況は悪化するー。ノーベル経済学賞の転換を呼びかけます。危機をのりこえた先に、どんな日本をつくるのか。展望なき政府の場当たり政策に振り回されていては、国の旅先はみえてこないでしょう。(2020・10・20)

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60年前のきょう朝日訴訟判決 『赤旗・潮流』

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。憲法25条(生存権)は、個人の尊厳を確保するために欠かせない人権です▼憲法を暮しにいかす運動の原点とされる朝日訴訟。重症結核患者の朝日茂さんが低すぎる生活保護費をめぐり、生存権とは何かを世に問い、別名「人間裁判」とも。60年前のきょう19日、東京地裁で浅沼裁判長が朝日さんの訴えを認める判決を出しました▼浅沼判決は「健康で文化的な生活」を 明確に示しています。最低所得層の生活水準が「最低限度の生活」に「当ると解してはならない」。「時々の国の予算の配分によって左右さるべきものではない」。「国民の何人にも全的に保障されされねばならない」▼いまの生活保護は、人間に値する生活に足るものとなっているか。国は最低所得層の消費支出と保護世帯のそれを比較し、次々と保護費を切り下げました。これに対し立ち上がった保護利用者の訴えを冷たく退けた名古屋地裁。保護費の切り下げが、「国民感情や国の財政事情を踏まえた」自民党政策の影響を受けていても、違法ではないと▼テレビの明かりだけの暗い部屋で暮らす利用者・・・、裁判所はその実態から目をそらしているのではないか。「憲法は絵にかいたもちではない」。朝日さんの療養所に足を運んだ浅沼裁判長の言葉です▼自助、共助の押し付けで、憲法25条をゆがめようとする菅政権。不断の努力で生存権を守りたい、朝日さんの「権利はたたかう者の手にある」の言葉を胸に。(2020・10・19)

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五輪に向け「五輪に向け「LGBT病等法」の制定を 『赤旗・潮流』

「ずっといっしょに人生を過ごしたい」。そう呼びかける”公開プロポーズ”が4年前のリオデジャネイロ五輪でありました。女子7人制ラグビーの表彰式後。ブラジルの選手に向け、試合運営を担当する恋人がマイクを握ったのです▼その場で涙し、結婚を誓い合い、口づけを交わす。幸せいっぱいの写真が世界に配信されました。2人は女性です。リオ大会では史上最多50人余の選手がLGBT(性的少数者)だと表明しました▼東京五輪に向けて日本に「LGBT平等法」を制定しよう。15日、性的少数者の支援3団体が国際署名を呼びかけました。経済協力関発機構(OECD)の調査では、日本の性的少数者の法整備は35カ国中34位。国も行政も怠慢のそしりは免れません▼議員や政治家からは、”同性愛が広がれば足立区は滅びる”とか、LGBTは「生産性がない」などの”暴言”もやみません▼当事者への偏見、無理解、いじめ、そして差別ー。それによって職を奪われたり、打ち明けられず悩み苦しんだりする人も少なくない。会見で同性パートナーの存在を公表している。女子サッカーの下山田志帆選手(25)は訴えました。「日本はまだ差別的な言動が多い。自分らしさが認められず、当事者がSOSの声さえ上げられない」▼五輪憲章は「性別、性的指向による差別の禁止」をうたい、東京大会は「多様性と調和」を掲げます。ならば、ふさわしい法律を。それは互いの尊厳を認め合う、優しい社会をひらく一歩でもあります。(2020・10・18)

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今年は杉原千畝の生誕120年 『東京新聞・筆洗』

多くのユダヤ人を収容所行きから救ってきたドイツ人実業家のシンドラーに、助けられたユダヤ人から、指輪が贈られる。文字が刻まれていた。(一つの生命を救う者が世界を救える)。第二次世界大戦期の実在の人物を題材にしている映画『シンドラーのリスト』の一場面である▼自らの生命や地位などを危険にさらしながら、目の前の人々の命を救ってきた人々をイスラエルはたたえてきた。その数は二万数千人に上るという▼その中の一人、リトアニア駐在の外交官だった杉原千畝も「世界を救う」価値があるとみなされた人物であろう。地位を賭して、ビザの発給により、ニ千数百人を救っている▼研究者の稲葉千晴名城大教授は、近著「ヤド・ヴァシェームの丘に」で、救出者となった各国の人の尽力をまとめている。杉原によるいわゆる「命のビザ」の発給で救われた人数は、十位に入る多さであるという▼今年は杉原の生誕百二十年、命のビザ発給から八十年である。リトアニアは、杉原の年と位置づけているそうだ。ゆかりの岐阜県などでは、関連の行事が行われたり、予定されたりしている▼「人は誰でも、正しいことをしようという意思さえあれば、世界を変えられると杉原千畝は証明した」。命のビザで、命をつないだ人の声を名古屋市にある杉原の顕彰施設の展示で読んだ。次世代へと、語り継ぐ年になればいい。(2020・10・17)

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「戦前回帰の動きがあらわ」『赤旗・潮流』

東の横綱は長野県。西の横綱は広島県。こんな番付表が残されています。先の戦争中につくられた「満蒙開拓青少年義勇軍」の送出番付▼1932年、中国東北部を侵略した日本は「満州」を建国。王道楽土や五族協和のスローガンのもと、27万もの人びとが国策として移民させられました。なかでも長野は3万3千人余を送り出し全国一に。しかし、そのうち帰国できたのは1万7千人余でした▼土地を奪われた現地住民の抵抗のなかで慣れぬ生活を強いられる労苦の日々。あげくに置き去りにされ、襲撃や集団自決、餓死や性暴力と、その末路は悲惨を極めました▼ふるさとの開拓団に焦点をあてながらこの問題をたどったのが、先日亡くなった井出孫六さんの『終わりなき旅』でした。「中国残留孤児」の支援にも積極的にかかわった井出さんは、この国があの戦争とどう折り合い、片づけるかをつねに注視してきました▼そこには戦後の自民党政治によって、ふたたび平和が脅かされていく危機感がありました。いままた菅政権による学術会議への介入や教育現場への中曽根元首相の弔慰強要という戦前回帰の動きがあらわになっています▼日本国憲法は戦後を振り返るときの物差しー。井出さんは本紙にそう語っていました。前文や9条の紙背には多くの死を招いたことの悔悟と、流したおびただしい血への贖罪の意がぬりこまれていると。その憲法を敵視した元首相や前首相を受け継ぐ現政権を、どんなに苦々しくみているだろうか。(2020・10・16)

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山口百恵さんが歌った「秋桜」 『赤旗・潮流』

いまごろ各地で花を咲かせ、季語にもなっているコスモス。その歴史は比較的浅く、メキシコが原産で日本にひろまったのは明治以降といわれます▼♪薄紅(うすべに)の秋桜(こすもす)が秋の日の何気ない陽溜(だ)まりに揺れているー。山口百恵さんが歌った「秋桜」。結婚前の娘が母を思う曲を懐かしく聴きました。40年前の百恵さんのラストコンサートが先日テレビでながされていました▼21歳、人気絶頂での結婚、引退。みずからの幕引きは芸能界をこえて世に衝撃を与えました。アイドルであることと、人として生きてみたいという葛藤と決断を、当時出した自叙伝『蒼い時』につづっています▼ただ走り回り眠ることさえ自由でなかった日々。アイドル全盛期だった時代、たくさんの若者が同じ境遇に置かれていました。そんなことに思いをめぐらせたのは、歌謡史に数々のヒット曲を刻んだ作曲家・筒美京平さんの訃報が伝わったから▼曲名だけでよみがえる青春。その裏で、どれだけの涙が流されたきたのか。最近、アイドルだった1人は当時をふり返り、あまりにも忙しすぎて家に返れば泣いていたと話していました▼改善されてきたとはいえ、芸能界働き方は今も過酷です。昨年も大手事業所3社が労基署から長時間労働の是正勧告をうけました。恋愛禁止といった人権問題もくすぶっています。若さを食いつぶすのではなく、芸能活動と人生を両立できる世界に。「幸せになります』。百恵さんが残したメッセージは、すべての人びとに向けられています。(2020・10・15) 【追記】しんぶん「赤旗」は堅苦しい記事ば…

