戦後72年 「平和の俳句」 -41-

 10月第3週の「平和の俳句」。戦後70年を機に毎朝一面で掲載を続けていますが二カ月に一度の特集では、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の選んだ句を紹介しています。今回は文化部の小佐野慧太記者です。(8月22日付)   あのときに終わっていたから僕はいる      本宮和親(14) 埼玉県上尾市    中学三年生の作者は、亡くなった祖父が特攻隊員だったと教えられた。出撃の直前、八月十五日を迎えたのだという。「これからも平和な世の中が続いて、命をずっとつないでいけることを願っています。と作者は言う。素直な気持ちを詠んだ俳句が、「本土決戦」「一億玉砕」も叫ばれた戦争末期の異様さを照射する。    普天間の見える丘にて蝉しぐれ       塩野龍男(65) 東京都青海市    大空襲たどるその道盆参り       鈴木琢郎(75) 東京都新宿区           ◆憲法の前文が好き戦後っ子 小林礼子(72) 千葉県柏あいすい市 2017・10.8 【評】<黒田杏子>戦前に生まれた私も前文大好き。読むたびに涙ぐみます。前文に力を得て、九条とかつぎあしたつぎ読みすすむおが渡井の日課です。 ◆ミサイルを拒まんとペン構えけり 大島志朗(88) 宇都宮市 2017・10・9 【評】<いとうせいこう>ミサイルを拒むのにミサイルをもってするのでは競走は終わらない。作者はそこにペンを構える。外交は、哲学は言葉である。 ◆猫じゃらし飼いならされてなるもの…

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戦後72年 「平和の俳句」 -40-

 10月最初の「平和の俳句」。一昨年、東京新聞が企画した「平和の俳句」、以来、選者として務めてきた俳人の金子兜太がこのほど引退。替わって黒田杏子(くろだ・ももこ-79)さんがその任にあたることになった。以下は黒田さんのミニプロフイールです。 黒田杏子さん プロフイール    俳人、エッセイスト。1938年、東京生まれ。俳誌「藍生(あおい)」主宰。東京女子大学在学中に山口 青頓(せいそん)に師事。卒業後、広告代理店「博報堂」に入社し「広告」編集長などを務めた。現代俳句女流賞、蛇笏(だこつ)賞などを受賞。句集に「木の椅子」「銀河山河」など、代表句<白葱(しろねぎ)のひかりの棒をいま刻む>は多くの教科書に掲載されている。金子兜太さんとは50年近い交流がある。博報堂時代から愛用しているファショナブルな「もんぺスーツ」がトレードマーク。   ◆召集をのがれて生きた九十七 近藤敏夫(97) 浜松市中区 2017・10・1 【評】<黒田杏子>八月で選者を退任された金子兜太先生と、ほぼご同年。戦場体験者もそうでない方も白寿を目前に、それぞれに一世紀近い人生行路を歩まれた大先達に敬服します。 ◆否定という自由ありけり夏の果て 田中亜紀子(46) 津市 2017・10・2 【評】<黒田杏子>「否」という自由。これは守らねばなりません。絶対にね。 <いとうせいこう>メッセージがきちんと俳句になる好例。夏疲れがあっても否は否。 ◆雷様がわたしに代って絶叫す 西崎敦子(82) …

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戦後72年 「平和の俳句」 -39-

 10月最初の「平和の俳句」。戦後70年を機に毎朝一面で掲載を続けていますが二カ月に一度の特集では、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の選んだ句を紹介しています。今回は文化部・矢島智子記者です。(8月22日付)       吾子を背に前にも抱き防空壕        冨田泰子(95) 東京都中野区    1945年4月の夜、空襲警報と同時に米軍機の爆音が頭上にした。二人の幼い娘を抱え、東京・麻布の丘をくりぬいた横穴防空壕に駆け込んだ。爆弾が落ちるたびに壕内は揺れ、誰かが「ここにいうと蒸し焼きになるぞ」と叫ぶと皆、出口に殺到した。押し倒されながら必死で外に出ると、壕の上に竜巻のような炎が上がっていた。   九条をそっと支える戦没者           渡辺勇三(74) 奈良県宇陀市 ◆秋高し空より青き国であれ 村田睦美(53) 埼玉県富士見市 2017・9・24 【評】<いとうせいこう>秋深き隣は何をうる人ぞ、とのぞき見て告発する社会への懸念。それより空がどこまでも青い、自由な世の中であれお願う一句。 ◆前田祐二(77)  静夕やけは我の脳裏に二つあり 岡県湖西市 2017・9・25 【評】<夏井いつき>戦争が始まった時、終わった時、人が生まれた時、死んだ時、。私たちの「脳裏」には様々な「二つ」の「夕やけ」が刻まれているのだ。 ◆自分史みねずみを食わざりし平和 早川お晃治(65) 金沢市 2017・9・26 【評】<いとう…

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戦後72年 「平和の俳句」 -38-

 「平和の俳句」9月最終週。このシリーズ開始以来選者を務めてきた俳人の金子兜太さんが惜しまれて引退、替わって登場する黒田杏子さん(79)が10月分の選考会(12日、3226通から掲載句を選んだ)に出席、その意欲を次のように語った。      「表現欲 パワーもらった」       黒田杏子さん初選句   金子さんとの交流が深く、「平和の俳句」を「毎朝楽しみに詠んできた」という黒田さん。「新聞には俳句だけが載るけれど、投句はがきには、びっしりエピソードが書かれたものも多いことに驚きました。すごいですねえ」と感動の声を上げた。選句後には「この表現欲は、ほかの選句では合わないもの。それだけ選者を信頼してくれているのだと思って、パワーをもらいました」とほほえんだ。  今回は八月に退任した金子さんを惜しむ内容の句も目立った。黒田さんは「金子さんの存在自体が平和の顔になった。『平和の俳句』で俳人としての真骨頂を発揮されたのでは」とたたえた。  いとうさんは「黒田さんは兜太さんが何をしてきたか分かった上で選句をしている。兜さんを入れて三人で選んでいるようでした」と話していた。(小佐野彗太) ◆低く飛ぶ燕は銃を持たざりき 並木孝信(82) 神奈川県厚木市 2017・9・17 【評】<いとうせいこう>おっしゃる通り、素早い低空飛行をする燕が武器を持っていたらどんなに恐ろしいことか。それが戦中というものだ。 ◆こんな事で凹(へこ)むものかよ苗植える 近吉三男(101) 石川…

