「永井和子」 関連ブログ 一覧

 永井和子 1934年6月21日、大阪に生まれる。今日は生誕85年。沖縄に生涯かけて心を寄せ、詩い続けた詩人にとって今もまだ苦渋のなかにある「沖縄」をなんと思うだろうか。ブログ「満州っ子 平和をうたう」がアップしてきた集大成を。以下ご紹介する。         <アクセス ベスト10> ①641 遠藤今希さん いま何処に ②357 沈丁香の花と岡田京子さん ③328 俺は「民老」を作るんだ ④227 これが沖縄だ! 永井和子 ⑤221 10年目に建った 母子像 ⑥189 「あなたが祈るもの」 沖縄で ⑦178 東京大空襲と沈丁香の花 ⑧170 永井和子「詩碑」 沖縄に建立 ⑨162 詩集 戦争の中の馬たち ⑩161 基地問題の「深層」伝える一冊 嬉野京子 ⑪156 人間を返せ 大空襲3部作 ⑫144 沖縄詩集・抄 いまもその島は 【注】テーマ「永井和子のページ数は288.総アクセス数は12426を数えます。なお、写真は札幌で開かれた「朗読&コンサート」で朗読する永井和子。   https://38300902.at.webry.info/theme/dbf8344588.html

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 ー35-

 詩人 永井和子(1934~2015)年の処女詩集。かつて暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に火山だ。全55篇からなる詩集だが、日々を追って、お手元に届けたい。        あ る 日    ごはんにまじった砂粒を  がじっと噛んだ朝のように  あなたの言葉が奥歯に  がじがじなる日がある。  砂嵐の吹く砂漠に  一人おかれた旅人のように  あなたのそぶりが心に  荒く吹きあたる日がある              64・9・15

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -34-

 詩人 永井和子(1934~2015)年の処女詩集。かつて暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが、日々を追ってお手元に届けたい。       夏の終わり    うす絹のような風が  むきだしの腕を吹いて過ぎる  焔のようなカンナの花は  うらぶれた夏の終り  油ぜみもみんみんぜみも去ってしまって  追われるような一日を  鳴きつくしているひぐらし  青銀のとんぼがあんなに高く  梢をかうめていく  かすかな羽音のsとに秋がゆれていた  うす絹の風もいつか  ばったりと重く冷えて・・・・・・もうひぐれ                  64・9・8

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -33-

 詩人 永井和子(1934~2015)年の処女詩集。かつて暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが、日々を追ってお手元に届けたい。         二段ベッドのこと    ガソリンを入れて  オイルをいれて  東京ー大阪間わずか三十秒で走る二階バス  でこぼこ道を大ゆれに走り  石炭もたけば空へもとぶ  ふしぎな夢の自動車  静かな眠りのために  買ってやった二段ベッドだったのに  子供たちの激しい運転に  傷だらけのオンボロバスになってしまった                   64・8・6

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今日5月15日 沖縄「本土復帰」47年

 沖縄県は15日、本土復帰から47年(1972年5月15日)になる。思い出すのは、かつて「沖縄返還同盟」に属し、その運動に身を投じ活動し続けた、詩人の永井和子が書いた一篇の詩だ。「いまもその島」は、2019年の今見てもリアルに迫ってくる。

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -31-

 詩人 永井和子(1934~2015)年の処女詩集。かつて暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが、日を追ってお手元に届けたい。      言  葉  さっきからずっと  話しつづけていたような気で  わたしが十番目の言葉だけを投げると  夫は物足りないという  わたしがいい残した一から九までの言葉を  すっかりききたいという  それでわたしはやっと  わたしたちの会話がとぎれていたことに気づく                64・7・15  

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -30-

 詩人 永井和子(1934~2015)年の処女詩集。かって暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが日を追ってお手元に届けたい。      梅雨の晴れ間に    ひとときの晴れ間に  雨がさあっと遠のいていくと  家々の窓が 戸が 開け放たれる  子供たちの笑い声が  その窓から 戸から とび出してくる  子供たちはまるで雀だ  ひさしのかげに雨をよけて  しんとひそんでいたのが  わずかな青空でもみつけると  いっせいにはばたいてとんでくる  子供たいはまるで雀だ  まだびしょぬれている土の上を  滴のしたたるすずかけの枝の間を  泥をはねながらとびまわっている  子供たちは  もう夏の歌をうたっている気の早い雀だ

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -29-

 詩人 永井和子(1934~2019)年の処女詩集。かつて暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが日を追ってお手元に届けたい。       梅雨冷え   雨がいっときやんだので  雀が物干しに遊びにきた  わたしの眼が笑うと  雀が首をかしげる  声をかけようかと思うまに  つい と とんでいってしまった。  あとには  さっさっと吹きなびく  梅雨冷えの青葉ばかり