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日本学術会議への人事介入 『赤旗・潮流』

故・家永三郎さんが国による教科書検定は違憲・違法だとして提訴した「教科書裁判」。東京地裁の杉本良吉裁判長らが、家永さんの日本史教科書を不合格にした検定は違憲だとした「杉本判決」(1970年7月)から今年で50年です▼「杉本判決」は憲法に基づき、教育は「子ども自らの要求する権利」であるとし、国民の教育権を保障する立場から、国家が教育内容に介入することは許されないとのべました。教育の自由や学問の自由を尊重した画期的判決でした▼家永さんには戦争に反対できなかったことへの痛切な自責の念がありました。著書『太平洋戦争』では「戦争はどうして阻止できなかったか」と問い、「国民の意識が国家権力の統制によって画一化され」たことが決定的だと書いています▼二度と戦争を起こさせない。そのために学問の自由、教育の自由を守るという信念が、家永さんをして32年にもわたる裁判をたたかわせました▼その思いは大きく響きました。市民、教職員、出版労働者、学者、学生などに支援の軸が広がり、都道府県・地域、分野別に70以上の支援組織ができました。名だたる学者が次々と証人として法定にたちました▼日本学術会議への人事介入は家永さんが半生をかけて守ろうとした学問の自由を踏みにじるものです。法政大学の田中優子総長は、学術研究は政府から自立してこそ真理を追究でき、社会全体の利益につながるとのべています。教科書裁判のように、国民全体の問題として追及したい。(2020・10・14)

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筒美京平さん死去 『東京新聞・筆洗』

 是枝融和監督の映画「歩いても歩いても」(2008年)。題名はいしだあゆみさんの大ヒット曲「ブルー・ライト・ヨコハマ」(1968年)の歌詞から取っている。<歩いても歩いても小舟のように>▼妻(樹木希林)の思い出の曲である。良い思い出はない。夫が浮気相手といるアパートを妻が訪れる部屋の中から「歩いても」と口ずさむ夫の声が聞こえてくる。妻は部屋の前で引き返す。やがて元のさやに収まるが、妻は何十年が経過しようとその曲を時折、聴いてみる。分かる気がする▼良い思い出、つらい過去だろうと聴けば、当時のことや家族の顔まで思い出せる。そういう歌を誰もが持っているだろう▼この人の曲はとりわけ多いか。「ブルー・ライト・ヨコハマ」「また遇う日まで」「よろしく哀愁」など多くのヒット曲を世に送り出した筒美京平さんが亡くなった。八十歳▼ペンネームは「鼓響平」からきている。残した作品はポップスからアイドル曲や「サザエさん」まで約ニ千六百曲。覚えやすく、あか抜けた曲調は昭和、』平成の耳を楽しませ、つかのま憂いを忘れさせた。大きな「鼓」であった▼ヒット曲の題名をながめるだけで、当時の茶の間の匂いまで思い出せる。巨匠の死に大切な思いでまで遠くなるような気分である。<ねえ 涙ふく 木綿のハンカチーフください ハンカチーフください>(2020・10・13) 【追記】2007年、「消えた年金」で騒然となったとき、空白期間を埋めるのに役立ったのが、当時流行った歌「赤坂の夜は更けて」(西田佐知子)だった。→「消えた年金と赤坂の世は」 

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「入院定期検診」が癒やしの場に 永井至正

 この病気、術後の生存率は五年を超え、この国は世界でも断トツの一位という。その五年が過ぎたので、不安を覚えながら、自ら入院精密検査を受けることにした。指定の日に足立区の柳原病院に行った。ナース・ステーションに立ち寄ると、あのとき(手術時)世話になった看護師が「あっ!」と言って駆け寄ってきた。今はこの病棟の看護師長だという。「元気そう、大丈夫よ、まかして」と笑顔が和ませてくれる。ここまではご満悦の僕だったが、腹部検査のため大量の下剤を飲むことに。それからが大変、徹夜でトイレへの往復十数回。心身しょぼくれ、所在なく天井の模様などに目をこらしていると、真夜中、アラフォーぐらいのナースがタイムリにーベッドの側に。頑固で一家言のある親父をあやす娘のように対応してくれた。こんなことなら、ここにずーっといてもいいな、と思いながら帰り際、挨拶に行くと「またどうぞ!とは言えないけど~」と微笑さえ浮かべて、バイバイと手を小刻みに振ってくれた。ここは文字通り「患者ファースト」、ホスピタリティー細やかな癒やしの場に見えた。   