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戦後72年 「平和の俳句」 -37-

 九月第二週の「平和の俳句」。冒頭には、恒例により今回も選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ句を紹介しましょう。(増田恵美子文化部長=東京新聞8月22日付)    千人針の腹巻をして海の底       大島志郎(88) 宇都宮市    大島さんの母親は招集された弟のために、弾よけの祈りを込めた千人針をせっせと 塗った。しかし、叔父はフイリピン・レイテ島沖で、乗っていた輸送船が撃沈されて戦死。遺骨も無く、地元駅に帰った白木の箱は空だった。村葬で涕にくれる母親を見ながら、旧制中学生だった大島さんは「なぜ」と悔しかった。  脅かし合う核の傘持ちどちらまで             進藤ユミコ(68) 埼玉県狭山市  降伏から幸福さがして第九条             増田由紀子 さいたま市見沼区 ◆駐屯地のトラック百台大暑かな 尾関昭子(78) 東京都板橋区 2017・9・10 【注】<夏井いつき>「駐屯地」という場所、「百台」という教訓。「大暑」という季語。おのおのの言葉が「トラック」の土煙とともに不穏に立ち上がってくる。 ◆沖縄の日妻退院す快晴なり 多田治周(80) 福井県勝山市 2017・9・12 【評】<夏井いつき>「沖縄の日」「退院」「快晴」の三つが重なる今日の青空が眩しい。<いとうせいこう>長い入院生活からの退院。空のあおいその日が慰霊の日だった奇偶。 ◆隠ぺいの弾け飛びだす鳳仙花 岩倉幹郎(75) 石川県小松市 201・9…

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戦後72年 「平和の俳句」 ー36-

 9月第一週の「平和の俳句」。9月は、ゲスト選者としてはテレビでお馴染みの俳人の夏井いつきさん(60)が初めて参加、レギュラー選者のいとうせいこうさん(56)と選考にあたった。     裾野広げる 自分の使命        夏井いつきさん    中学の国語教諭だった夏井さんは、今も俳句を教材とした言葉とコミュニケーヨンの授業「句会ライブ」を全国の小・中・高校で続けている。  今年、還暦を迎えた夏井さんは60代でさらに広く「俳句の種まき」を展開したいという。「俳句が富士山のように高くて美しい山であり続けるのに必要なのは、豊かで広い裾野」。その裾野を広げるのが自分の使命だという高い志を夏井さんに植え付けたのは、師匠の黒田杏子さん(79)だという。黒田さんは今月開催の選考会から、八月に退任したレギュラー選者金子兜太さん(97)の後任を務める。(矢島智子) ◆心地よし便座冷たい半夏生(はんげしょう) 浅見英紀(77) 愛知県新城市 2017・9・3 【評】<いとうせいこう>猛暑で切っておいたスイッチ。それが半夏生で冷えていて気持ちいい。便座のあるあるネタが斬新な一句に季節そのもの。 ◆ニガウリの苦さは八月の苦さ 北田のりこ(72) 津市 2017・9・4 【評】<夏井いつき>「なガウリ」の「苦さ」という味覚が、季語「八月」に対する心情の「苦さ」として描かれる。今年の「ニガウリ」の苦さはひときわ。 ◆基地近し不気味な音亦夏の宵 斎藤佳彦(74) 浜松市…

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戦後72年 「平和の俳句」 -35-

 「平和の俳句」8月の最終週。今月いっぱいで選者の金子兜太さん(97)が引退されます。今朝(8月29日)の東京新聞の発言欄には栃木の主婦からその退任を惜しむ投稿が載せられています。  金子さん退任 俳句選考感謝   主婦 千葉静子 63(栃木県那須町)  毎朝、一面の「平和の俳句」を音読することから、私の一日が始まります。老若男女が自由に詠む句に、大きな安心感を得ている、と言っても過言ではありません。  17日一面で、金子兜太さんが選者をたいにんされると知り、とても残念です。しかし一方で、「よくぞここまで、集中力を要する選者をやり通してくださった」と、感謝の心でいっぱいです。  金子さんの評は、神髄を見すえている上に、おおらかで優しさに満ちていました。言葉ひとついとつに向きあい、寄り添う姿勢には常に敬服してきました。  金子さん、長い間、平和の俳句を選考し、朝に一句、届けてくださって本当にありがとうございました。平和な朝が続くよう、私もいきたいです。 ◆平和守る国会に欲し嘘発見器 原 英子(82) 愛知県一宮市 2017・8・27 【評】<金子兜太>国会の質疑を聞いていると、嘘発見器を取り付けてもらいたいと思う発言が多い。国会に英和を守る気があるのか、疑わしくなる。 ◆平和とは自由な色で生きること 浦野美智子(65) 千葉市中央区 2017・8・28 【評】<金子兜太>共謀罪成立で、自由が奪われる社会は恐ろしい。私は戦中を思いだす。一人一人が個性を発…

