「ワクチンナショナリズム」に批判 『赤旗・潮流』

ワクチンとはラテン語の「雌牛」を意味します。18世紀末にイギリス医師のジェンナーが牛痘を人に接種することで天然痘が予防できると発見。それが由来と言われています▼その後、近代細菌学の祖とされるフランスのパスツールが体に免疫をつくらせる物質をワクチンと呼ぶようになりました。感染症の歴史は、人類がその拡大を科学の力によって防ごうとしたワクチン開発の歩みにも重なります▼新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。世界の感染者が1億人をこえたいま、収束の切り札と期待されています。しかし供給をめぐり、早くも各国の争奪戦や格差がうきぼりに。途上国は置き去りにされ、有効率の高いワクチンを先進国が独占する流れになっています▼欧州連合(EU)は域内で製造されたワクチンの輸出について規制措置を講じると発表。自国優先の「ワクチンナショナリズム」と批判のの声が上がり、世界保健機関(WHO)も公平な配分を阻むことになると懸念を示しています▼日本は2月下旬から医療従事者に、つづいて65歳以上の高齢者に接種を開始する計画だと政府はいいます。ただし世論調査では、すぐに受けたい人は2割ほどにとどまり、様子見が7割にものぼっています▼通常5年から10年かかるといわれるワクチン開発。急ごしらえに不安を覚える人は多い。正確な情報の伝達とともに安全性の確保、公平さが求められます。「科学に国境はない」。先駆者パスツールの言葉を肝に銘じるときです。(2021・1・31)

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詩が生まれるとき ふくしまの10年-5-

「あなたはどこに居ますか。私は暗い部屋に一人で言葉の前に座っています』2011年三月十八日のツイッターはこう始まる。相次ぐ余震に揺られ続け、和合亮一さん(52)は酔ったようになっていた。夜は眠りが浅く、揺れて何度もたたき起こされた。外の放射線量は高く、窓が開けられないまま、教職員住宅二階の部屋に閉じ込められていた。【以下画面へ】(片山夏子)

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きょうは河上肇の没後75年 『赤旗・潮流』

日本学術会議への政府の人事介入で「学問の自由」が焦点になる中、戦前に弾圧を受けた一人、河上肇の名がたびたび挙がりました。マルクス主義経済学者だった河上は、言動が不穏当だとして、京都大学を追われました▼河上はまっすぐな性格でした。学生時代、足尾鉱毒被害の応援演説会で感動し、着ていた外套や羽織、襟巻きをその場で寄付。下宿に帰り、身に着ける以外の衣類もすべて行李(こうり)に入れて送り、関係者を驚かせたという逸話も▼経済学者として貧困の遠因と解決を追及。京大教授時代、学生だった岩田義道(後の日本共産党幹部)から唯物弁証法の研究の必要を説かれ、学生と一緒に弁証法の講義を受けたこともあります。そうしてマルクス主義の正しさを確信し、1932年53歳で日本共産党に入りました▼治安維持法違反で検挙され5年間入獄、出獄後は体調を崩しながら著述に励みます。戦争末期の45年新春には「なべて物みな終あり戦ひもいつしかやまむ耐へつつ待たな」と詠みます▼迎えた8月15日終戦。河上は「あなうれしとにもかくにも生きのびて戦やめるけふの日にあふ」と喜びにあふれた歌をいくつも詠みましたが、翌年に死去▼きょうは河上肇の没後75年にあたります。墓のある京の法然院には入党の感慨を詠んだ歌が彫られてています。「たどりつきふりかへりみればやまかわをこえてはこえてきつるものかな」。いまも、社会変革の志を持って入党する人たち。老若を問わず胸に秘めた思いはいかばかりか。(2021・1・30)

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詩が生まれるとき ふくしまの10年 ー4-

ツイッターは一日でやめるつもりだった。だが、福島県内の避難所や全国各地からたくさんのメッセージが届き、和合亮一さん(52)は驚いた。「詠んでいて不思議と静かな気持ちになりました」「福島に残した父を思って泣きました」「心が折れそうにになっていましたが、進むべき道が見えてきました」「あしたも読ませてください」【以下画面へ】(片山夏子)

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詩が生まれるとき ふくしまの10年-3-

2011年3月16日の午後九時すぎから始まった和合亮一さん(53)のツイッターは、最初は自身の無事を伝えるものだったが、次第に東日本震災や原発事故への怒りに変わり、連打となっていく。それは深夜まで続いた。【以下画面へ】(片山夏子)

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詩が生まれるとき ふくしまの10年-2-

妻子が山形に避難した後、ひと気のない教職員住宅に河合亮一さん(52)は残った。福島第一の3号機が爆発後、周辺の人たちも避難していた。2011年3月16日朝、福島市の空間放射線量は毎時20マイシークロベルト。通常レベルの五百倍と報道されていた。ラジオではアナウンサーが「非難するみなさん、どうぞ落ち着いてください」と時折、涙ぐみながら呼びかけていた。「福島も日本も終わりなんだ」。無人島に一人でいるような孤独感と絶望感が襲ってきた。【以下画面に】(片山夏子)

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「原発を動かす理由どこにある」 『赤旗・潮流』

東京電力福島第1原発事故から10年になろうとしていますが、事故の原因究明は終わっていません。原子力規制委員会がまとめた調査や分析結果の中間報告書でも明らかです▼事故の経過でこれまで不明だったことがわかったといいます。たとえば原子炉建屋の水素爆発。テレビの映像を見た時は衝撃でした。今回の調査で、3号機の爆発は多段階の現象だったと分析しました▼メルトダウン(炉心溶融)した2,3号機の原子炉建屋5階付近で極めて放射線量が高い場所があることも。それが旧ソ連のチェルノブイリ原発事故より環境中に放出された放射性物質が少なかった理由の一つだとしています▼あくまで人が接近できる範囲の調査です。それでやっとわかってきたのです。報告書は「まだまだ取り組むべきことが山積している」とあります。そんな現状にありながら、菅政権は「安全最優先で」と枕ことばを並べて原子力政策を進めています▼「安全」の担保に政府は「原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準」と宣伝します。しかし、そのほころびは、大阪地裁が昨年、審査がきちんとされていないからと設置許可を取り消したことにも現れました。原発を動かす理由はますますなくなっています▼二酸化炭素を大幅削減するため自然エネルギーを推進する努力が世界の流れ。原発断絶に関わる弁護士は集会で「日本もそうなる」といい、もし原発事故が起きればすべてが台無しになる、それを避けるため原発をなくそうと。(2021・1・29)

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沖縄戦体験 DVDに

沖縄戦で鉄血勤皇隊の隊員として従軍していた日本共産党元衆院議員の古堅実実吉さん(91)の戦場体験の証言がDVDになりました。(しんぶん「赤旗」1月28日付)