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今年のノーベル平和賞は 『東京新聞・筆洗』

「楠公飯」(なんこうめし)とは楠木正成が考案したと伝わる節米法で、戦争中、食料不足を補うため奨励されたと聞く▼玄米を炒り、通常より3倍のお水に一晩漬けた上で炊く。炒った玄米は水分を吸収して、一升分が三升釜いっぱいに炊き上がるそうだ▼戦争中の暮らしを描いたアニメ この世界の片隅に」の中ですずさんが作った楠公飯のお弁当はおいしそうだったが、実際はひどい味だったらしい。演出家の鴨下信一さんによると「どうにも苦く、一度でわが家の食卓から消えた覚えがある」(『誰も「戦後」を覚えていない』)▼厳しい食糧事情の中での知恵だが、わずかにでも玄米があるから初めて使える。それさえ、手に入らない場所には誰かが出向いて届けなければならぬ。今年のノーベル平和賞ははその活動を行ってきた人たちに与えられる。国連の世界食料計画(WFP)である▼飢餓、貧困。世界が今なお抱える問題に対し、最前線で立ち向かうWFPの取り組みは平和賞にふさわしい。とりわけ、コロナ禍によって食料輸送が難しく、飢餓人口の増加が著しい今年である▼WFPの青い旗。小麦とトウモロコシを人の手が強く握りしめている。穀物を飢えに苦しむ人に何としても手渡したい。そんな決意がこめられているのだろう。その活動を支え、協力したい。日本人がおなかすかしていたのも、それほど遠い昔の話ではない。(2020・10・11)

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東アジアはなぜ低い死亡率 『東京新聞・筆洗』 

ネアンデルダール人は数万年前、地球上から姿を消した。いや、生きている、現代人のDNAの中で。そんな興味深い科学の成果を語る本が五年ほど前、話題になった。生物学者スパンテ・ペーボ氏の「ネアンデルタール人は私たちと交配した」である▼旧人ネアンデルタール人の骨を調べると、DNAのの一部が現生人類に受け継がれていると分かった。つまり、両者は交配し、子どもが生まれていた。論文が発表された際は、専門家にも衝撃が走ったようだ▼われわれは何者かと想像が広がる話でもある。その旧人の「遺産」がコロナ禍に関係しているかもしれないと先日報じられ、また驚かされた▼ペーポ氏らのチームの研究によると、ネアンデールタール人から新型コロナウイルス感染症の重症化にかかわる要因も受け継いだ可能性があるという▼人工呼吸器が必要となるおそれが、最大三倍にもなるという遺伝子の構造があるそうだ。この遺伝的な遺産を持つ人の割合は地域差があり、南アジアで高く、日本など東アジアやアフリカではほとんどみられないらしい▼東アジアで死亡率がなぜ低いか、コロナ対策のカギも潜んでいそうな問題に、確定的な答えは出ていないようだが、素人目に、関係がありそうにも思える。それにしても、人類の歴史にまで話が及ぶあたりコロナのやっかいさも表れているようではないだろうか。(2020・10・10)

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「大統領の権威」はもうはりぼて 『赤旗・潮流』

昭和を代表する名優、初代中村吉右衛門は、舞台を降りると口が達者な人ではなかったらしい。気のきいた芸談は多くなかったというが、なにげないようで味わい深い言葉も残している。「はりぼての石を重そうにもってみせるのが芝居だ。歌舞伎評論家千谷道雄さんの著書にある▼考えてみれば、舞台ではりぼてなのは石や小道具にかぎらない。親子や男女、主従の情や縁、不思議な因果も、持てば軽い、つくりものである。舞台でいかに重く見せるか。試される役者の力量、極意だろう▼病をいかに軽く見せるか。そこに政治の極意を見ている人もいる。新型コロナウイルスへの感染が明らかになったばかりのトランプ大統領が、もう退院した▼大国のリーダーとして、ウイルス感染に関する危機管理について反省の思いもさぞあろうと思えば、違っていた。ウイルスを「おそれるな」などと述べ。コロナや病状を軽く見せる言動を繰り返している▼回復が順調なら喜ばしい。ただ重症者に使う薬を投与されたそうだ。周囲に感染者が増えていて自分の陰性の診断が出る前にもかかわらず、活動し始めた▼選挙のための動きと見透かされそうなのに、大喜びで喝采する支持者がいる。ウイルスは思うより軽いと信じる米国民が増えないか。大いに気がかりだ。人気回復の極意かもしれないが、大統領の権威が、はりぼてに近づこう。(2020・10・9)

