満州っ子 平和をうたう

アクセスカウンタ

zoom RSS 「戦後70年と私」 岡山から 則次美弥子さん

<<   作成日時 : 2016/12/28 06:12   >>

ナイス ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

 「お目にかかったのも束の間、あっという間にお姿が見えなくなってびっくりしました。その後、如何がお過ごしですか? 体調は? 食事は? と案じています。気力は大事、でも食べることが一番です。少しでも身につくものをバランス良く取って下さいね」。

画像
 先だってこんな書き出しの手紙が舞い込みました。満州公主嶺小学校の2級上で、岡山市在住の則次美弥子さんからの気遣いあふれるレターです。
 則次さんは、姉の神島教子(かみしま・のりこ)と同期で、旧姓は芦田美弥子といい才色兼備、当時下級の男の子からは憧れの的でした。
 その則次さんとの久しぶりの出会いがありました。さる10月25日上野のターミナルホテルで開かれた「公主嶺会」(同窓会)でのこと、たまたま席が隣り合わせとあって、満洲でのことなどに話が盛り上がりました。
 ところが、急に気分が悪くなって、挨拶もせず帰宅した僕の、その後を案じての書き出しだったのです。
 お便りの結びはこうです。「10月28日発刊の『岡山と中国』の会報に拙文が載っていますので読んでください」と。


画像
戦後70年と私(「岡山と中国」)   

   伝えておきたい身の凍る思い
  恩讐を越え平和の雲に乗らん


                則 次 美弥子

女狩りと、父の釈放と青酸カリ、この三つを語らずして私の戦後はない
 
 満洲・公主嶺に敗戦後最初に来たのは、ソ連の囚人部隊だった。横暴を極めた行動に、敗戦とは斯くも無残なものだと思い知らされた。街を徘徊しては、「ダワイダワイ」と腕時計を奪い、家に来てはミシンや蓄音機の類を持ち去った。そのころはまだよかった。やがて女に危害を加え始めた。
 私はすでに五部刈りの男装、顔には煤を塗っていた。異常の時は床下に潜り込み家人は他に逃げた。家の中には誰も居ないのに銃を連発する。又やって来る。無人を確かめても銃を放し、さらに畳一枚を上げ床下を剥ぎ懐中電灯で照らし始めた。
 父が死角を選んでくれた場所で息を殺していた、その時の身の凍る思いは死んでも忘れない。こんな事が何回あったことか。
 友人の父上は、逃した娘を出せと銃で連打され軍靴で蹴られ、それが元でなくなった。


画像
 後々知ったことだが「三日間勝手たるべし」と上層部からの話があったと聞く。その三日間は、とてつもなく長くまさに地獄だった。
 その後、ソ連の正規軍が入り正式交渉が始まり好転の兆しが見えてきた。
 だが、中国の八路軍と国府軍の内戦で勝ち組の政権下に何度も揺れ動いた。ある時、特志看護婦の派遣を要請してきた。日本人民会の幹部達はその対処に、苦悩と決断は如何ばかりであったことか。それに加えて現地人の大地主は土地を没収されていると風評が流れてきた。
 やがて矛先は日本人に向った。Aさんは監禁後帰宅しない。Bさんは留置後帰宅、Cさんはすでに逃亡、等々。
 ある日、T商会の社長が明日は危ないと囁かれるようになった。父は友人を見送ると言って家を出た。公主嶺神社の広場で群衆の前で露と消えた。合掌。

画像 
 そんな戦々恐々とした毎日だった。
 突然、我家に数人の兵士が来た。事務室での対応はミシンを借りたいという。それはすでに無い。「假話没有(嘘はついてない)」の言葉を最期に父は連行された。
 当時の状況から私達残された者は恐怖に戦いた。誰も何も言わない。時計の音だけがやけに響いた。どれ程時が経ったのか、父がふらっと帰って来た。家族5人は抱き合い無事を確かめ合った。固い顔で声にならない喜びに満たされた。
 後日知ったのは、苦力頭(人夫頭)を始め仕事仲間や近所の満洲人達が釈放に奔走してくれたという。この人は嘘を言う人ではないと弁明してくれたという。何と有り難いことか。


画像
 土建業の父が、現場で満洲人とどんな接触があったのか誰も知らない。父を助けてくれた人達に、この紙面を借りて深く感謝しお礼を申し上げます。
 引揚げに先立ち日本人墓地大法要が21年6月に営まれた。日本人会長の最後の言葉は、
 「明治39年以後無量弐萬ノ霊骨ヲ遺シテ故郷ニ追ハル。又何時来タリテ諸氏ヘノ霊ヲ慰メン。何ノ顔アリテ諸氏ニ訣レ、何ノ辞ヲ以ッテ故山ニ帰ラン。叮壱萬ノ英霊安ラカニ瞑レ。再ビ平和ノ霊ニ乗リ諸氏ト相見ユルノ機アルベシヲ祈ル」
 私もまた然り。恩讐を越え平和の雲に乗らんと切に思う。

 
 この原稿は、満州(現中国東北部)からの引揚者である則次美弥子さん(85歳、岡山市在住)が、岡山市大元公民館で講話されたものを、要約版として投稿いただいたものです

画像
写真説明】上から@則次美弥子さんA公民館で講話するB公主嶺近郊マップC公主嶺神社D日本人墓地
画像

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
ナイス ナイス

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
「戦後70年と私」 岡山から 則次美弥子さん 満州っ子 平和をうたう/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる