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zoom RSS 「雲流るる果てに」−34−

<<   作成日時 : 2010/05/12 05:02   >>

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古河敬生 [ふるかわ・のりお] 桐生高工ー滋賀県出身ー昭和20年4月21日、〇戦搭乗、特攻隊直援機として戦果確認帰投中、出水市桂島上空で敵機と交戦中戦死。25歳。(「雲流るる果てに」186〜188頁)

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   妻への手紙
 
 大君の為に、死中にに飛び込む小生の身として、現在如何なる事が君にしてやれるだらうか。君が面会に来てくれた時、君の御両親に対し、君に対し俺は心中では頭を下げて感謝してゐる。然し、それを果して如何なる態度で表現したらよいだろうか、俺は無言の中に君に感受して貰ひたかった。難しい要求であったかも知れない。

 だが、軍人にはそれが必要なのだ。冷たく見えるかも知れない。つれなく見えるかも知れない。然し、之を乗り越えねばならない。俺は死を通り抜けて来ねばならないのだ。君も或は君にとって死以上のものを踏越えて来なければならぬのだ。将来を予測する事は出来ぬが、現在を一歩々々正しく踏みつけてゆく事は出来る筈、そこに生ずる邪念を払ふこそ修養であらう。

 俺はパイロットとして猛訓練をうけている。訓練は絶えず死の危険を伴ふ作業である。心に悩み心配のある者に限って事故を起すと云ふ。清明な一点の曇もなき心にて、訓練に従事したい。

                             (昭19.2.17.矢田部空にて)

 恵美は来なかった、待ったのに
 雨と風と、嵐の夜
 幾度も幾度も門まで行ってみた
 雨衣を浸らして、靴の中迄も、ずぶ濡れになった
 雨に打たれて眼が痛んだ
 恵美は来なかった、待ったのに
 十一時の鐘が鳴った
 見知らぬ人に見知らぬ宿に、連れて行かれて泣いてゐる恵美を思ひ浮かべた
 雨に打たれ、風に吹かれ、髪振り乱し心急がす恵美を思ひ浮かべた
 旅宿の一室に、明日逢はむと吾を想ひて、安らかに眠りにつく恵美を思った
 恵美は来なかった、待ったのに
 昨夜の嵐は夢のやうに、からりと澄んだ朝、門まで行ってみた
 二度、三度、見知らぬ人ばかり、楽しさうに話してゐた
 恵美は来なかった、待ったのに
                             
        (洲崎航空基地にて)

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