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詩が生まれるとき ふくしまの10年 -1-

 2011年3月十一日、福島県伊達市の保原高校で入試の判定会の会議中、教員の携帯電話が一斉に鳴り始めた。国語教諭で詩人の和合亮一さん=当時(42)=は「音を消したはずなのに」と不思議に思った。携帯に触った途端、最初の衝撃が襲ってきて、ぐわんと地面が波打つ。続いて経験のない横殴りの衝撃。必死に机の下に潜るが、揺れは止まらない。「外に出ましょう」という野球部顧問の声を合図に一階窓から中庭に出た。ガラスが割れ、校舎が壊れる音、地鳴り・・・。みぞれが降ってきてあぜんとする。「次は収まってくれ」と祈るが、これでもかこれでもかと揺れは続く。授業で生徒のいる日だったらと思いぞっとした。妻の携帯に奇跡的につながり、小学校六年の息子を学校に迎えに行ってもらう。和合さんは連絡のつかない福島市の実家に向かった。道路崩壊や通行止めで大きく回り道をし、ようやく実家に着いて両親らの無事な姿を見たとき、安堵で思わず涙があふれた。震災直後から原発が危ないという話は出ていた。和合さんは手帳に、出来事や津波の死者数などをひたすら書き留めた。書くとなぜか安心した。翌日、福島第一原発1号機が水素爆発。夜、東電社員の教え子が「できるだけ遠くに逃げてください」と電話をくれた。父親は足が悪く、両親は避難しないことを選択。和合さんも福島に残ることを決意した。山形の妻の実家に、妻と息子が避難したのは十六日朝。「二度と会えないかもしれない」脳裏に不安がよぎった。  東京新聞の「東北大震災10年」(担当は片山夏子記者)特集記事 -1-

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「夜な夜な会食やクラブに通う面々」 『赤旗・潮流』

巣ごもり需要の影響で白物家電が売れています。国内の出荷額は24年ぶりの高い水準。なかでも、空調機器とともに販売を押し上げているのが調理家電です▼とくに家で外食気分が味わえるホットプレートがよく売れるそうで生活の変化がうかがえます。一方で外食産業は深刻です。昨年の売上は前年比で5%の減少。これはリーマン・ショック時の1.5%を上回る過去最大の落ち込み幅です▼漫画やドラマでおなじみの「孤独のグルメ」。仕事の合間にふらりと飲食店に立ち寄る井乃頭五郎が主人公で、地域に根づき、人びとから愛される店が毎回紹介されます。安くておいしい料理を心ゆくまで一人で楽しむ。そんな姿が人気を博しています▼「俺の食に蜜は無い。がんばれ、飲食業界。井乃頭五郎」。原作者の久住昌之さんが主人公のイラストを付けてツイートしたところ、20万をこえる「いいね」の数がつきました。店や応援する人たちからは勇気をもらったと感謝の返信が続々と▼この苦境で久住さんの周りでも好んでいた店が何軒かつぶれたといいます。”Go To”とすすめながら一転して悪者扱い。時短や休業要請で心が折れ、補償も行き届かない。泣く泣く閉じる痛ましい事態がつづいています▼そのうえ、罰則まで設けようと・・・。現場の叫びに耳を傾けようともしない政権与党の面々は夜な夜な愛食やクラブ通い。国民の苦難がみえない人たちが政治に携わっていては、大切なものが社会から失われていくだけです。(2021・1・28)  

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感染者の療養 選手村活用を 『東京新聞・発言』

最近、新型コロナの感染者が増加し、病院にも宿泊療養施設にも入れずに自宅療養する人が増えており、家庭内での感染リスクが高まっているように思います。自宅療養は、家族と部屋を別々にするなどし、生活空間を分けるように注意しています。また、トイレや風呂などの共用部分では衛生面に配慮するように求めています。だが、現実的にそんな家は多くないはず。家庭内での感染が広がる危険があります。  そこで提案です。東京都の場合、中央区晴海に整備した東京オリンピック選手村を宿泊療養施設に活用してはどうでしょうか。住宅棟が21、ベッド数は1万8千あります。緊急事態宣言が再発令され、「医療危機」「医療崩壊」などと叫ばれています。無症状者や軽症者は、自宅療養をやめるべきです。今後の感染拡大を防ぐためにも、オリンピック選手村の早急な活用ができないものかと考えています。(無職 石崎吉彦)水戸市 81歳)【追記】まったく同感です。昨今の感染拡大状況では、もうオリンピック開催は無理でしょう。

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故なかにしさん 平和歌い継ぐ 『赤旗・読者の広場』

「リメンバー」という曲、聞いたことありますか。私は去年、属している合唱団の練習で初めて知りました。歌っているうちに、歌詞の素晴らしさに気付きました。この曲は先日亡くなった、なかにし礼さんが声楽家の佐藤しのぶさんのために作詞されたもの。平和に対するお二人の思いが聞こえて来る歌です。  1月22日、核兵器禁止条約が発効しました。被爆国で、多くの人々が苦しんできている日本がこの条約を批准しないのは許されないことです。世論を高め、批准する政府をつくらなければいかないと思います。「戦争と核兵器のないへいわの実現を願う人は集まれ! リメンバーヒロシマ・ナガサキ」「沈黙にさよならしよう リメンバー 行動と勇気で生まれ変わろう」なかにしさん、すてきな詩をありがとうございました。私はこの曲を歌い広めていきたい。そして多くの人に平和について考えてもらいたい。(京都・宇治市 藤原節子=68歳) 【追記】本日は「コラム」に変えて「読者の広場」からの転載です 。

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詩集 「ロ号33番」永井和子 ー37ー

【毛糸あむ夜】 あみかえす古毛糸の目に 更けた夜がしのびこむと あみ針の先に星が光る チカチカと走る針の先が  いやに静かな隣の部屋を気にしている 「また毛布を脱いでいないかしら?」 小さな寝息が二つ 安心が一つ そっとあみこまれて 古びた毛糸がふくらんでいく    (640919)    

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「待たせる身が辛いかね」『東京新聞・筆洗』

作家の太宰治と壇一雄が熱海で飲み明かしたが、その代金が払えない。太宰が東京に引き返してカネを借りてくるという。壇は熱海に残ることになる。事実上の人質である▼その太宰が戻ってこない。数日後、東京に帰った壇は井伏鱒二の家で将棋を指していた太宰を見つける。「あんまりじゃないか」。太宰は「待つ身が辛いかね、待たせる身が辛いかね」と言ったそうだ。壇の『小説太宰治』にある。太宰の「走れメロス」につながる逸話という▼待たせる身の「申し訳ない」という辛さも分かるが、辛さでいえば、やはり待つ身の方が大きかろう。たいへんな辛さを抱えて、少なくとも約一万五千人が待っている。新型コロナウイルスへの感染判明後、入院先や宿泊療養先が決まらず、「調整中」となっている人が緊急事態宣言下の十一都府県で増えているという▼病床不足に加えて、懸命に調整に当たる保健所の能力も限界に近いのだろう。円滑な振り分けができなくなってきた▼自宅で調整を待つ方の不安は大きい。家族に感染させないか。万が一、急変したら・・・。コロナの症状に加え、心の負担も重くなる▼自宅で亡くなる人も増えていると聞く。「調整中」を「調整済み」に変える態勢を国のリーダーシップで一刻も早く整えたい。待たせているのは行政である。「待たせる身が辛いかね」。そんな反論は一切通らぬ。(2021・1・26)