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学術会議の「独立性」否定は認めない 『赤旗・潮流』

「年間10億円の予算が支払われている」「会員は特別公務員」。菅義偉首相が日本学術会議の会員候補の一部を任命拒否した問題で、、加藤勝信官房長官は5日の記者会見でこう説明し、首相の「任命権」を正当化しました▼要するに、「金を出しているのだから政府に従うのは当然だ」というもの。自民党内からも同様の議論が相次いでおり、足並みをそろえて学術会議の「独立性」を奪おうとしています▼しかし、予算を出そうが出すまいが、現行の日本学術会議法の審議の際、首相の「任命権」は「形式的」なものであることは国会で確認されており、一方的な法解釈の変更に基づく任命拒否は違法であることは疑いありません▼さらに言えば、同法で学術会議は「独立して職務を行う」(3条1項)とされています。その背景には、「学問の自由の保証」という憲法上の要請があります。任命拒否は「学問の自由」への介入という違憲行為なのです▼ちなみに、海外の科学アカデミーについて、日本学術会議が2003年に公表した調査報告書によると、ドイツ研究協会の1150億円をはじめ、日本よりはるかに多額の公費が充てられています。それにもかかわらず、「十分な独立性、中立性、公正性を保っている」と報告書は述べています▼菅政権による学術会議の「独立性」否定は、突き詰めれば「言論の自由」「思想・信仰の自由」の侵害であり、つまりは国民全体が享受する「自由」への攻撃です。絶対に認めるわけには行きません。(2020・10・8) 【追記】日本学術会議への人事介入など安倍前政権を上回る強権ぶりを早くもあ…

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キンモクセイの甘い香りの陰に 『東京新聞・筆洗』

10月になってキンモクセイの甘い匂いが濃くなってきた。別名に「九里香」。春先の沈丁花が「七里香」なので、キンモクセイの方が二里分、香りが強く遠くまで届くということか。秋も深まってきた▼その昔ご不浄の近くによく植えられていた記憶がある。強い香りでいやな匂いを少しでもやわらげようとしていたか▼キンモクセイの強い匂いに菅政権を連想すると書けば、無粋者と叱られるかもしれぬ。内閣支持率は七割を超える調査もあり、高いらしい。発足直後の政権に対する世間の期待は大きい▼なるほど、キンモクセイのような甘い匂いがする制作も打ち上げている。コロナで冷え込んだ経済活動を刺激する一連の「Go To」事業はかなりお得で、利用者には好評らしい。携帯電話料金の引き下げに取り組むという、不妊治療支援の拡充もありがたい▼その陰でいやな臭いも漂う。日本学術会議の問題である。政権の気にいらぬ学者をメンバーに加えることを拒否し、その理由さえ説明できない。キンモクセイで世間の鼻をごまかし、学問の自由、言論の自由を脅かしかねない「腐臭」に気付かせぬようにしているとは言い過ぎか▼匂いの実験によるとネズミはどんなに食欲をそそる匂いの中にいても、ひとたびネコの匂いを嗅ぐとその場をはなれるそうだ。ネズミの鼻だけは働かせておいた方がよさそうである。(2020・10・7) 【追記】ポピュリストにはプラグマチズムがジャスト・フィットするのか。

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危機の先にある新しい世界の姿 『赤旗・潮流』

朝露のなか、どこからかキンモクセイの甘い香りが漂ってきました。枯れ葉が道に舞い、淡い月影の夜には虫の音がしっとりと。あの暑さがうそのように深まりゆく秋です▼季節はめぐりますが、私たちは変わらないコロナ禍も生活が続きます。マスクをつけ、3蜜をさけ、人との距離や接触に気をつかう日々。感染は収まらず、世界の死者は100万人をこえ、いまも毎日5000人強のペースで増えています▼人類を襲った大きな災厄。そんな折、人間の生き方や幸福を問い直すドキュメンタリー映画が公開されました。「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本へ」。テレビ番組制作者の田部井一真さんが南米ウルグアイのホせ・ムヒカ元大統領の取材を重ね完成させました▼きっかけは国連会議での名演説。大量消費社会や欲深さを厳しくいさめた訴えに感銘を受けた田部井さんが執着をおってムヒカさんの人間像に迫りました▼「社会の発展が人間に幸せを損なうものであってはならない」。軍事政権下でなんども投獄され、大統領になってからも清貧なくらしを替えず、貧困の解消に務めました。その経験やグローバルな視点から発する言動や提言が心に響きます▼来日したムヒカさんが日本の若者たちにつたえたことがあります。魔法が世界を変えてくれるなんて思わないで、あなた自身が行動し、よりよい社会をめざすことで人生に意義が生まれるー。危機の先にある新しい世界の姿とは。コロナの秋に思いはいっそう募ります。(2020・10・6) 【追記】「清く、正しく、美しく」「赤旗」ならではのコラムです。冒頭の「朝霧…