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戦後72年 「平和の俳句」 -34-

 8月第4週の「平和の俳句」。このシリーズはじまって以来の選者だった金子兜太さんが今月限りで引退されるという。極めて残念。すべての投句に温かい眼差しで、そして時に鋭く包み込んできた金子さんでした。どうかお元気で。      平和脅かされる今、断腸の思い        金子兜太さん選者退任   「平和の俳句」が始まって以来、皆さんの投稿に一生懸命向き合ってきました。自分の中で特別に大切な仕事でしたが、私も九月で九十八歳。集中して評を書くことがいよいよ難しくなり、選者を退くことを決断しました。戦場を知る私にとって、平和ほどかけがえのないものはありません。其の平和が脅かされている今、辞めるのは断腸の思いですが、あとは黒田杏子さんに委ねます。  これからも「平和の俳句」をよろしくお願いします。   選句が生き甲斐  黒田さん   毎朝楽しみに読んできた「平和の俳句」の選者になれること、光栄ですし、嬉しいです。俳句を作ることは大好きですが、私はなにより、選句が生甲斐、天職と思っています。皆さまの自由なお心と発想、表現に出会えること、期待してわくわくしています。この国がこののちも平和であることを強く希って。 ◆駅前に立つ吾励ます声涼し 浅岡喜美子(71) 愛知県豊橋市 2017・8・20 【評】<いとうせいこう>一昨年の夏から毎週金曜日の夕方、豊橋駅前でスタンディングをし、戦争に反対し続けている71歳の女性。励ます声が力になる。 ◆口つぐむ民になるまじ六・一五 宮…

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戦後72年 「平和の俳句」 -33-

 8月第3週の「平和の俳句」。突如として飛び込んできたニュース。それは金子兜太さんが今月いっぱいで選者を引退されるという。戦中派であり、投稿されてきた一つひとつの評に戦争体験を滲ませてきた金子さん。残念でならない。 【平和の俳句】 金子兜太さん退任           後任選者 黒田杏子さん    戦後七十年の2015年1月1日から本紙一面で掲載している「平和の俳句」の選者を務めてきた俳人の金子兜太さん(97)が退任することになった。「集中して評をを書くことが難しくなった」として、自ら決断した。後任は俳人の黒田 杏子(ももこ)さん(79)。九月に開かれる10月の選考会から、作家のいとうせいこうさん(56)とともに句を選ぶ。  「平和の俳句」は、14年8月15日の終戦の日に掲載した金子さんといとうせいこうさんの対談がきっかけで始まり、今月初めまで12万1400通を超える投稿があった。金子さんが選句したのは今月掲載分まで。 ◆グラグラのはがぬけましたうれしいな 鈴木主遑(7) 愛知県一宮市 2017・8・13 【評】<いとうせいこう>グリグリとサインペンで書いてくれた文字もとても喜びにあふれていました。グラグラの歯が抜けて大人になるのを見守る平和 ◆人間を考える日なり終戦日 岩倉幹郎(75) 石川県小松市 2017・8・14 【評】<金子兜太>パスカルは「人間は考える葦なり」としたが、作者は、終戦日を「人間を考える日」にしたいと提唱している。大賛成です。 …

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戦後72年 「平和の俳句」 -32-

 「平和の俳句」8月第2週。東京新聞8日付によると9月掲載の選考会が7日、東京本社で行われたようです。これには作家のいとうせいこうさん(56)とゲスト選者の俳人、夏井いつきさん(60)が参加、3093通から掲載句をえらびました。       「下五音にリアリティーを」       夏井さん作法アドバイス    テレビでも人気の夏井いつきさんに俳句を見てもらおうと、常連以外の人からの投句が目立った。いとうさんは「(伝統俳句でしられる)夏井さんを選者をされるからか、季語も入れて俳句としての水準を考えた句が多かった。採りやすかったです」と選考を振り返った。  夏井さんは「平和の俳句ということで(主張を前面に出した)シュプレヒコールが多いですね」。でも、その中に詩になっている句がある」と感心していた。その上で「詩になっていると、主張はいろんな人の心の中に受け入れられていくと思う」と話した。  五七五の下五を「平和かな」とする句がよく目に留まったとして「私は安易じゃないかと思うんですね。その人がそこに生きているリアリティーのかけらみたいなものが下の五音に入っていると、詩として生きていける時間が長くなるとおもいます」とアドバイスした。  なお、金子兜太さんは体調不良のため欠席しました。 ◆登校時人燃えていた8・15(はちじゅうご) 稲田悠来(14) 石川県小松市 2017・8・6 【評】広島に原子爆弾が落とされたのと同じ時間に、自分は登校している。人が燃えてたいた時間に。その…

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戦後72年 「平和の俳句」 ー31-

 8月第一週の「平和の俳句」。9月のゲスト選者にテレビの「プレバド」で評判の俳人・夏井いつきさん(60)が決まったようです。東京新聞は7月6日の紙面で夏井さんに句作りへの助言を聞いています。       想像沸き立つ上質な詩を   「一番強く願うのは、作品がシュプレヒコールで終わってほしくない、季語があってもなくても上質な詩になっていてほしいということ」と夏井さんは強調する。シュプレヒコールとは、デモや集会で参加者が「一斉に叫ぶスローガン。詩とは「描かれた言葉がいろんな思いを刺激し、想像を沸き立たせてくれるもの」。  「知識やテクニックがなくても、何げなくつぶやいたひと言が心を打つ句になることもある。下手な小細工はしない方がいい」と夏井さん。季語を愛する俳人として「『平和の俳句』にも季語を軸とした作品が多くなってほしい」と望む。「心が動いた場面を再生すると、周りに印象的な季語が存在していたと思う」。夏井さんも夏の季語である泰山木(たいさんぼく)の白い大きな花を見ると、バイク事故で亡くなった教え子を思い出すという。「この機に歳時記を眺めてみては」と勧める。そして「俳句で生々しく表現して次の世代の人々に手渡してあげられる体験もあると思う。ぜひ読ませていただきたい」と戦争体験者による投句にも強い期待を寄せた。(矢島智子)  ◆里山の色気食い気の平和かな 山崎義盛(85) 福井市 2017・7・31 【評】<金子兜太>山に囲まれた里山。作者は言う。日本の里山の人々の暮らしには共同…