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「この新聞がなかったなら・・・」 『赤旗・潮流』

「元気で生還しますから」。最後の会話でした。ちょうど1年前。大きな手術を控えていました。訃報に驚き悔しい思い出いっぱいです。元朝日新聞大阪本社編集局長の新妻義輔さんが78歳の生涯を閉じました▼2月1日の「赤旗」創刊記念日が近づくたびに「赤旗」への期待・注文を寄稿していただきました。はじめてお会いした時、大阪の黒田民主府政時代に今は亡き先輩赤旗記者に「選挙取材の仕方を教えてもらった」と聞き「そんな出会いもあったのか」と驚きました▼変な話ですが、最初のころ何で新妻さんはこんなに「赤旗」に期待を寄せてくれるのかが不思議でした。「『赤旗』は庶民の目線で権力に向き合い、強い正義感と国民にやさしい視線があり、紙面から『人間の声』が聞こえます」▼背景に政権の応援団に舵を切った新聞・雑誌への憂慮がありました。「権力を監視し、言わなければならないことを言うのがジャーナリズム」。それが新妻さんの信念でした▼海外特派員の経験もあり国際問題に詳しかった新妻さんは勧告・徴用工問題をめぐる一連の本紙報道に「『この新聞がなかったなら・・・』との感を強くした」とも▼珍しく新妻さんから「こんなものを書いたんだけど、もし良かったら」と売り込みがありました。手術の直前でした。現実政治を動かし始めた若者たちの報道に「『政治はあなたのためにある』ー『赤旗』が若い人たちに『希望』を本気で届けようとしている」。期待を背に間もなく『赤旗』創刊93年です。(2021・1・25)

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -36-

【お母さんの胸】 叱られたあの子が 泣きながら戸を叩いています 叱ったお母さんは 戸の向こう側で迷っています あけようか どうしようか そしていつでも戸は開かれます なん十回 何百回でも 涙と後悔で汚れた顔が とびこんでいく所は お母さん あなたの胸だけです  (640919)

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「五輪を嫌われ者にしないで」『赤旗・潮流』

東京五輪が延期された昨年、マラソンメダリストの有森裕子さんがこんなことを語っていました。「私たちのスポーツというのは、ちゃんとした社会のもとで成り立っている」▼社会が落ち着かないのに、スポーツのことだけを考えて五輪開催には価値があると言い続けるのは、ちょっと違う主張ではないか。開くからには何か明るく栄え、育まれるものが生まれなければ、やる意味はないと思うと▼東京五輪の開幕が半年後に迫りました。ウイルスの感染拡大で緊張事態のさなかにある日本社会。医療や仕事をはじめ、命とくらしを守る懸命な日々がつ続きます。国民の多くが今夏の開催に反対するなか、選手たちは戸惑いや不安を抱えています▼「五輪を嫌われ者にしないでほしい」。日本オリンピック委員会の山口香理事は、開催の判断が長引くほど国民の気持ちが五輪から離れていくと新聞に語っています。中ぶらりんの状態や選手の準備不足を心配し、「国の説明が足りない」とも訴えています▼複雑な思いは現役からも。カヌー五輪代表の羽根田卓也選手は、まずは自分自身がコロナの収束に最大限尽くすことだと。パラリンピックの土田和歌子選手は「いまは命を優先するべき。命が約束された世の中であってこそスポーツが成り立つ」▼望まれない五輪ならば開く意味がないと、はっきり口にする選手も。みずからの失政で感染を広げた菅首相は根拠も示さず。開催にしがみつくばかりです。このままでは選手や五輪も浮かばれません。(2021・1・24)

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平和の波につなげた少女の視線 『赤旗・潮流』

いまも忘れられないそのまなざし。顔が焼けただれ、もうろうとさまよう同じ年頃の少女。その目が訴えてきました。「助けて、水をくださいー」▼日本被団協の児玉三智子さんは、7歳のときに広島で被爆しました。学校まで駆けつけた父の背から見た光景。それはまさにこの世の地獄でした。その後も被爆者であるがゆえの偏見や差別にあいます。就職や結婚、子どもの死。「私たちを苦しめ続けている核兵器はまだなくなっていません。だから私の中では戦争が終わっていない」と▼その児玉さんが「こんなにうれしいことはない」と喜びの声を上げました。人類が初めて核兵器を全面的に違法とした条約の発効に「亡くなった多くの被爆者に、あなたの命を奪った原爆は国際法で禁止になったと報告したい▼76年前、膨大な命とともに日常を根こそぎ奪い、のちの人生をも狂わせたが原爆。身を持って体験した被爆者や平和を願う人びとは、その存在を断じて認めず、地球上から悪魔の兵器をなくせと訴えてきました▼歴史的な一歩は世界にひろげた核廃絶運動の到達点でもあり、人類の新たな出発点にも。ところが、その歩みの妨げになっているのが、こともあろうに被爆国日本の政府です。条約に背をむけ。核保有国にすり寄る情けない態度。いま、そんな政治を変えようと立ち上がる若者たちの姿もあります▼決して忘れてはならない、あの日のまなざし。平和の波につなげた少女の視線の先にあるものは、核なき世界の未来でしょう。(2021・1・23)

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『核兵器禁止条約』の発効』 『東京新聞・筆洗』

〈目が覚めたとき、君は新しい世界の一部になっている>村上春樹さん「海辺のカフカ」の印象的な言葉だ。一晩で世界が一新されることなどめったにないのだろうが、近ごろ、この言葉を何度か思い浮かべている▼核兵器大国の米国で、いわゆる「核のボタン」も前大統領のもとを離れたようだ。トランプさんは軍事に関し、好戦的には見えなかったが、行動に常識で予測できないところがあった。核に関する「継承」の知らせは、世界にいい朝をもたらす、ちょっとした材料ではなかったか▼もう一つ。きょう目覚めたころには、日付が変わったいくつかの国で核兵器禁止条約が発効している。核兵器を違法とする新しい世界の始まりだろう。多くの日本人が願った発効だ。ようやくここまできましたと亡くなった被爆者の霊前に報告もできよう▼この条約発効によって核兵器をめぐる現状が激変するわけではない。保有国の米英仏中ロは条約に反対である。各戦力の均衡、抑止力による安全保障の理屈は揺るがないようだ。米国の同盟国のわが国も条約に加わらない▼保有国には、むなしい理想に見えるのかもしれないが、力をたのみにする指導者が保有国に現れている時である。非保有国が突きつける声として、重みを持つこともあろう。日本も問われないものか▼発効が次のいい目覚めを抑えるための一歩になればいい。(2021・1・22)

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きょう宮本百合子没後70年 『赤旗・潮流』

中国で細菌戦や人体実験を行った日本陸軍731部隊を率いた軍医の石井四郎。近年、作家の宮本百合子の自伝的長編「道標」に、ドイツ留学中の石井をモデルとした人物が描かれていることがわかりました。作家の岩崎明日香さんの発見です▼その登場人物は毒ガスを研究している軍医の津山。津山は主人公の伸子は右翼テロリストと通じるものを感じ、「医学博士という彼の科学の力」で何をするだろうと「気分をわるく」します▼1929年のベルリンで百合子は石井に実際に会って、危惧を持ったのでしょう。その後の石井の戦争犯罪は、彼女の心配をはるかに超えました。日本の科学者がこのような過ちを二度と繰り返さないと誓って出発したのが日本学術会議です▼安倍政権の軍事研究推進に対しても、学術会議は反対の声明を出しました。菅首相の会員の任命拒否は、科学者を再び政府の意のままにしようというものです▼実は38年に百合子も数人の作家・評論家と一緒に、理由も示されずに執筆禁止にあいました。ほかの作家からまともな抗議はなく、萎縮だけが広がりました。「剛毅な文学の精神は、日本の当時に存在しなかった」(百合子)▼幸い今は違います。菅首相の任命拒否には1349の学会・団体から抗議が上がりました。あす21日は宮本百合子の没後70年。「あってはならないことは、絶対にありえない条件を確保しよう」。現代に通じる彼女のよびかけです。(2021・1・20) 【追記】今日(21日)は宮本百合子没後70年にもかかわらず、しんぶん「赤旗」には彼女関連の記事は一行も見当たらないので、…

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安野光雄さんが亡くなった 『東京新聞・筆洗』

笑顔のすてきな先生だったそうだ。給食の時間。先生はみんなに歌ってという。唱歌「汽車」。先生は歌声に合わせて、山や浜や鉄橋、汽車を黒板にどんどん描いていく、子どもたちは喜んだそうだ。先生はどんな歌も描けた▼戦後間もない時代。その人が教員だった当時の思い出をかっての教え子が書いていらっしゃった。画家で絵本作家の安野光雄さんがなくなった。九十四歳。淡い色づかいにやさしいタッチ。見ていると引き込まれ、穏やかで懐かしい気持ちにさせられる。そういう魔法の筆に恵まれた型だった▼子どものころから絵描きになりたいと思い続け、毎日、絵を描いた。戦争で絵の具が手に入らない時代には看板屋さんからペンキをもらった。食紅も試した。とにかく毎日、絵きたかった▼勉強のできない子や、徒競走でビリだった子。そういう弱い子をいたわり、声をかけてくれる先生だったそうだ。やさしい魔法の筆の秘密を少しのぞいた気になる▼木組みの家々を描いた安野さんの作品が目にとまった。ヨーロッパの光景だろう。家がまっすぐ立っていない。それぞれの家がお互い支え合い、少し傾いているからこそ、中の人間や暮らしを想像したくなる。絵の中に「物語」があった▼黒板の汽車が遠ざかっていく。車内でやさしい絵を描いていらっしゃる。(2021・1・20)

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すでに命の選別が始まっている 『赤旗・潮流』

新型コロナウイルス患者の自宅療養者数が3万人を超えました。必要な治療が受けられないまま重症化し、自宅で死亡する人が相次いでいます▼「これ以上、事態が悪化すると、トリアージ(治療の優先順位を決める)をしなければならない」と日本医師会の中川敏男会長。テレビ画面には「若い人に人工呼吸器を」と延命を断る高齢の患者の姿が映し出されます。すでに命の選別が始まっているとしたら、悪夢です▼そんな中、政府が通常国会で成立を狙っているのが特別措置法や感染症法の「厳罰」新設です。中でも入院を拒んだ感染者に刑事罰を科すとは上記を逸しています。問題は入院したくてもできないことなのに、手当が必要な患者を鞭打つような仕打ちです▼この方針に呼応するかのように、一指のメディアは感染が増えているのは自宅待機の患者が出歩いているからだと報じます。自宅療養者への生活支援はどうなっているのか、想像力は働かないようです、感染拡大を国民の責任にしたい菅政権には好都合でしょう。一方自宅療養者には何の治療も施されないことを指摘する報道も。つまりほったらかしです▼日本医学界連合は感染症法の「罰則」新設に反対する緊急声明を発表。理由として、過去にハンセン病で患者・感染者の強制収容が法的になされ、著しい人権侵害が行われたこと、罰則を科すと検査を受けない人が増える可能性を指摘しました▼密告、相互監視、強制隔離・・。脅しで国民を支配する恐怖政治の到来ゆるすまじ。(2021・1.19)

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横井久美子さんが歌いつづけた 『赤旗・潮流』

私は歌う。日々に暮らしから愛とロマンをみつめて、私は歌う。大地をゆるがし歴史をぬりかえた世界の叫びを。私は歌う。時代の風を起こした人たちの歌をー▼歌うことへの執念を命の根っことしてきた横井久美子さんが亡くなりました。どんな国の出来事でも、どんな人の人生でも、心に響いたものは何でも歌う、自身の歩みに時代や社会を重ねた曲目の多彩さは冒頭のうたい文句に集約されています▼「自転車に乗って」「戦車は動けない」「私の愛した街」「飯場女の歌」「辺野古の海」。数々の歌が、どれだけの人たちを励まし、包み込んできたか。いつもそこには、たたかいの人権が広がりました▼平和や人権を尊び、穏やかな日常をいとおしみ、まじめに働く者や女性には温かいエールを。不正義や不公正には悲しみと怒りの声を。人びとや社会と深くかかわって心をつむいできた歌には、人間への信頼と希望が込められています▼40代の後半に入ったころ、燃え尽き状態に陥った横井さんは自分探しの旅に出ます。苦悩の末につかんだ再生へのきっかけ。それは、あるがままの自分を取り戻すため、たくさんの人と出会い、社会とつながることでした(『ゆるゆるふっくり』)▼コロナ禍のいまこそ、勇気がわく彼女の歌が求められていたのに・・・。闘病生活のなかでつづったブログには、最後まで歌を通して人びとや社会とともにあろうとする姿が配されています。人は人によって生かされている。人間こそが歌なんだと。(2021・1・18)

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大学入学共通テストの問題点 『赤旗・潮流』

コロナ禍のもと、16日から大学入学共通テストが始まりました。受験生の側も試験を実施する側も、感染対策に大きな努力を割き、不安を抱えながらの試験となっています▼思えば、今年の受験生は「入試改革」に翻弄されてきました。英語の試験に英検やTOEFL(トーフル)など民間事業者の試験を活用する。国語と数学の試験には記述式を導入し、採点を民間にゆだねる。その採点者の多くはアルバイトの学生▼そんな「改革」に大学や高校、さらには予備校などの関係者から厳しい批判が、なにより受援の当事者である高校生が怒りの声を上げ、中止を求める行動に立ち上がりました。彼らは文部科学省でも「きちんとした入試制度をつくってほしい」と訴えました▼それでも強行しようとした政府。民間試験を活用すれば経済的な状況によって有利不利が生まれるという批判に対して、萩生田光一文科相は「身の丈に合わせて勝負してほしい」と言い放ちました▼しかし、この発言が怒りに火をつけ、中止を求める世論がいっそう広がりました。英語民間試験も記述式も「延期」「見送り」に。高校生たちは行動すれば変えられるという確信を持ったのでした▼「改革」に振り回された今年の受験生をさらにコロナ禍が襲いました。長期の休校時には不安もあったことでしょう。紆余曲折を経て迎えた異例ずくめの大学入試。多くの困難の中でこの日を迎えた受験生のみなさんにとり、よりよい結果となることを願わずにいられません。(2021・1・17)

