今年は杉原千畝の生誕120年 『東京新聞・筆洗』

多くのユダヤ人を収容所行きから救ってきたドイツ人実業家のシンドラーに、助けられたユダヤ人から、指輪が贈られる。文字が刻まれていた。(一つの生命を救う者が世界を救える)。第二次世界大戦期の実在の人物を題材にしている映画『シンドラーのリスト』の一場面である▼自らの生命や地位などを危険にさらしながら、目の前の人々の命を救ってきた人々をイスラエルはたたえてきた。その数は二万数千人に上るという▼その中の一人、リトアニア駐在の外交官だった杉原千畝も「世界を救う」価値があるとみなされた人物であろう。地位を賭して、ビザの発給により、ニ千数百人を救っている▼研究者の稲葉千晴名城大教授は、近著「ヤド・ヴァシェームの丘に」で、救出者となった各国の人の尽力をまとめている。杉原によるいわゆる「命のビザ」の発給で救われた人数は、十位に入る多さであるという▼今年は杉原の生誕百二十年、命のビザ発給から八十年である。リトアニアは、杉原の年と位置づけているそうだ。ゆかりの岐阜県などでは、関連の行事が行われたり、予定されたりしている▼「人は誰でも、正しいことをしようという意思さえあれば、世界を変えられると杉原千畝は証明した」。命のビザで、命をつないだ人の声を名古屋市にある杉原の顕彰施設の展示で読んだ。次世代へと、語り継ぐ年になればいい。(2020・10・17)

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