キンモクセイの甘い香りの陰に 『東京新聞・筆洗』

10月になってキンモクセイの甘い匂いが濃くなってきた。別名に「九里香」。春先の沈丁花が「七里香」なので、キンモクセイの方が二里分、香りが強く遠くまで届くということか。秋も深まってきた▼その昔ご不浄の近くによく植えられていた記憶がある。強い香りでいやな匂いを少しでもやわらげようとしていたか▼キンモクセイの強い匂いに菅政権を連想すると書けば、無粋者と叱られるかもしれぬ。内閣支持率は七割を超える調査もあり、高いらしい。発足直後の政権に対する世間の期待は大きい▼なるほど、キンモクセイのような甘い匂いがする制作も打ち上げている。コロナで冷え込んだ経済活動を刺激する一連の「Go To」事業はかなりお得で、利用者には好評らしい。携帯電話料金の引き下げに取り組むという、不妊治療支援の拡充もありがたい▼その陰でいやな臭いも漂う。日本学術会議の問題である。政権の気にいらぬ学者をメンバーに加えることを拒否し、その理由さえ説明できない。キンモクセイで世間の鼻をごまかし、学問の自由、言論の自由を脅かしかねない「腐臭」に気付かせぬようにしているとは言い過ぎか▼匂いの実験によるとネズミはどんなに食欲をそそる匂いの中にいても、ひとたびネコの匂いを嗅ぐとその場をはなれるそうだ。ネズミの鼻だけは働かせておいた方がよさそうである。(2020・10・7) 【追記】ポピュリストにはプラグマチズムがジャスト・フィットするのか。

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