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トランプ現象の根本原因 『赤旗・潮流』

トランプ米大統領への批判が止まりません。連邦下院はトランプ氏の弾劾訴追決議案を賛成多数で可決しました。2度にわたって弾劾手続きにさらされる大統領は史上初めてです▼トランプ支持者による議会議事堂の襲撃と選挙。あおったのは大統領自身でした。選挙結果の転覆を狙う「反乱の扇動」です。身内の共和党からも批判が出て、主要閣僚が相次いで辞任を表明しました▼敗北した候補者は結果を受け入れ、国の結果へ力を合わせるー。米国民の多くは民主的な選挙を通じて平和裏に政権交代を実現してきた歴史に誇りを持ちます。トランプ氏への抗議がやまないのはこの伝統を踏みにじったからです▼「選挙によらずに自由な政府を持つことはできない」。南北戦争時の大統領で国家分裂の危機に直面したリンカーンは選挙や民主主義の大切さを何度も説きました。リンカーンは共和党出身の最初の大統領です。「リンカーンを裏切る行為」と米メディアはも手厳しい▼来週就任する民主党のバイデン次期大統領は「癒やしの時だ」と語り、多様な人種や女性を閣僚に多く起用しました。分断や差別を乗り越えようという国民へのメッセージです▼トランプ現象の根本原因の一つは貧困や格差への国民の不満と怒りです。民主党進歩派は根本原因をただす改革を求め、それはバイデン氏の政策に一部反映されました。だれ一人置き去りにせず、多様性を認める豊かな社会をどうつくるか。米国民の底力が試される新たな4年間が始まります。(2021・1・169

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[『オンブズマンが行く』NO.199

江東区民オンブズマンの会発行の機関紙2021年の1月号をいただいています。その一面下のコラム「声」を以下紹介します。 【声】新しい年が明けお天気つづきだがなぜか腹の立つことが多い▼コロナ感染が世界規模で広がるなか、Go To ストップの先送り、河合もと法相夫妻の大規模選挙買収事件。秋元司のカジノ汚職につづく、元農水相へのワイロ1800万円!。逃げ回る安倍晋三のウソ答弁も呆れる▼3・11の被災者が10年たっても4万人も村に戻れないーなどなど。きわめつけは高齢者の医療費窓口負担いよいよ2倍にー▼自民・公明が合意したというが、年収200万円以上(単身世帯)の後期高齢者の医療費窓口負担を2割に引き上げるという▼「高齢化社会」などと言われてお年寄りが大事にされるとおもいきゃ、とんでもない。少ない年金まで根こそぎ奪うつもりだろうか? ▼落ち込んではいられない。今年は都議選、解散総選挙があるやも。区民に悪性のウラ側を示すのがオンブズマン。その役割を果たしたい。

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『本当にたたかうべき相手は』『赤旗・潮流』

日本を特別視する風潮がある。私が思うのは先の戦争。日本は勝てると信じていた。そこに冷静な状況分析はなく、ただ漠然と自分たちは勝てると思い込んでいた。今回の新型ウイルスでも似た空気を感じたー▼昨年の5月末、最初の緊急事態宣言が解かれたあとでした。ウイルス学の世界的な権威、河岡義裕・獣医学博士がそう警鐘を鳴らしていました。一気に自粛ムードが緩んでしまえばふたたび感染拡大を招きかねないと(『新型コロナウイルスを制圧する』)▼多くの国民や専門家の懸念を現実に変えてしまったのが政府のGo Toでした。もう大丈夫とばかりに旅行や外食を喚起・奨励し、各地に人波や蜜をつくる。一方で備えは怠る。ふたたびの緊急事態はまさに失敗による人災です▼このウイルスの感染が国内で初めて確認されてからあすで1年。命や健康、生活を奪われ、人生を狂わされた姿は絶えず、収束の見通しもたっていません。感染の増加ベースは加速し、死者も1日で3桁に達するかの勢いで増えています▼いつ終わるともしれない、見えないものとの苦闘。しかし、人類はそれを乗り越えてきました。相手の正体を正確に知り感染予防を徹すれば抑え込むことは可能だと専門家も指摘します▼地球上に無数に存在し、変異していくウイルス。新たなコロナウイルスの出現サイクルも早まっているといいます。私たちが本当にたたかうべき相手。それは科学を無視し、人命を軽んじる政治や体制なのかもしれません。(2021・1・15)

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「絶対」という言葉を使わなかった半藤一利さん2 『赤旗・潮流』

レコード盤の時代、A面の曲が主でB面は従のように扱われることが多かった。でも、この人にかかると時としてB面のほうが面白く味わい深い▼昭和の語り部といわれた半藤一利さっbが90歳で亡くなりました。政治や經濟、軍事・外交といった表舞台のA面と民草日常を描いたB面を一体にして国の歩みを立体的に映し出しました・歴史探偵を名乗ったように隠れ埋もれた史実を掘り起こしながら▼たとえば小林多喜二が特高に殺され、 思想弾圧の滝川事件が起きた1933年(昭和8年)。国連から脱退し、「非常時」が流行語となったこの年は時代の急変を感じさせ、破局への幕が開け始めていたと▼いっぽうで民衆は桜が咲けばお花見にくり出し、夏には東京音頭でソレ、ヨイヨイヨイ」。年末には皇太子誕生の喜びにわいて旗行列ができる。社会を覆う不安や緊張、危うくなる国のゆくえを忘れてしまいたいといわんばかりに▼「戦前の昭和史はまさしく政治や軍事が人間をいかに強引に動かしたかの物語であった。戦後の昭和はそれから脱却し、いかに私たちが自主的に動こうとしてきたかの物語である」(『昭和史 戦後編』)。ふたたび権力が主にならぬよういさめ、憲法9条こそ人類の未来と説きつづけました▼周りに「絶対」があふれていた戦前の日本。その反省から半藤さんは二度とこの言葉を使わないと心に誓ってきたといいます。あえてそえを使っても伝えたい思いは.「戦争だけは絶対にはじめてはいけない」(2021・1・14)

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『絶対』という言葉を使わなかった半藤一利さん 『東京新聞・筆洗』