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コロナ危機 貧しい文教政策あぶり出す 『赤旗・潮流』

コロナ禍でキャンパスが閉鎖され、「#一律学費半額を求める」運動をした大学生らが、新たなネット署名をはじめました▼「#GoToキャンパス事業もお願いします」です。署名開始の会見で広島市立大4年の山下菜さんは「美術を専攻。学生がアトリエに集まれずコミュニケーションが取れない。みんなでおしゃべりをして、新しい価値観や問題意識が得られる。そういう環境が保障されてこそ大学だと思う▼ネット上では早くも「総理大臣 GoToキャンペーにGoToキャンパスも追加してください。学生への支援を」などの応援が拡散しています。対面授業の再開にはキャンパスの感染防止策が不可欠です▼実際、対面授業を再開した大学でも多額の「自己努力」を強いられました。署名は政府に対し、すべての大学を対象にした「フェアで早急で安全な対面授業再開のための予算措置」を求めています。寄付金頼みや大学の「自助」ではなく、キャンバスの機能や学生の学びを回復する政府の全面支援こそ必要です▼民青などが取り組む困難学生を支援する「食材もってけ市」も31都道府県77大学に広がっています。「次は自分もボランティアで参加します▼コロナ危機は、未来を担う若い世代に世界でも異常な高額費と「自助」ばかりを押しつける。貧しい文教政策をあぶり出しました。キャンパスの感染防止と学ぶ権利を保障することこそ「公助」の努めです。責任ある政治への転換を、若い世代と共に。(2020・10・5)

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「女性はいくらでもウソ・・・」 『赤旗・潮流』

ひとりになるのが怖い、眠るのが怖い、外に出るのが怖い、人混みが怖い、男性が近くにいると怖い。いつまでも残る恐怖や不安。仕事や生活も奪われ、夢や希望さえ見失ったー▼望まない性行為をうけた被害者の多くは誰にもいえず、深い苦悩を抱えこみます。打ち明けても周りの反応でさらに傷つくことも。相談された側は、まず被害者の気持ちによりそい、言うことを信じる。それが大事だと(『サバイバーズ・ハンドブック』)▼「女性はいくらでもウソをつけますから」。こう言い放った自民党の杉田水脈(みお)衆院議員への怒りがひろがっています。勇気をもって性暴力を訴えようという被害者の思いをふみにじり、女性全体の尊厳をおとしめるものです▼はじめは発言を否定しながら、一転して日記のようなブログで認める不誠実さ。発言の重大さを省みないどころか、「一部訂正」で済ませようとするこそくさ。ウソをつくのは自分だったと身をもって▼これまでも性差別や人をさげすむ発言をくり返してきました。そんな人物を国会に送り、いつまでもかばい、なれ合ってきた自民党の罪は思い。こうした言動を受け入れる体質が横たわっているからでしょう▼「自民党内の男社会の空気感がわかるというか・・・」。テレビで女性キャスターが言及していました。発言の撤回と謝罪、辞職を求める署名には13万人が賛同し、各地で抗議の声があがっています。それは就任以来、国会から逃げ回っている菅首相の責任にも向けられています。(2020・10・4) 【追記】自民党議員は「いくらでもウソをつきますから」。

