平和とはそうやってつくられる 『東京新聞・筆洗』

 脚本家の向田邦子さんが「父の詫び状」の中で子どものころに食べた「おハつ」を書き出している。ビスケット、動物ビスケット。鈴カステラ。ミルク・キャラメル。グリコ、かつぶし飴、芋せんべい、棒チョコ、板チョコ・・・。計三十四品。そんなに書き連ねることもなかろうにお菓子の思い出が止まらなくなったのだろう▼キャラメルは、「グリコ」派で「おまけ」に心をひかれたそうだが、森永びいきの父親にはしかられた。「飴なら飴、玩具なら玩具を買え。飴も食べたい、玩具もほしいというのはさもし了見だ」▼向田さんでなくとも幼きころに味わったお菓子にまつわる記憶というのはいつまでも消えぬものだろう、味やかおりが思い出を深くさせるのか▼お菓子をめぐる思い出話をアジアの人とも共有できる日が来るのかもしれぬと想像する。日本や中国、韓国、インドネシアなどの十五カ国が協定を結んだRCEP(地域的な包括的経済連携)である。東アジアでの貿易自由化が進む▼日本のチョコレートやお菓子の関税を引き下げられそうだ。アジアでの日本のお菓子の人気は高く、RCEPでますます広まっていくだろう▼言葉や育った環境は違っても、同じお菓子を食べ、笑顔になった思い出を持つ人がいる、そう思えば、お互いの心の距離もぐっと縮まっていくようである。平和とはそうやってつくられる。(2020・11・18)

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