戦争中、天皇の居間には二枚の肖像画が飾ってあった。一枚は進化論のダーウィン。もう一枚は敵国米国のリンカーン大統領だった・・・▼<金鵄(きんし)輝く日本の栄えある光身に受けて>。1940年の奉祝歌「紀元二千六百年」。毎日練習させられた小学生はこんな替え歌を口にした。<金鵄上がって十五銭、栄えある光三十銭>。金鵄も光も当時のたばこの名・・・▼訃報に著作を読み直せば止まらなくなり、当欄の締め切りを忘れたかった。「日本のいちばん長い日」などの作家、半藤一利さんが亡くなった。九十歳。膨大な資料を読み解き、推理するちから、いかに悲惨な歴史を描こうとも、ほどよいユーモアを忘れぬ文章。われわれは腕利きの「歴史探偵」を失った▼「絶対」という言葉を使わない人だった。東京大空襲で九死に一生を得た、日本が絶対に勝つ、焼夷弾は絶対に消せると教えられたが、絶対なんかなかった▼そのおかげだろう。何事にも眉につばをつけ、小さな出来事や庶民の記憶をも丹念に積み上げる手法はのっぺらぽうになりやすい歴史に人間の「大衆」を与えてみせた▼開国、日露戦争勝利、第二次世界大戦敗戦、バブル経済・・・。日本の歴史はだいたい四十年周期で大きく動くと考えていた。そろそろ、次の四十年となるのか。先は見えぬ。過去の失敗を忘れぬな。せんそうはならぬ。そう説いた人が旅立つ。なんとも心細い。(2021・1・14)

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アメリカの民主主の正体 『東京新聞・筆洗』

(もういくつ寝るとお正月)ー。1月も半ば近くになって童謡「お正月」もあるまい。あのコラム書きもいよいよ血迷うたかと思われるだろうが、米国のトランプ大統領の退任を待ちわびる人にはやはり<もういくつ寝ると>なのだろう▼バイデンさんの大統領就任式は今月20日。あと一週間ほどでトランプさんは政権からいやでも去ることになるのだが、トランプさんを許せぬ米民主党はその一週間でさえ待ちきれないとみえる。トランプ大統領の弾劾手続きに向けて動き出した▼政権の灯火は待てば消えるが、一分一秒でも早く、その火を吹き消したいという気分は分からないでもない。米国の民主主義の汚点となった、一部のトランプ支持者による連邦議会襲撃事件。支持者をけしかけたのはどう考えても、選挙結果をうけいれなかったトランプ大統領である▼政権の終わりが近づく大統領が次にどんな行動をするのか分からないという恐怖心や不信感も弾劾の裏にはあるのだろう▼大統領が核兵器のスイッチを握っているという事実も頭をかすめる。むろんそんなことは起こるまい。それでも連邦議会が占拠され、五人が死亡するような事態が起きることを誰が想像できただろうか▼弾劾の動きにトランプ支持者が反発し、さらに過激な行動にでるのではないかという見方もある、<もういくつ寝ると>米国は落ち着くのか。(2021・1・13)

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[生活保護を受けることは権利です」『赤旗・潮流」

9カ月ぶりに出された緊急事態宣言の下で新型コロナの感染が全国に広がり、3蜜を避け、検温。マスク、手洗いと、自助を実践する毎日です。「まず自助を」と説き続ける菅首相の罪深さも日々問われています▼市民団体と労働組合が共同して食糧支援をもした「年越し支援・コロナ被害相談村」。人びとが助け合う「共助」のお手本で「公助」の貧しさをあぶり出しました▼相談村を訪れた四国出身の30歳男性は所持金が2万円でした。音楽の専門学校卒業後、楽器店でバイトし、派遣労働者になって働いて働いていたアパレル会社は昨年8月に倒産。次の短期派遣も3カ月でした▼ハローワークは同じ求職者であふれて仕事はなく、家賃2カ月滞納して路頭に迷う寸前でした。「人生の別れ道。コロナでなくならない仕事を選んでいたら」と自分を責めてしまう男性。対応した人が「生活保護を受けることは権利です」と話すと、コロナ禍は自助で乗り切るものでなく「社会保障に頼ってもいい」と気持ちが軽くなったといいます▼最年少相談者は19歳女性でした。仕事がなくネットカフェ暮らしで、実家に帰る金もないとの訴えでした。コロナ危機への「公助」の無策と感染拡大は、不安定な非正規雇用で働く若者や女性にとって命にかかわる事態です▼コロナで生活が困窮し、自死が増えては元も子もありません。困った人たちに行きわたる経済的支援は、国の仕事です。連帯して「政府はその責任を果たせ」と迫る声を全国であげる時です。(2021・1・12)

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様変わりした今年の成人式 『赤旗・潮流』

中止や延期、オンライン開催と様変わりする今年の成人式。おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝い励ますー晴れの舞台がこんなことになろとは▼21世紀の始まりとともに歩んできた120万余の新成人。情報革命の波や、目まぐるしい時代の変化のなか、インターネットやSNSを通し他者や社会とかかわる機会が増えた世代です。また相次ぐ震災や異常気象も経験してきました▼相手の気持を理解したい、困っていている人の手助けを、社会のために役立つことをしたい。そうした意識やボランティアへの興味関心が高いことも政府の調査からうかがえます。支え合いのなかに生きる意味を見出す動きも▼コロナ禍にあえぐ人たちに食料を無償配布するフードバンク。とりくむ若者のなかにはみずからも苦しい思いを抱えながら、もっと大変な人たちがいる、少しでも力になれたらと参加する姿がありました▼小学生のときに東日本大震災で津波にあったという女性は、つらくても、あきらめないことを学んだと話していました。くじけそうになったとき、周りの人に生きる勇気をもらった。こんどは自分がそういう存在になりたいと▼コロナで大切なことに気づかされた、さまざまなつながりを強く意識できた、私もやさしい心をもち誰かの力になれるようにがんばる・・・。動画サイトに公開された新成人のメッセージです。大きな不安のなかで船出する若人。その背にエールを送り、手を携えて困難を乗り越えたい。(2021・1・11)

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大企業には「公助」する菅政権 『赤旗・潮流』

総務省は「スマホ乗り換え相談所」を開設する予定だそうです。携帯各社が料金値下げをすすめるなか、利用者に合った料金プランや機種変更を後押しするものだとか▼政府が税金を使って民間サービスのための相談所を設けるのは異例です。「自助」「共助」を強調する菅政権が、大企業に「公助」する。ふに落ちません▼2012年総選挙時に「『手当より仕事』を基本とした生活保護の見直し」を掲げた野党自民党。「個々人が国に支えてもらうのではなく、額に汗して働く人が報われる社会を目指しています」とうたっていました。自助・自立が基本だ、甘えるな、と▼バッシングの嵐が吹き荒れたのも、このころでした。生活保護利用者はスティグマ(負の烙印)を押され、肩身の狭い思いを余儀なくされています。自公政権は生活保護費削減も強行し、追い打ちをかけました▼厚生労働省は昨年末、ホームページで「生活保護の申請は国民の権利です」と呼びかけをはじめました。SNSでは、「恥じることも、恐れることもなく、堂々と生活保護を利用しましょう」などと多くの人が拡散。新たな動きです▼それでもなお、呪縛は容易には解けません。コロナ禍で生活困窮しているにもかかわらず、生活保護の利用をためらう人が少なくない現状があります。「生活保護は権利」だと積極的な呼びかけを、シャワーのように降り注がなければ。誰もが利用する可能性があるのですから。政府が「公助」すべき対象は大企業ではありません。(2021・1・10)