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気に召さない人は切り捨てる 『東京新聞・筆洗』

文藝春秋編集長などを努めた池島信平は日米開戦の前、歴史学者、羽仁五郎を訪ねている。破竹の進撃を始めていたドイツについて、<やがて同盟国の反抗に遭って負けますよ。必ずドイツは負けます。こんな国と日本が組んだら大へんだ>と聞く▼あまりの正しい予想に敬服したと池島は、戦後、書いている。(『雑誌記者』)。マルクス主義史観の羽仁らは思想弾圧を受け、言論界に、沈黙も訪れた時代である。「正しい予想」も世の中には大きな影響を与えることはなかった▼戦後、羽仁も加わって発足した日本学術会議は、学問と思想の自由を掲げることになる。政府と軍事をめぐる問題などで関係が緊張したこともある。「正しい予想」が生かされなかった戦前の反省が、どこかにあったのかもしれない。政府が露骨に組織のの人事に踏み込んだことはなかったという▼権力と学問の関係の中で不安がよぎる話である。菅義偉首相が、日本学術会議の新会員候補六人の任命を拒否した。なじみのある名前も並んでいる。特定秘密保護法に反対を示していたことなど、政府の方針に対し、どんな立場だったかが、理由になっている可能性があるという▼法的にも妥当性に疑義が出ている。詳しい説明が必要だろう。お気に召さない人を遠ざけるのが菅さんの手法なら、それも気になる▼学問の世界に沈黙がおとずれないことを願う。(2020・10・3) 【注】本日付「赤旗・潮流」も同テーマで論陣をはっている。その締めくくりを引用しよう。「聞きたい意見しか聞かない、こうなってしまえば、今後の日本にとって大きな禍根を残す」。それ…

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福島 ”人災”であった真実改めて 『赤旗・潮流』

老夫妻と長男家族のくらしは一転しました。ふたりは避難所を7回も転々とした後で仮設住宅に入り、子どもと孫は他市へ。にぎやかさはなくなり、さびしさだけが募る日々・・・▼連綿と歴史を重ねてきたふるさとの地、そこに根づいた生業(なりわい)、そして地域のつながり。そのすべてを、原発事故によって失った人びとの悲しみや悔しさ。南相馬を定点に福島に通いつづけた作家の渡辺一枝さんによる聞き書きからは生の叫び声が聞こえてきます▼あれから10年近いときが過ぎます。しかし、いまも緊急事態宣言は解かれず、自己の収まりはみえません。この痛恨の災害から私たちは何を学び、後世に伝えていくか。それは二度とくり返さないための礎にもなるはずです▼国や東京電力を批判してはならないー。先月20日に開館した「東日本大震災・原子力災害伝承館」(双葉町)が、語り部にそう求めていることが問題になっています。ありのままの事實や思いを話せないのか。被災者からは批判の声があがります▼生業訴訟の初めての高裁判決が国の責任を認めました。「東電の不誠実ともいえる報告を唯々諾々とと受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」。原告団は、事故の再発防止や被害者救済のみならず、被災地の復興にとっても大きな意義があると▼国や東電にたいする明確な断罪。それは原発事故が防ぐことができた”人災”であった真実を改めて突きつけました。奪った時間やものの重さと、消えることのない痛みとともに。(2020・10・2)

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10月になった、さて! 『赤旗・潮流』

英語の月の名が古代ローマの暦に由来することは知られています。たとえば3月の「March」は軍神マルスから。タコ(オクトパス)からもわかるように「October」は8番目の月という具合に▼おかしい、10月ではと思う人も多いでしょう。ローマ暦は今の3月にあたる月から始まり、12月で終わっていました。その後の改暦で1月と2月が加わったために二つずれ、現在の10月になったといわれます▼8から10へー安倍政権下で消費税が引き上げられてからきょうで1年になります。怒りや反対が渦巻くなかで強行された増税は、くらしと経済を直撃。「どれだけ苦しめるのか」「店を畳まざるをえない」。被災地をはじめ、あえぐ姿は列島のすみずみで▼そのうえコロナ禍で経済はいっそう冷え込み、倒産や失業が増大。困窮する学生からは食べることもままならないと切実な声があがっています。今月から安価な第三のビールやワインが値上げされ、庶民とってさらに厳しい秋になりそうです▼一方で米国からの武器爆買いは継承され、他国を攻撃する動きさえも。軍拡に歯止めはかからず、軍事費削ってコロナ対策に回せの叫びに背を向ける菅政権。こんなときに元首相の合同葬に9600万円の税金が使われることにも批判がひろがっています▼いまや、世界の流れは減税です。私たちの命とくらしを守る対策とともに、政治の転換を早く。「タコは身を食う」といいますが、このままでは国も民も食いつぶされてしまいます。(2020・10・1)

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