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -28-

 詩人 永井和子(1934~2015年)の処女詩集。かつて私と暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた様々な出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが日を追ってお手元に届けたい。        誕 生 日     誰もいってくれないから  そっと自分でいってみる  「今日はママの誕生日」  だけど花はかざらなかった  だけどケーキは作らなかった  熱を出して寝ている息子  遊べないお兄ちゃんに焦(じ)れている娘  顔を曇らせている夫  みんな花を忘れていた  みんなケーキを忘れていた  三十回目の誕生日  なにか気が咎めるようで  そっと一人でいってみる  「消えてしまった誕生日」            64・6・21

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あれから74年 東京大空襲と永井和子

 1945(昭和20)年3月10日の東京大空襲。目の前で母と妹を焼かれた橋本代志子さんの痛恨の思いをうたった歌。1970年代の「江東の空襲慰霊碑を創る会」の運動のなかで、詩人の永井和子(故人)が彼女に贈った「沈丁花の花といもうと」。初演は横井久美子さん。 ■沈丁花   巡る季節を香りで知らせてくれる。春がくると、忘れないでこの地に必ず寄り添って咲いてくれる、清楚な白い花。

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -27-

 詩人 永井和子(ながいかずこ=1934~2015)年の処女詩集。かって私と暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた様々な出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが日を追ってお手元に届けたい。       かりにある人に答えて    ある日 ある人が尋ねてきた  あなたはどんな人なのか・・・・・・と  わたしは答えたこんなふうに  わたしは妻 一人の女  五つと三つの児らの母  いいえこれでは  わたしも ほかの女の人と同じこと  いいえわたしはうたうもの  小さな詩(うた)をうたうもの  室咲きのばらや 星の謎や  言葉のパズルや遊びでなく  野草の白い花たちを  ぐつぐつ煮える鍋の音を  泥んこの子らの笑い声を  小さな声でうたうもの    それでもやっぱり わたしは妻  そして母  一人の女・・・・・・         64・6・2

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -26-

 詩人 永井和子(ながい・かずこ=1934~2015年)の処女詩集。かつて私と暮らしをともにしたなかで、身辺に起きた様々な出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集だが日を追ってお手元に届けたい。       わが家のお酒    おととしの梅酒は  とろりと粘っこい黄玉色(トパーズ)  去年の梅酒は  子供のころ噛んだ松脂の色  夏みかんのお酒は  煮つめた秋の色  プラムのお酒は  ガーゼで濾したお陽さまの色  今年はじめて造った苺のお酒は  もえる夕焼け雲  みんなわが家の宝物です                64・5・18

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詩集 「ロ号33番」 永井和子 -25-

 詩人 永井和子(ながい・かずこ=1934~2015年)の処女詩集。かつて私と暮らしをともにした彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる詩集.だが日を追ってお手元に届けたい。なお、本書の「あとがき」を掲載した。        ぎ ょ う ざ   ゆでたキャベツを刻んでよくしぼり  玉葱のみじん切りに豚の挽肉 片栗粉少し  あれば椎茸もいれ 塩 こしょうし  蒜は刻むと頭が痛くなるので  代わりにガーリックをたっうりふりかけ  まぜあわせのた具をぎょうざの皮に包む  ここまではお料理の本と同じ  でもわたしは  挽肉やキャベツのほかにもっといろんなものを包む  いまごろ汗だくになっているにちがいない  夫の背中だとか  上手に焼いたぎようざを嬉しそうに見るときの顔だとか  いつかこんなことをいってたっけとか  あんなことも  こんなことも  こみあげてくる笑いといっしょに包みこむ  だから 今日のぎょうざは特別おいしい と  いつも夫はいうのです                64・5・26

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詩集 ロ号33番 永井和子 -24-

 詩人永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺におきた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇から成る長編だが順次お手元に届けたい。         白丁花(清澄庭園にて)    「植木屋さん  あの花はなんという名前ですか?  ほらあの小さな白い花  紙ふぶきをまいたように見える花」  植木屋さんは  わざわざきゃたつを降りて  木の蔭にしゃがみこみました  「ああこりゃ白丁花ですよ」  こともなげにその名を教えてくれました  小さな花の白丁花  その日から  わたしの無口な友達が一人ふえました               64・5・18

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詩集 ロ号33番 永井和子 -23-

 詩人永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺におきた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55篇からなる長編だが順次お手元に届けたい。         友  達  新しくできた友達を  毎日夢中で追いかけている息子  ひたむきなその心は  やがて冷たくされ 背かれ  はてはあざむかれ  いくどもいくども血みどろに傷ついて  なくことだろう  そのときわたしは肩を抱いて  こういってやろう  おまえのかあさんもそうだったのよ と  そしてこんなに強くなったのよ と              64・5・13

