
椿
植木鉢の小さな椿が
今年も少し背のびをした
せいいっぱい両手をひろげた
萌えでた新芽は
五月の光のような碧いろ
風が笑っていた
64・5・9
たそがれの空に
あおむいて見あげたあたりから
地平線へむかって
少しずつ・・・・・・目立たないぐらい少しずつ
色を変えていく空がある
そして地平線は光のまじった灰色
そこにはもう梅雨がきている
風は
萌えひろがった若葉の匂いでいっぱいなのに
昔 書いたお伽話
梅雨晴れの
空の青さにこがれた娘が
ある日
空の青みに身を投げた・・・・・・
その梅雨晴れの美しい季節が
またかえってくる
娘はもういないのに・・・・・・
64・5・9>
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