コロナは人の生を奪うだけでない 『東京新聞・筆洗』

仲間に入れていただいている句会の今月の兼題に「うそ寒」があった。秋半ばから晩秋ににかけてなんとなく感じる寒さのこと。なるほど、朝晩はひんやりする▼わが身の無教養を嘆くばかりだが、「うそ寒」の語源を長い間、誤解していた。冬の寒さが本物だとすれば秋の寒さはまだそれほどでもなく、いわば「嘘」の寒さだから「うそ寒」。そう思い込んでいたが、これこそ真っ赤な嘘で「うそ寒」のうそは「薄」からきている▼<うそ寒や親といふ字を知てから>。遺産をめぐって義母と折り合いの悪かった一茶のやるせない句だが、その「うそ寒」の集計結果を見れば、「子という字」がますます小さくなっている。厚労省によると今年5月から7月にかけて受理した妊娠届けが前年同期に比べて11・4%のマイナスとなったそうだ▼新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。コロナによる経済情勢の悪化などで、出産をためらう空気が広がぅているのだろう▼コロナは生きている人の生命を奪うだけでは飽き足らず、新たな生命をこの世に送り出すことにさえ人を臆病にしてしまうのか。この結果、来年の出生数は大幅な減少が予想される▼歯止めのかからぬ少子化にコロナが拍車をかける。手はないのか。少子化の寒さはもはや「うそ寒」を過ぎ、思い出すのは同じ一茶でも<うしろから大寒小寒夜寒哉>の方である。(2020・10・22) 【追記】東京新聞10月21日付最終面の特集記事・「筆洗・解体新書」を興味深く読ませていただいた。コラム「筆洗」の書き手が明かす裏話である。筆者は1963(昭和38)年の生まれ…

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