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詩集 ロ号33番 永井和子 -22-

詩人永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺におきた細々とした出来事を詩に刻んだ。前55篇からなる長編だが順次お手元に届けたい。             初めてのプレゼント       初めてもらった母の日のプレゼント  赤い造花のカーネーション  どこかのお菓子屋のおばさんが  ”お母さんのお花よ”  とでもいってくれたのだろうか  ”ママにおみやげよ”という  母の日という言葉もまだ知らない  小さな息子からの  初めてのプレゼント                64・5・11                   

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詩集 ロ号33番 永井和子 -21-

 詩人永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全55編からなる長編だが順次お手元に届けたい。   椿  植木鉢の小さな椿が  今年も少し背のびをした  せいいっぱい両手をひろげた  萌えでた新芽は  五月の光のような碧いろ  風が笑っていた            64・5・9            たそがれの空に     あおむいて見あげたあたりから  地平線へむかって  少しずつ・・・・・・目立たないぐらい少しずつ  色を変えていく空がある  そして地平線は光のまじった灰色  そこにはもう梅雨がきている  風は  萌えひろがった若葉の匂いでいっぱいなのに  昔 書いたお伽話   梅雨晴れの   空の青さにこがれた娘が   ある日   空の青みに身を投げた・・・・・・  その梅雨晴れの美しい季節が  またかえってくる  娘はもういないのに・・・・・・             64・5・9>

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詩集 ロ号33番 永井和子 -20-

詩人 永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目でつづった詩集。前55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。      我が家の笑い   ふとんからとびだし  おへそをだして  みごとな寝相の子供たちをみて  天下泰平だな と  夫は笑う  なげだされた小さな桃色の手に  わが家の平和がある  ふとんのはじからのぞいている  汚れたひざこぞうに  わが家の笑いがある               64・5・1

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詩集 ロ号33番 永井和子 -20-

 詩人 永井和子(1934=2015)年 彼女の処女詩集、日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目でつづった詩集。全55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。       考える時間    ねながる見る夜の空は  ふしぎに明るいねずみ色で  やわらかにわたしの心にしみてくる  子供たちも夫も寝入って  ふとんのなかで  わたしの考える時間がはじまる  たくさんの言葉が頭のなかで  ふうせんのように浮かんだりはじけたりする  そしてなかでも  いちばん美しい言葉に乗って  わたしは夢のなかへ入っていく           64・4・25

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詩集 ロ号33番 永井和子 -19-

 詩人 永井和(1934~2015)年 彼女の処女詩集。日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目でつづった詩集。全55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。     わたしの一日と一年    朝 六時半に起きる  八時 夫に弁当を持たせて送りだす  それから天気の良い日には洗濯をする  昼から買い物にいく  雨の日には本を読み  縫い物などをする  春になるとせっせと流しをみがく  夏の暑いさかりには一日荒いものをする  夕方子供を行水にいれる  秋の夜は  熱いお茶をのみながら  ファツションブックをひらいてみる  冬は寒いーー  わたしはただこたつにちじこまって  一日 編み物をしている  ときどき ぽかあんとあいた時間には  新しい詩(うた)などもうたってみる         64・4・4  

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詩集 ロ号33番 永井和子 -17-

 詩人 永井和子(1934~2015)年 彼女の処女詩集。日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目線でつづった詩集。全55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。       あ み 針    わたしの手のなかには  いつもあみ針がある  こぼれ落ちていく時間をあみとめようと  一つのあみ目から次のあみ目へ  いつも忙しく動いているあみ針がある  手を休めるのが怖い  ふっとむなしい時間のなかで  自分の心をのぞくのが怖い  あみ針の目からこぼれていった  日々をふりかえるのが怖い  だから今日も  わたしの手のなかにはあみ針がある  ただ忙しく動いているあみ針がある               64・3・31 

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詩集 ロ号33番 永井和子 -16-

 詩人永井和子(1934~2015)年 彼女の処女詩集。日常の暮らしの中で起きた様々な出来事を、主婦の目線でつづった詩集。全55篇からなる長編だが順次お手元にお届けしたい。       清洲橋は今日も   はればれと頭をそらせて  清洲橋は今日も空をみあげている  まるい青いのどに  無限のふかみをのみこもうと  空にむかって胸をはる  南の風が強い日  清洲橋は両腕を大きくふりながら  走っていく風をつかまえようとする  でも ひぐれ 風がないで  すみれ色の夜が静かに降りてくると  清洲橋はうなだれて  濁った隅田川の水をみつめる  みどり色の橋灯が  淋しいその心のようにともる  それでも清洲橋は  その頭をしっかりと空にふりかざしている    【注】橋は自宅から歩いて、10分ほどのところにある。散歩コースだった。