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民主主義の範を誇った国の正念場 『赤旗・潮流』

いずれの州にも属さないコロンビア特別区、通称ワシントンDC。初代大統領のジョージ・ワシントンがここに首都をつくることを決めて以来、アメリカ合衆国を象徴する地です▼数多くある連邦政府の建物のなかでひときわ目立つのが丘の上にそびえる議会議事堂。親しみをこめて呼ばれる「キャピトル」は、立法府としての役割とともに独立記念日の祝賀会や大統領就任式をはじめ重要な式典の場にもなってきました▼合衆国の歩みを刻んできた議事堂が、米英戦争でイギリス軍に目を付けられて以来、200年ぶりに攻撃を受けました。大統領選の結果を確定させる両院の合同会議が開かれているさなか、トランプ大統領の支持者によって▼議会に向かおう、この国を取り戻せー。抗議デモでトランプ大統領にあおられた多数が議事堂内に乱入し、一時は占拠。死者も出る暴動にペンス副大統領は「米議会の歴史において暗黒の日になった」と▼敗者が民意の結果を潔く受け入れる姿は、大統領選を通じて分断された国民の結束と協調を促す象徴とみなされてきました。それを拒んで根拠もない不正を言い募り、憎しみをぶつけてきたトランプ氏の言動が、歴史に汚点を残す暴力を招いたのです▼議事堂のドームの頂に立つ自由の像。その台座には「多数からなる一つ」との言葉が刻印されています。州が集まり一つの国をなすとともに、多民族からなるという意味も表しているといいます。世界に民主主義の範を自負してきた国の正念場です。(2021・1・9)

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メルケルと菅首相 この違い 『赤旗・潮流』

国や自治体のリーダーが自ら汗をかき、自ら難しいこともやる。だから。みなさんも協力してくださいというメッセージがないと。このことが私は極めて重要だと思う▼政府のコロナ対策分科会の尾見会長が緊急会見で強調していました。自粛や要請を求めるだけでなく、まず範を垂れよ。同様の発言は日本医師会の中川会長からも。多数での会食や宴会をくり返し、批判されても開き直る。そんな政府や自民党への苦言ともいえます▼菅首相が1都3県に1カ月間の緊急事態宣言を出しました。今回の感染拡大を招いたのは明らかに政府による人災。旅行や会食を促して蜜をつり、専門家らの勧告も無視する。医療機関や検査体制の拡充も、実効性ある対策も打たず、自己責任を押しつけてきた結果です▼その間に失業や廃業は増え続け、昨年の飲食店の倒産は過去最多に。すでに適切な医療を提供できない、受けられない事態が起き、コロナ感染によって自宅や施設で亡くなる人が急増しています▼感染を減らし命とくらしを守るためには、検査の強化や十分な補償が欠かせません。そのうえで、いま求められているのは危機を共有し、この難局をともに乗り越えようとする政府の真剣な姿勢でしょう▼ドイツのメルケル首相は新年の演説で、コロナで家族を失った人びとに心を寄せ、医療従事者らに感謝を述べました。誰ひとり孤立させない決意を込めて。菅首相から聞こえてくるのは無反省と国民への制約、心にとどかない言葉ばかりか・・・。(2021・1・8)

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ジェンダー平等を求めるうねり 『赤旗・潮流』

残り2㌔の大逆転劇となった今年の箱根駅伝。最終区、追い上げ追い越す選手を伴走車から鼓舞していた駒大監督の檄が話題になりました▼「男だろ!」「やったよ、男だ」。ここぞの場面で活を入れるために使ってきたといいます。部の伝統なのか『駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか』という本までだしています▼ネット上では監督や選手への賛辞とともに厳しい意見も。違和感がある、今どきこんなことを言うんだ、精一杯頑張る姿勢に男も女もないと思う・・・。しかも回りも同調し、アナウンサーが「男をあげた」、選手も「監督を男に」、新聞は「名文句」ともちあげて▼まるで昭和の時代に逆戻りしたような感は正月の特番でも。トーク番組でゲストにまだ独身かと聞いたり、男を立てるように説いたりする司会。古びた男女観をもっともらしく口にするお笑い芸人も。男のために尽くす女性をけなげと描くドラマと、あげればきりがありせん▼いまだ覆う古色蒼然とした価値観や性差による不平等。それは政財界に顕著に表れています。元日の日経新聞に載った「経営者が占う2021年」にずらりと並んだ40人はすべて男性。政治の世界も男が目立ち、政権党からは女性をおとしめる発言が絶えません▼一方でジェンダー平等を求めるうねりはこの遅れた国でも確かに。これまでまかり通ってきたことにも声があがり、そのひろがりは社会を動かしています。男らしさや女らしさではなく、自分らしく生きられる世の中へ。(2021・1・7)

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「欲望の資本主義2021」『赤旗・潮流』

拡大する格差、異常気象や環境破壊、そして新型ウイルスの大流行。現在の世界が抱える問題を解決するにはどうすればいいのか。コロナ禍の年初にあたって、社会のありようを問いただす論調や番組が目立ちました▼NHKBS「欲望の資本主義2021」では、さまざまな立場の専門家が人類の危機をもたらしている問題点を指摘していました。アメリカの経済学者は強大化した資本主義の強欲を抑え込むためには「法や制度だけでなく、社会規範がともにあるべき」だと▼私たちはこのまま資本主義に人類の未来をゆだねておいて大丈夫なのか。そんな疑問がわいてくる世界だからこそ、いまマルクスの『資本論』が注目され、必要になっているという論調も▼ありとあらゆるものを商品と化し、私たちをふり回し、多くの人々を犠牲にする文明とは、音楽家の坂本龍一さんが本紙で「資本主義のあり方を根本的に見直さなければ人類の未来はない」と訴えてように、社会の深部から変革しようとする動きがひろがっています▼気候正義を求める若者たちは、既存の権益に固執する政治や經濟に批判の声をあげ、連帯して立ち上がっています。とまらない欲望の仕組み。そのゆがんだ亀裂を埋めるのもまた、人間自身だというように▼もっと、自由で平等で、みんなが豊かになれる社会をめざし、新しい時代にふみだすとき。パリで気候運動に携わる女性はこう呼びかけます。「これは私たち人類が地球で尊厳をもって生きるためのたたかい」(2021・1・6)

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「何があってもあなたを守る」『赤旗・潮流』

4日は仕事初めでしたが、これほど不安に満ちあふれた年明けは経験したことがありません▼首都県では、連日のように新型コロナウイルスの感染で「曜日最多」を更新。年末には、東京都で1日の感染者が1300人を超え、衝撃を与えました。対策として、菅義偉首相は4日の会見で、一都三県での飲食店への時短要請や、応じない業者への罰則付き特措法に言及しました▼首相は「大阪や北海道で時短要請の効果があったが、1都3県で人手が減っていない」として「より強いメッセージ」を強調します。しかし、実効性ある対策を打ってこなかった一方、「Go To」事業で旅行や外食を促し、「会食は控えて」と言いながら首相自ら、大人数での会食ざんまい、自民党議員は全国で大宴会を繰り返してきました▼その結果、「人災」とも言える形で感染が拡大したのです。緊急事態宣言を出すなら、「出歩く国民が悪い」というメッセージではなく、まず、自らのふるまいへの反省と総括が不可欠でしょう▼飲食店で飛沫感染が発生している可能性は否定できません。しかし、ほとんどの飲食店は感染防止に神経をすりへらしながら、生活を守るために必死に営業を続けています。首相の口からは、そうした業者への思いやりの言葉も、休業に対する補償も一言もありません。罰則だけが際立ちます▼国民が求めているのは強制措置ではありません。「何があってもあなたを守る」というメッセージです。(2021・1・5)

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コロナ禍の上に今度は大雪 『東京新聞・筆洗』

信州の豪雪地帯に生まれ、晩年を過ごした一茶に「雪」の句が多いのは当然だろう。<心からしなのの雪に降られけり>。雪を好んで詠む一方で、雪への恨み言めいた句も少なくない▼手厳しいのは(雲行け行け都のたはけ侍おらん>。大雪のおそろしさをを知らず、雪を風情あるものと喜んでいるような都の「たわけ者」のところに雪が降ればいいと言っている▼一茶の嘆きが聞こえてきそうな日本海側を中心にした年末年始の大雪である。穏やかな年末年始を迎えたかったのにコロナ禍の苦しみの上に今度は大雪が降り積もる▼帰省を控えるように言われていたので、この年末年始に地元に帰った若者はいつもの年よりも少ないはずだ。ボランティアも期待できない。重労働の雪かきの手は足りているか。心配になってくる▼雪の降らぬ場所に住む者が<都のたはけ>になりやすいのはしかたないところもあるが、コロナの方はどうだろう。感染しないだろうと、ひとことのように決め込み、感染対策を軽視した風潮がなお、どこかにないか。その実、コロナという大雪は降り続いている。<たはけ>にはなるまい▼4日は仕事始めである。社会が再び動きだす。感染のさらなる拡大も心配されている。対策も万全に、より慎重な仕事始めを心掛けたい。<雪とけてムラ一ぱいの子ども哉)。雪もコロナも消える日を信じ、耐えしのぐ。(2021・1・4)

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牛の我慢牛の我慢強さで一歩づつ前へ 『東京新聞・筆洗』

〈牛はのろのろと歩く/牛は野でも山でも川でも/自分の行きたいところへは/まっすぐに行く>。新年はウシ年。高村光太郎の有名な「牛」を連れてくるとする▼<牛は急ぐ事をしない><ひと足、ひと足、牛は自分の道を味はって行く>この牛は急がないが、着実に前へと進んでいく。<遅れても、先になっても/自分の道を自分で行く>である。〈人をうらやましいとも思はない/牛は自分の孤独をちゃんと知っている>。力強くまわりにも振り回されず、道を行く牛が生きる上でのお手本のように思えてくる。▼光太郎の詩に子どもの時に教わった牛の話を思い出す。牛が十二支に選ばれたいきさつである。競争で決めるというが、足の遅い牛は間に合わないので前の晩から出発することにした。それを牛小屋で見たネズミ。ちゃっかり牛の背に飛び乗った▼牛は夜通し有るき続けた。背中ではネズミがが眠っている。ゴールの直前にネズミは牛から飛び降りて一着入賞。結果。干支(えと)は子(ね)丑(うし)の順となった▼憎らしいネズミだが、光太郎の詩や、牛の優しい顔を思えば、牛は気にせず、ただ自分の歩みに満足したかも知れぬと勝手な想像をしたくなる▼ウイルスとの闘いは今年も続く、日常を取り戻すための歩みは遅くとも焦らず、牛のがまん強さで一歩ずつ前に進むしかあるまい。<見よ/牛の眼は叡智にかがやく>(2021・1・3)

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「東北大震災と年賀状」再掲

あの大震災から今年は10年。そのあくる年(2012年)に頂いた年賀状を再読した。共感を覚えて私のブログに掲載したものの中からあの先輩の一文を、以下紹介しよう。  「めっきり少なくなったのは髪の毛だけではない。正月に到来する年賀状だ。それはこちらから出さなくなったこともあるが、少なくない友人、知人、そしてあの人が幽明境を異にすることになったせいかも知れない▼少ないが賀状の中でもこれが印象的。冒頭のメッセージが昨年をしのばせ感動させてくれる。『数百年あるいは千年に一度という津波大被害、それに続く原発破壊によって大きな被害と衝撃を受けた昨年でした』」と▼そして、続きます。「かつて、日本中があのような惨状であったことを思い出します国外では『アラブの春』、格差に反対するアメリカ各地のデモなど、新しい時代の芽も現れてきました」▼いただいた賀状のほとんどがあの日のことを踏まえて、自らの『来し方』、東京大空襲に遭遇したこと、はたまた、外地からの引き揚げ体験を重ね合わせて、今年の行末になみなみならぬ決意をにじませています」

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「つなげたい」光あふれる世界へ 『赤旗・潮流』

広大な太平洋の水平線から立ち昇る朝日が大海原を赤く染めていきます。見渡す先には金華山。仙台湾の南部にある宮城・山元町の海岸です▼このまぶしい日の光を、待ち望んでいた子どもたちがいました。巨大津波に襲われたあの日。押しつぶされそうな不安と恐怖のなかで、中浜小学校の児童ら90人は屋上にある倉庫で一夜を過ごしました▼いまだ爪痕が残る校舎、それが整備され、震災遺構として9月から一般公開されています。当時5年生だった根元夏奈さんは教訓を伝える施設として「災害のときに命を守る大切さを感じてほしい」▼今年は東日本大震災から10年。被災地の歩みには困難を抱えながら復興に力を尽くす若者たちの姿がありました。ここ山元町に住む阿部結悟(ゆいご)さんもその一人。北海道の大学に通っていましたが、地元のために何かできないかと帰郷。NPOを立ち上げ、地域の仲間とともに海岸林の復活や被災者の雇用、起業支援に奔走してきました▼「まちづくりに住民がかかわることが復興の実感を高める」。みんなが暮らしていくうえで欠かせないもの、大事なものをあきらめたくないと。結悟さんの父親で震災時、町内の小学校教員だった広力(こうりき)さんはふりふり返ります。「先が見えないなかで若い世代のがんばりは光だった」▼災害や異常気象、そして感染症の拡大ー。そのなかで懸命に前を向き、生きようとする人びと。それを支える社会をつくり、光あふれる世界へとつなげたい。新たな年に込める思いです。(2021・1・1) 【注】コラムの転載を始めたのが昨年の4月。9カ月を過ぎ…

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