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戦後72年 「平和の俳句」 -30-

 7月最終の「平和の俳句」。八月掲載分の選考会が11日、東京新聞東京本社で行われました。俳人の金子兜太さん(97)と作家のいとうせいこうさん(56)が2401通の中から掲載句を選びました。(同紙7月12日付)        「感じたことをそのまま」       投句の高校生にアドバイス    二人は広島と長崎の原爆の日や終戦の日を詠んだ句を積極的に採った。沖縄戦が集結した沖縄慰霊の日(6月23日)を詠んだ句も多く寄せられ、いとうさんは「ちょうど八月に載せるのにふさわしい句を選べたと思います」と話した。  今回は中学・高校の五校から学校単位の投句が600近くあり、二人をうならえた句も府クウ数あった。金子さんは中高生に向けて「(俳句を)知識で作りがちですが、なるべくやめて、感じたことをそのまま書くようにしたらどうだろうか」とアドバイスした。  伊藤さんは「(中高生の俳句は)先生の指導が違うとずいぶん変わる。感じたことを上手に形にしていくような指導があれば、むしろ体験がないからこそ言えることが出てくるんじゃないかな。そういう言葉を探すために『平和の俳句』があるんです」と話した。 ◆苦うりや今夏もっと苦くなれ 永井玲子(72) 愛知県一宮市 2017・7・23 【評】<いとうせいこう>沖縄のことを考え、同調し、思いをはせる作者。自分の家でも育てているのか、それが苦くなれと願う。甘さを押しつけられるな、と。 ◆子と住めり平和の音よ目覚めよし 稲本八重子(81) 愛知県江南市…

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戦後72年 「平和の俳句」 -29-

 7月第4週の「平和の俳句」・東京新聞は惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ1句を二ヶ月に1回「特集」で紹介しています。今回は文化部・小佐野慧太記者の推薦句です。    罅われし戦時の湯飲み撫で平和          大塚山吉(85) 千葉県松戸市    「戦時の湯飲み」はビルマで戦死した兄の遺品。出世したあと、家族がとっておいたものを譲り受けた。「兄貴の形見。宝物です」と作者は話す。日常の庫氏で使うことはなく、大切に保管しているという。「罅(ひび)」という言葉に、二度と戻らない時間のかけがえのなさを感じる。    十三の夏は暑くてひもじくて       相馬里子(85) 東京都狛江市    平和なる音たて焼ける目玉焼き       榎本  久(70) 埼玉県秩父市 ◆三才の子に百年の平和欲し 増谷信一(62) 大分県中津市 2017・7・16 【評】<金子兜太>孫の次の世代まで、戦争の無い時代であってほしいと望む。 <いとうせいこう> お孫さん、ひ孫を見て平和を思う人の句は多いが、シンプルで強い一句。 ◆朝が来た新聞がくる平和かな! 千賀のぶ子(85) 愛知県清洲市 2017・7・17 【評】<金子兜太>毎朝決おの日常まっていることがキチンと行われる。これが平和。 <いつせいこう>その日常を「!」で一気に元気にする! 言葉にはいちいち付けようか! ◆夏空を飾るがごとくデモの旗 松藤梨紗(16) 愛知県知多市 2017…

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戦後72年 「平和の俳句」 ー28-

 「平和の俳句」7月第2週。東京新聞は惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ句を二ヶ月に1回「特集」で紹介しています。今回は文化部・矢島智子記者の推薦句です。    おむつ干し見上げた空に鯉およぐ       中川恭子(34) 長野県千曲市   第一子を出産した中川さんは東京都内の実家で子育て中。昔ながらの布おむつを愛用し、一日20枚ほどを選択している。五月には母親が手作りしてくれた大きな鯉のぼりが一匹、おむつと一緒に風にはためいた。     物言わぬ木々の優しさ風邪光る        河原日向子(28) 東京都練馬区     空襲の屍の跡を踏み生きる        草深 晃男(75) 川崎高津区     ほんとうに平和だろうか傷がある        奥山 恵(74) 東京都世田谷区     ◆声大き人は恐ろし夏の月 田中亜紀子(45) 津市 2017・7・9 【評】<いとうせいこう> 話し会う気持ちないと声はどんどん大きくなり、独りよがりになり、ついには強制になる。夏の月のおぼろに思う恐怖。 ◆人の世の美しさ見よ麦の秋 荒瀬幹夫(68) 富山市 2017・7・10 【評】<金子兜太>初夏の頃、麦は実り熟す。その熟れた黄色の秋のような広がりに、自然のなかに平和に生かされている人の世のうつくしさを思う。 ◆被災者に国の隔てはないものを 近吉三男(101) 石川県白山市 2017・7・11 【評】<いとうせいこ…

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戦後72年 「平和の俳句」 -27-

 7月第一週の「平和の俳句」。7月6日付東京新聞によると、9月の平和の俳句ゲスト選者にテレビ番組「プレバド」などで著名な俳人の夏井いつきさんが決まったようです。一面掲載の紙面に次のようなお知らせ記事が掲載されています。     夏井いつきさんがゲスト選者        9月の平和の俳句   毎朝一面に掲載している「平和の俳句」の九月のゲスト選者に俳人の夏井いつきさん860)が決まりました。レギュラー選者の金子兜太さん(97)、いとうせいこうさん(56)とともに八月上旬に開かれる選考会で、九月に掲載される俳句の選考に当たります。八月初めまでに届く作品が対象になります。  夏井さんは松山市在住。中学校の国語教師を八年間務めた後、俳人に転身。学校での俳句の授業や「俳句甲子園」の創設に携わるなど、俳句の裾野を広げる活動を長年続けてきました。故人が自由に参加できる「俳句集団いつき組」の組長として、結社の枠を超えた俳人の育成にも取り組んでいます。テレビ番組「プレバト!」(TBS系)の俳句コーナーや「NHK俳句」(Eテレ)の選者としても幅広い人気を集めています。  昨年夏に東京都内で開かれた「平和の俳句」のライブ選考会には、金子さん、いとうさんとともに選者として登場。同年秋には「平和の俳句」に連帯するミニ句集「旗」も刊行しました。! ◆政治家よ大志を抱け雲の峰 浅田正史(76) 金沢市 2017・7・2 【評】<金子兜太>現在の国会議員には、政治家でなく、「志」のない政治家が多…