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詩集 ロ号33番 永井和子 -15-

 詩人 永井和子(1934~2015)年 彼女の処女詩集。周辺に起きた細々とした出来事を詩にうたいあげてつうった。前55篇からなる長編だが、順次お手元に届けたい。  バスケット  小さなバスケットが二つ  空色と赤と  子供たちは眼を輝やかせて  わたしの手もとをみつめている  この中にお弁当やお菓子をいれて  遊びにいこうね  そんなわたしの言葉を半分もきかず  四つの足がおどりだす  少し軽くなった財布をしまいながら  わたしも笑ってしまう  空色と赤と  かわいい二つのバスケット  帰りには春をいっぱいつめてこよう             64・3・19

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詩集 ロ号33番 永井和子 -14-

 詩人 永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。周辺に起きた細々とした出来事を詩にうたいあげてつづった。全55篇からなる長編だが、順次お手元に届けたい。       ひぐれの清洲橋   空の青さが少しじつうすれていく頃  清洲橋に灯がともる  通りかかったバスの中で  一人の少年がふと呟やいた  ”きれいだね”と  その小さな呟やきは誰にも気づかれず  走りすぎるバスの窓からこぼれ落ち  川風に吹かれてどこかへ消えていった  朝になれば消えてしまう  清洲橋の灯のように              64・3・16 【注】イラストは吉村勲二さんが描いたものです。

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「沈丁香の花咲けば」 思い出す 永井和子

 7月8日は詩人・永井和子(1934~2015)の命日。慶応大学卒業後、外つ国に虐げられ、祖国日本には見放されてきた沖縄に心を寄せて60年。はたまた東京大空襲の惨禍を告発し、詩につづってきた詩人。主著に「ロ号33番」「沖縄」「憲法を詩(うた)う」「歌ってよわたしの詩たち」「石碑の誓」など多数。

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詩集 ロ号33番 永井和子 -13-

 詩人 永井和子(1934~2015)年。彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。全56篇からなる長編詩だが、順次お手元に届けたい。       石(清澄庭園にて) 芝生の上に のびのび寝そべっている石がある 陰気に 自分の足もとをみつめている石がある 春の陽だまりを 楽しんでいる石がある 背中に水鳥をのせて くすぐったがっている石がある なにかに腹をたてている石がある 黙って行儀よく並んでいる石がある つんと澄まして空を見ている石がある 一人でゲラゲラ笑っている石がある いろんな顔をした いろんな石がある             64・3・16

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詩集 ロ号33番 永井和子 -12-

 詩人 永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩にうたいあげてつづった。全55編からなる長編だが、順次お手元に届けたい。     岡田の伯父 岡田の伯父は 結婚してすぐ台湾へ渡った。 総督府で五年 佐藤きびばかり育てていた 引揚げて帰った郷里の中学で 生物の教師になった 釣りのえさのみみずを自分で飼った 小さなわたしがひっきりなしに 持ちこむ「?」に 大きな辞典をくりながら いやな顔もせず答えてくれた その伯父の家から今日電報がきた 「チチシス」と 追いかけるように届いた手紙には 亡くなる前の夜まで 生徒の答案を見ていた と 書いてあった           64・3・8

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詩集 ロ号33番 永井和子 -11-

 詩人 永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩に刻んだ。。全56編からなる長編だが、順次お手元に届けたい。    成  長 甘えてすりよってくる手をにぎってやれば しっかりと 自分の力でにぎりかえしてくる もう すっかり赤ん坊ではない わたしの娘 いたずらを叱れば ”いゃっ いゃつ”と声をあげて泣く その感情と意思をどこでみつけてきたのか もうなにもかも赤ん坊でない わたしの娘                  64・3・4

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詩集 ロ号33番 永井和子 -10-

 詩人 永井和子(1934~2015)年 彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩にうたいあげてつづった。全55編からなる長編だが、順次手元に届けたい。      春は土の中から    太陽がゆっくり西の方へ歩いている  すこしずつ冷たくなりはじめたひざしを  裸木の梢が残り惜しげにうけとめている  こぼれ陽を拾い集めるように  ボールにたわむれている子供たち  柾木の新芽はまだ眠っているけれど  春は 土の中から  ほら もう匂いたっている                         64・2・3 

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詩集 ロ号33番 永井和子 -9-

 詩人 永井和子(1934~2015)年、彼女の処女詩集。身辺に起きた細々とした出来事を詩にうたいあげてつづった。全55編からなる長編だが、順次手元に届けたい。 ■た こ  秋の日がいっぱいの屋上で  男の子たちが凧をあげている  いちめん  巻毛のよな雲に包まれた空に  真赤な凧がのぼっていく  ゆらゆら頭をふりながら  胸を張るようにしてのぼっていく  おうい凧よ  どんなにかいい気持ちだろう  わたしもおまえのように  空へのぼっていきたいよ         63・9・18

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