東アジアはなぜ低い死亡率 『東京新聞・筆洗』 

ネアンデルダール人は数万年前、地球上から姿を消した。いや、生きている、現代人のDNAの中で。そんな興味深い科学の成果を語る本が五年ほど前、話題になった。生物学者スパンテ・ペーボ氏の「ネアンデルタール人は私たちと交配した」である▼旧人ネアンデルタール人の骨を調べると、DNAのの一部が現生人類に受け継がれていると分かった。つまり、両者は交配し、子どもが生まれていた。論文が発表された際は、専門家にも衝撃が走ったようだ▼われわれは何者かと想像が広がる話でもある。その旧人の「遺産」がコロナ禍に関係しているかもしれないと先日報じられ、また驚かされた▼ペーポ氏らのチームの研究によると、ネアンデールタール人から新型コロナウイルス感染症の重症化にかかわる要因も受け継いだ可能性があるという▼人工呼吸器が必要となるおそれが、最大三倍にもなるという遺伝子の構造があるそうだ。この遺伝的な遺産を持つ人の割合は地域差があり、南アジアで高く、日本など東アジアやアフリカではほとんどみられないらしい▼東アジアで死亡率がなぜ低いか、コロナ対策のカギも潜んでいそうな問題に、確定的な答えは出ていないようだが、素人目に、関係がありそうにも思える。それにしても、人類の歴史にまで話が及ぶあたりコロナのやっかいさも表れているようではないだろうか。(2020・10・10)

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