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戦後72年 「平和の俳句」 -26-

 6月最終週の「平和の俳句」。東京新聞は惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ1句を二ヶ月に1回「特集」で紹介しています。今回は瀬口晴義社会部長の推薦句です。   おとうとのその名はずばり良い憲法       井上賀子(73) 埼玉県鴻巣市   12年前に91歳で亡くなった父は、新憲法が施行された昭和22年生まれた弟に「良憲」(よしのり)という名前を付けた。中国大陸、南方戦線で戦い、ビルマ(現ミャンマー)で捕虜になった父。子どもたちに戦地の話をすることはなかったが、弟の名前に込められた平和への思いが伝わったという。   無差別に三月十日の狂気     大村森美(82) 東京都大島町       骨も無き戦死の叔父に初つばめ     下山信行(77) 前橋市 ◆かたつむり優しき国の雨日記 桜沢新太郎(46) 福井市 2017・6・25 【評】<いとうせいこう> 雨日記がいい。そこに日々、何を書き込むのか。ゆっくり行きたい。<金子兜太> 絹のような雨脚の、それこそ平和の国といえるほどの山河が。 ◆この子に空気のような平和あれ 池野武行(72) 愛知県一宮市 2017・6・26 【評】<いとうせいこう>まさに当たり前のように平和があった。それが損なわれ始めている。生きる環境が劣化する。空気のごとく太陽のごとく平和あれ。 ◆級友と行くクスリ持参の旅の宿 山本絹江(71) 石川県内灘町 2017・6・27 【評】…

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戦後72年 「平和の俳句」 -25-

 6月第4週の「平和の俳句」。東京新聞は惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ一句を二ヶ月に一回「特集」で紹介しています。今回は加古陽治文化部長の推薦句です。    積み木積む崩れまた積む平和とは        荒井良明(68) 東京都豊島区    荒井さんは私立高校お元英語教師。今もNPO法人で「自分を深める学習」を推進し、教育に関わっている。その経験から言えるのは、教育と平和には共通点がること。積むー崩れるーまた積む。根気よく何度も何度も繰り返す。そうして手間をかけるから、人も平和も育まれるのだ。 ◆シリア思う吾も爆撃受けし身よ             石川 公子(82) 千葉県船橋市 ◆銃剣道今さら誰の胸を突く                   岩辺 泰史(73) 東京都足立区 ◆落椿胸にドスンと疼くもの 吉沢 功(75) 埼玉県熊谷市 2017・6・18 【評】<いとうせいこう>独特の重さをもって落ちる花。まるで動物のような。尊厳のあるもにの。 <ミムラ>不吉な落椿に人の影が重なり色濃く、熱く、重く迫ってくる。 ◆郷愁と平和が似合うつくしんぼ 小原あつ子(67) 名古屋市名東区 2017・6・19 【評】<金子兜太>春の野面でつくしんぼに出あったときの、古里だなあの気分は、知る人ぞ知る。平和だなあ、と、空を見上げるときの母の顔。 ◆防空壕頭巾の列や無言坂 酒造 智(81) 金沢市 2017・6・20 …

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戦後72年 「平和の俳句」 -24-

 6月第4週の「平和の俳句」。7月掲載分の選考会が13日に開かれたようです。選者はいつものように俳人の金子兜太さん(97)といとうせいこうさん(56)。掲載句は2920通のなかから選んだという。(東京新聞・6月14日)      「共謀罪」リアルに捉え     高校生からの投句目立つ    金子さんは先月、主宰する俳誌「海程」(かいてい)を高齢を理由に来年9月に終刊することを明らかにしたばかり。終刊後は一俳人として句づくりに専念したいと宣言したが、「平和の俳句」の仕事については「自分からは絶対にやめたくない。平和には信念がある」と意欲をみせた。  「海程」の終刊を決意して「自由にものを見ることが出来るようになりました。と今の心境を語った。投句に目を通し、「日本人は例えが下手なんじゃないかな。例え方が少ない、と思いますね」と辛口の言葉でで工夫を呼び掛けた。  今回は高校生の投句が目立った。いとうさんは「『共謀罪』なんか自分たちのこととしてリアルに捉えている。がぜん、若い子だって詠めるんだって幹事になってきました」と喜んだ。 ◆28億年進化し匂ふ蚊や吾や 愛知県江南市 2017・6・11 【評】<金子兜太>そのためには平和でなければ駄目。<いのち>のためには平和。 <ミムラ>”蚊と自分”という小規模単位と、長大な時間の対比がおおらか。 ◆シリアから赤子の泣き声風にのる 東 清隆(61) 三重県明和町 2017・6・13 【評】<金子兜太> シリアが化学兵器を…

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戦後72年 「平和の俳句」 -23-

 6月第2週の「平和の俳句」。今月はレギュラー選者の金子兜さん(97)、いとうせいこうさん(56)に女優のミムラさん(32)がゲスト選者として選考に加わることになりました。以下はミムラさんの感想です。(東京新聞6月1日付)     「平和詠むにも重い情勢」         6月のゲスト選者 ミムラさん    「新聞が好き、新聞を読んでいる人の風情も好き。何かを知ろうとする姿勢のある人はすてき」というミムラさん。「平和を詠むにも思い情勢になってしまいましたね」と漏らしながら、一つ一つの句にうなずいたり、噴き出したりしながら楽しそうに作品を選び抜いた。  1日掲載の児玉阿希美さん(79)の句<うたた寝の夢はドラマの主人公>の選評でも触れたように、常時たくさんのテレビドラマが見られる日本の状況は「先進国でも珍しい」のだという。「国の力n反映でもあり、誇っていいこと」と語る。一方で、女優は「少し国の情勢が変われば、すぐに余波の来る職種。豊かでないと存在しえない職業なんですよね」と厳しく自覚する。   昨今は、世界各地でテロが頻発する。「テロは日常を破壊する行為。ドラマを見ながらあーだこーだ、家族や友人と評をし合う。そんな日常がずっとあるよう願っています」と、言葉に力を込めた。(矢島智子) ◆ぢぢ遊ぼ近所の友はまだ四っつ 山本隆久(87) 東京都大田区 2017・6・4 【評】<ミムラ> 80以上歳の離れた存在を友と呼ぶ目線が爽やかで知的に思う。 <いとうせいこう子供の目には…

