コロナの新規感染者再び増加 『東京新聞・筆洗』

島崎藤村に『三人の訪問者』という不思議な作品がある。最初の訪問者は「冬」である。醜い老婆の顔を藤村は想像していたが、まったく異なる顔をしていた。思わず「お前が『冬』か」と尋ねると「冬」が答える。「一体私を誰だと思うのだ。そんなにお前は私を見損なって居たのか」▼「冬」は庭の樹木を指さす‥満天星(どうだん)の芽、椿の葉の輝き。赤い万両の実。冬が運んでくる自然の美しさを示す。「あの児の紅い頰辺もこの私のこころざしだ」。「冬」に続き「貧」と「老」が訪ねてくる。いずれも嫌われる訪問者たちかもしれないが、それぞれに美やありがたみがある、作品はそう教えている▼立冬も過ぎ、寒くなってきた。藤村に逆らう気はないが、今年の「冬」の顔を想像すれば、その不気味さに身構える。低音や乾燥が好物なのか、このところ新型コロナウイルスの新規感染者が再び増加している▼感染しやすい気候に加え、寒さに窓を開けての換気もおろそかになりやすいか。手洗いも冷たい水ではためらいたくもなるが、それではコロナを喜ばせるだけで、感染対策を意識した心の冬支度を急ぎたい▼米製薬会社が、開発中のワクチンに高い予防効果があったと発表した。うまくいけば、来年上半期にも日本に供給されると聞く▼<先(まず)祝え梅を心の冬籠(ふゆごも)り>芭蕉。ワクチンという梅を心に、この冬を無事に越したい。(2020・11・11)

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