「死にたい」と書く女性たち 東京新聞

 神奈川県座間市のアパートから九人の遺体が見つかった事件を取材しながら、ずっと心に引っかかっていることがある。犠牲になった女性たちは、なぜネットの中の匿名の人々に苦しい心の内を打ち明け、容疑者に吸い寄せられたのか。「死にたい」「消えたい」・・・ツイッターには今もそんな言葉があふれる。取材の呼びかけに応じてくれた二人の女性に会いに、岩手県を訪ねた。(片山夏子)

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 待ち合わせたカラオケボックスに現れたのはほっそりとしたきれいな女性(27)だった。会社に勤めながら毎日のようにツイッターでつぶやく。「とっとと死にたい」「助けてください。生きていたくない」
 もし「一緒に死のう」と反応があったらどうするの。そう聞くと、「思わず手を伸ばしてしまいたくなる」と打ち明けた。「傷だらけでどしゃ降りの雨の中にいる時、差し伸べてくれた手が温かかったらその手を取ってしまうのと同じ」。そう例えて言う。「相手が悪人かは考えない。でも信頼しているのとは違う。苦しくて他が見えない」
 女性は周りとのコミュニケーションがうまくできず、「自分はいない方がいい」と感じてきた。会社での人間関係に疲れ、包丁を首に当てたこともある。匿名でできるツイッターこそが「自分の居場所」と感じている。
 事件を受け、米ツイッター社は自殺や自傷行為の助長を禁止した。政府はツイッターの規制も検討している。もし苦しみをつぶやけなくなったらどうなるのか。「死にたい気持ちは消えない。吐き出す居場所を奪われるだけ」

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 もう一人の就職活動中の女性(23)は笑顔の柔らかな人だった。事件に関する他の人のツイートに「少し前の自分なら・・・多分、この事件の被害にあっていたかもしれない」と書いた。
 幼い時から親とうまくいかず、学校ではいじめられた。毎日が苦しくてしようがなかったが、口に出せば周りから重いと思われるのが怖くて、家族にも友達にも言えなかった。
 痛みで生きている実感を感じたくて、リストカットを繰り返した。苦しさに耐えきれず、橋から飛び降りて背中や足首を骨折したこともあった。「死ぬのは怖い。でも砂のようにさらさら消えてしまいたい」。苦しみを吐き出せるのはツイッターだけ。「ここなら仮面をかぶらずにいられるから」
 ネットで知り合った相手に九州まで会いに行ったこともある。出口が見えない中で優しい言葉を掛けられると、「重い自分を受け止めてくれたと感じ、相手を一気に信じて依存してしまう。自分を相手に預けて言いなりになってしまう」。だから事件の被害者になり得たかも、と感じる。
 ネットの中のまだ見ぬ誰かに、救いやつながりを求める。女性がつぶやいた。「ほんの少し素直に自分が出せる場所があるだけで、何とかやっていけるんですよね」


追記】陰惨な事件の遠因だった背景の一つを解き明かしてくれたような気がする。「死」という言葉の意味がわからなくなってきている現状は哀しい。「死」とは「生」を知ること。

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