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戦後72年 「平和の俳句」 ー22-

 6月第1週の「平和の俳句」。東京新聞は、二カ月に1回、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ句を紹介していますが今回は文化部・矢島智子記者の選んだものを3句取り上げてみました。(4月特集分)     春かぜや壁より窓を求めをり                   岩辺泰史(73) 東京都足立区  吹く風が心地いい季節になった。窓をいっぱいに開け、自由に吹き抜けていく風は何を運んでくれるだろう。岩辺さんは元小学校教諭。米国とメキシコ国境に築かれようとしている壁だけでなく、人々の心の壁が高くなり、子どもたちを育む現場でさえ息苦しくなっている現状を案じている。         わずかなる日向を求め鉢移す                    斉藤敦子(80) 東京都清瀬市    破るるも一途に生きし昭和かな                    竹内さと子(84) 群馬県下仁田町 ◆今年また花見の暦読む平和 米田洋子(85) 金沢市 2017・5・28 【評】<金子兜太>五七五の俳句の正調に収めてもらって、そのリズム感がまことに快い。平和とは、この滑らかさなりと、踊りだしたくなる。 ◆甲羅干す亀は平和の顔をして 岩本和美(76) 愛知県江南市 2017・5・29 【評】<いとうせいこう>目を細めたあの顔。あくびをするあの顔。じっと動かないあの姿。まさに長寿の象徴。そこに尽きぬ春の日が差す。その奥深い幸福。 ◆怨より…

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戦後72年 「平和の俳句」 -21-

 5月最終週の「平和の俳句」。東京新聞は、二カ月に1回、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ句を紹介していますが、今回は文化部・小佐野彗太記者の選んだものを3句取り上げてみました。     入学も卒業式も同じ数               丹羽篁範(86) 東京都国立市  作者は日中戦争が勃発した1937年に小学校に入学。国民学校への改組を挟んで、太平洋戦争終結前の45年3月に卒業した。多くの級友が少年兵に志願し、卒業式には姿を見せなかったという。情緒から遠い「数」という言葉が、この句では一転して平和への強い願いを伝える。     独り逝く銃後の妻に氷雨うつ                 小島幸子(62) 茨城県下妻市     幼少児防空壕でかくれんぼ                      宮田征一(74) 前橋市 ◆新聞をいつまでも読む平和かな 秋元房子(91) 東京都台東区 2017・5・21 【評】<いとうせいこう>91歳の作者は1人倉らし。好きな食事をしたあと、いつまでも新聞を読んでいるという。新聞も正しく、優しく、強くあれかし。 ◆初孫が平和の夢を握って来た 市山道昭(75) 岐阜県関市 2017・5・22 【評】<金子兜太>親の願いが実って、初孫を得た人の喜びあ手にとるように分かる。しかも、そのかわいい握り拳に「平和の夢」を握っているとは。 ◆異国の嫁平和な日本尊びし 松井定子(66) 金沢市 …

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「平和の俳句」 6月分選考会開く

 東京新聞一面に毎日掲載されている「平和の俳句」の選考会が九日、中日東京本社であった。今回は俳人の金子兜太さん(97)と作家のいとうせいこうさん(56)に加え、ゲスト選者として俳優のミムラさん(32)が参加。2412通の中から、6月の誌面に掲載する俳句を決めた。(東京新聞5・10付)      「手書き 思い入れ伝わる」           ゲスト選者にミムラさん   ミムラさんは、はがきの山から一枚ずつ手に取っては丁寧に目を通し、「手書きの文字を見ることって、今はほとんどなくなりましたよね。皆さんの思い入れが伝わってきます」と話した。ユニークな句にぷっと吹き出しながら、楽しそうに句を選んだ。  選考を終えると「食べる、寝るっていう俳句がたくさんあって、おなかがすいてきちゃいました。時期が時期だけに重たい句が多いと思っていましたが、楽しませていただきました」と振り返った。  北朝鮮を巡り緊張の高まりが伝えられたが、いとうさんは「のんびりした句も一つのメッセージになる。民は批評的な目を持って立ち向かっているんだなと感じました」と分析。金子さんは、広島や沖縄を詠んだ句を「これはぜひ摂っておきたい」と言って選んだ。

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戦後72年 「平和の俳句」 ー20-

 5月第3週に入った「平和の俳句」。東京新聞は、二カ月に1回、惜しくも選に漏れた作品の中から、事務局の記者が選んだ句を紹介していますが、今回は瀬口晴義社会部長の選んだものを3句を取り上げてみました。(同紙4・18付)     逝った春被爆二世の友偲ぶ                   川本一雄(61) 横浜市瀬谷区  昭和48年、高校生の時、同級生を白血病で失った。桜が散る季節に弔辞を読んだ。母親が長崎で被爆し、自分のせいで息子が亡くなったと自らを責めた。卒業後の同窓生で教師からそう聞いた。以来、春を許せないという気持ちがある。友の名は立花慶造という。    マニラ沖百四十海里兄ねむる                   最上智恵子(78) 東京都日野市    傷病死哀れ五万余凍土に                   大嶌 一也(87) 東京都練馬区           ◆いつまでも子らのしりとり続きますように 綿貫一男(65) 千葉県山武市 2017・5・14 【評】<金子兜太>娘たちの名は、ふみ・みさ式に「しりとり」。これが平和の証し。 <いとうせいこう>他愛もない遊びだけれど、子供たちが言葉をつなげる。そこに永遠平和か。 ◆典型(そのひと)は宮沢賢治平和人 森 孝行(74) 愛知県一宮市 2017・5・15 【評】<金子兜太>作者は宮いておs沢賢治を「体全体」で平和を現している(体現している)人として敬愛している。そして「平…

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戦後72年 「平和の俳句」 ー19-

 5月第2週の「平和の俳句」。東京新聞は、二カ月に1回、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ俳句を紹介しています。今回は瀬口晴義社会部長の選んだものを3句取り上げてみました。(同紙4・18付)     逝った春被爆二世の友偲ぶ         川本一雄(61) 横浜市瀬谷区    昭和48年、高校生の時、同級生を白血病で失った。桜が散る季節に弔辞を読んだ。母親が長崎で被爆し、自分のせいで息子が亡くなったと自らを責めた。卒業後の同窓会で教師からそう聞いた。以来、春を許せないという気持ちがある。友の名は立花慶造という。     マニラ沖百四十海里兄ねむる                   最上智恵子(78) 東京都日野市           大津波襲いし土手につくしんぼ                   新倉泰雄(65) 神奈川県横須賀市 ◆空襲のなき大空に家族鯉 駒田博之(81) 津市 2017・5・7 【評】<いとうせいこう>鯉のぼりと言わず。「家族鯉」と言ったおころに妙味。ゆえに空襲なき空で風に吹かれてほしくなる。親鯉も子鯉も曽祖父母もみな。 ◆鍼治療受けつつ平和談義かな 斎藤佳彦(74) 浜松市北区 2017・5・9 【評】<いとうせいこう>打つほうも打たれるほうも平和を語っている。理想を語り、日常を語っている。体の不調を語り、あるべき社会を語る。貴重な時間。 ◆忘れない三月十日われ卆寿 坂田愛子(90) 金…

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戦後72年 「平和の俳句」 -18-

 5月第一週の「平和の俳句」です。東京新聞は、二カ月に1回、惜しくも選に漏れた作品の中から事務局の記者が選んだ俳句を紹介していますが、今回は加古陽治文化部長の選んだものを3句取り上げてみました。(同紙4・18付)   巣鴨より戻りて父の日向(ひなた)ぼこ                         谷元央人(73) 横浜市南区    内務省の書記官だった父は戦時中、旧満州の軍隊ひ派遣されていた。北京語が達者で、通訳として軍の戦争犯罪に立ち会ったため戦犯に問われ、巣鴨プリズンに収監されたという。釈放後も当時のことはほとんど語らなかった父。日向にぶごんでたたずむ姿に戦争の悲しみが凝縮している。   戦争で散ったさくらはアトリエで                 坂本幸子(85) 東京都世田谷区   日輪にいつもころころ歩いてく                    吉田吏希(18) 東京都府中市 ◆牛歩でもいいさ平和への歩み 小林 功(57) 千葉県船橋市 017・4・30 【評】<金子兜太>ゆっくりでもよい。後ずさらなければそれでいい。平和に向かって、しっかり歩いてゆこう。焦るのは負けです。粘り強くゆこう。 ◆和菓子屋もパン屋も平和のためにある 阪口 恵(32) 三重県松坂市 2017・5・1 【評】<いとうせいこう>道徳の教科書を差し替えるという。「忖度」。第二次大戦に向った日本社会の馬鹿げた反復。和菓子屋もパン屋も平和の姿なのに。 …

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戦後72年 「平和の俳句」 -17-

 「平和の俳句」シリーズ4月の最終週。東京新聞は一面で毎日掲載している「平和の俳句」の5月掲載分の選考会をさる4月12日、東京本社で開いた。俳人の金子兜太さん(97)と作家のいとうせいこうさん(57)が、2001通の中から掲載句を選んだ。      人物詠みこみ 足跡たどる    お花見をはじめ、春の風物に平和を見い出す句が目立った。金子さんは、世界全体の幸福を願った宮沢賢治や、終戦後に闇米を拒否して栄養失調で亡くなった山口良忠判事ら、人物を詠み込んだ句にも注目。「(足跡を)知っておけば一歩一歩、平和に前進できるという人たちの事例を掘り出している」と感心していた。いとうさんは「日本に戦争はないと言うけれど、中東のシリアにはある。ネットのニュースがきっかけでも「こんなこと良くない」と思ったら、俳句にして送ってもらえれば」と話し、若い世代の投句に期待した。金子さんも「同感だ」と応じた。  5月に開く6月掲載分の選考会には、NHKラジオ第二「高校講座 国語総合」の司会進行を務める俳優のミムラさん(32)が、ゲスト選者として惨禍する。 ◆沖縄の兄を忘れる日が欲しい 河村清徳(82) 愛知県津島市 2017・4・23 【評】<金子兜太>兄は、23歳の若さで許婚者を残して沖縄戦で戦死した。その痛恨。だから沖縄への米軍基地集中を許すことができないのだ。しんの平和を。 ◆どうしてだあん畜生と春惜しむ 桜沢新太郎(46) 福井市 2017・4・24 【評】<いとうせいこう>いろん…

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戦後72年 「平和の俳句」 -16-

 シリーズ「平和の俳句」の4月第4週。6月のゲスト選者に当たる埼玉県出身の俳優。テレビ、映画、舞台に幅広く活躍するミムラさん(32)が、その感想を東京新聞によせています。      十七音とても楽しみ ミムラ  役者をやっていると、台本の中の言葉に対し、いろいろなことを考えます。  特に難しいと感じるのは、長い台詞(せりふ)ではなく、短い台詞や行間の芝居です。削(そ)ぎ落とした後に残るものは、俳句の表現と似ているのではないかと思います。皆さまのしたためた十七音にお目にかかる日を、今から楽しみにしております! ◆初夢や全核廃棄記念の日 上村篤彦(64) 岐阜県郡上市 2017・4・16 【評】<金子兜太>20××年3月11日、国会で議決。原発廃炉、世界の核兵器廃絶。いつかそんな日が来るのを夢見る作者。私もだ。 ◆戦争を知っているからがんばるわ 武久孝子(80) 東京都北区 2017・4・17 【評】<いとうせいこう>だからこそ人に伝えたい。活動をしたいと過去に後押しされるのだ。 <金子兜太>学童疎開など、知っている限り戦争の苦労を伝えたい。率直な80代。 ◆一年を通し午睡をとる平和 岩倉幹郎(75) 石川県小松市 2017・4・18 【評】<金子兜太>一年を通じて午睡(昼寝)を怠ることはない。冬でも昼寝をしている。穏やかな空気がわんどのが家にあり、三度の飯を旨くしてくれる。 ◆鰊来るいとも平和の美しさ 青木 計(82) 埼玉県羽生市 2…

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戦後72年 「平和の俳句」 -15-

 ブログ「満洲っ子 平和をうたう」がお送りしている東京新聞が一面に掲載している「平和の俳句」。今回は4月の第3週になります。同紙4月11日のお知らせによると6月のゲスト選者が決まったようです。     ゲスト選者にツムラさん     6月の「平和の俳句」     毎朝一面に掲載している「平和の俳句」の6月のゲスト選者に俳優のミムラさん(33)が決まりました。レギュラー選者の金子兜太sん(97)、いとうせいこうさん(56)とともに、5月上旬に開催される選考会で、6月に掲載する俳句の選考に当たります。5月一までに届く作品が対象になります。  ミムラさんは埼玉県出身。2003年にドラマ「ビギナー」で主演デビュー。テレビ、映画、舞台などで幅広く活躍しています。自宅のほかに書庫用の部屋を借りるほどの読書家で、絵本や漫画も含めて多いときには月200冊を読むそうです。著書に「ミムラの絵本日和」「文集」などがあります。今春あらNHKラジオ第二「高校講座 国語総合」の司会進行を務めています。 ◆聞いてみよう悲しい声と笑いの声を 吉橋価生(12) 愛知県豊田市 2017・4・9 【評】<いとうせいこう> 小いて笑い六からの一句。お年寄りに昔話を聞いて悲しみが伝わってきたのだという。そして笑いがいかに大切かを知った。それを素直に。 ◆平和とはバカやれること泣けること 玉井美琴(12) 愛知県豊田市 2017・4・11 【評】<金子兜太>12歳の玉井さんは、なかなか大人です。本当…

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戦後72年 「平和の俳句」 -14-

 「平和の俳句」4月の第2週。3月15日に開かれた4月の選考会には、選者の金子兜太さん(97)が体調不良のため欠席。いとうせいこうさん(55)一人で選句したという。後日改めて選考する、としているがその後の沙汰がない。どうしたのだろう。 ■募集しています(東京新聞)    「平和の俳句」への投稿を募集しています、はがきの裏面に1句を記入。同じ面に住所、氏名(振りか仮へ。仮名)、電話番号、年齢、職業を明記し、〒100 8525 東京新聞文化部「英和の俳句」係へ。投稿は未発表の自作の句に限り、季語のない句も受け付けます。ペンネーム不可。よろしければ背景にある体験、込めた思いなどをお書き添えください。 【追記】「季語のない句も受けつけます」というのは俳句作成の初心者にとってはありがたい。そのうえ「平和」(へいわ)という2文字、3音は、これだけ頻繁に使われている状況では、もう季語として扱ってもいいという。 ◆ママもいてパパとあそべるにちようび 新井 力(73) 東京都板橋区 2017・4・2 【評】<金子兜太>73歳の作者は父の顔を知らない。線しか。寂しかっただろう。こんな日があればと願っているんおだ。本日は4月最初の日曜日。 ◆目先で銃禍打ち消す寒い朝 沖野竜太(48) 神戸市東灘区 2017・4・3 【評】<いとうせいこう>戦闘があったかなかったか、報告をもみ消してしまうシビリアンコントロールの恐ろしさ。かえって文民が罪の意識を理解しない。 ◆平和って瞳…

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戦後72年 「平和の俳句」 -13-

 「平和の俳句」4月の第1週。米軍の爆撃で、一夜にして10万人が亡くなった東京大空襲。3月10日、東京新聞 は、「大空襲を読み継ぐ」と題して、空襲体験者の思いを紹介した。これは東京・中央区の赤羽布美子さんの一句。    弥生なりみる夢いつも空赤く                   赤羽布美子(79)    3月になると、火の手から逃げながら見た真っ赤な空が脳裏に強くよみがえる。赤羽布美子さん(79)=東京都中央区=は空襲当時、国民学校の2年生だった。  空襲警報が鳴って両親に起こされ、二つ上の兄と越前掘(現中央区新川)の自宅そばの防空壕に入った。ぎゅうぎゅう詰めの壕内に「ヒュルヒュルヒュルー」と焼夷弾が落ちる音が響く。「逃げろ」という大人の声がして慌てて外に出た。  目にしたのは、地面のあちこちに突き刺さる焼夷弾。自宅も燃え始めていた。近所で消火に当たっていた両親の姿は見えず、兄と一緒に離れた川沿いの防空壕に向かった。  中に入って30分だったか1時間だったか。名前を呼ぶ母の声が聞こえた。防空壕を出て、両親と兄と4人で火と煙の中、神社を目指して逃げた。振り返るたびに、真っ赤な染まった空が目に飛び込んできた。数日後、戻った自宅は跡形もなかった。  「両親ともう会えないかもしれないと思いながら、防空壕で待っていた時の切なさは忘れられない。あの時代に二度と戻らないでほしい」(北爪三記) ◆この平和歯は無けれども噛みしめる 磯貝 正(86) 愛知県碧南市 2017・3.26…

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