北の大地から 永井和子詩⑭

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ44~45(大雪湖畔の自然林ー北海道・上川町)  春を待つ やがて樹々の葉の黄金色に地をおおい そのうえに銀色の雪がふる 熟れた木の実を土に貯えて やさしく銀色の雪がふる 夏の思い出と雪のぬくもりにつつまれて ねむる大地 ねむる とりやけものたち 春を待ちながら より美しいもの造るために より豊かなくらし造るために 人は、自然にたちむかってきたけれど ときには大地につつまれるやすらぎを 思い出してほしい より新しいものを造るために より快いくらし造るために 人は何かを壊してきたけれど ときには とりやけものたちの営みを みつめなおしてほしい 黄金色の山と銀色の雪と 冬のねむりと春を待つ憧れを

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北の大地から 永井和子詩⑬

「北の大地から」写真・さとうつねお、永井和子詩。ページ42~43(雪原のウサギの足跡(北海道・深川市)  雪の子守唄 雪が 雪が ふってくる雲のにおい 雪が 雪が ふりつもる風のにおい おしえてあげよう 野や森のけものたちの するどい鼻をわけてあげよう 野や森のけものたちと一緒に暮らせるよう オホ ルウ ハオ ホエ オホ ルウ ハオ ホエ 雪を 雪を おしのける山のうごき 雪を 雪を けしていく風のうごき おしえてあげよう 海や川のさかなたちの すばやい耳をわけてあげよう 海や川のさかなたちと一緒に暮らせるよう オホ ルウ ハオ ホエ オホ ルウ ハオ ホエ 雪は 雪は つみあがる空までも 春は 春は やってこないいつまでも おしえてあげよう 野や森のけものたちの 海や川のさかなたちと一緒に暮らせるよう オホ ルウ ハオ ホエ オホ ルウ ハオ ホエ

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北の大地から 永井和子詩⑫

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ40~41(札内川川原の化粧柳・帯広市)  化粧柳 札内川(さつないがわ)の川原には 春のなごりのたんぽぽが 一本二本咲いてます 川原いちめん枯れよもぎ 化粧柳のうすみどり 炭坑はつぶれて秋の風 札内川の川原には 夏のなごりのつきみそう 一本二本咲いてます 川原いちめん枯れおばな 化粧柳のうすみどり 風に追われて遠い街 沢内川の川原には 秋のなごりのこんぎく 一本二本咲いてます 川原いちめん銀の雨 化粧柳のうすみどり 街は原発 冬の風

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北の大地から 永井和子詩⑪

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ36~37(阿歴内の牧場ー北海道・阿茶町)  風の子守唄 地平線にむかって胸を張る     * アイヌネノアン アイヌエネネナ   風がわたしを駆けぬけて 凍るいのちに火をつける この大地に生まれて生きる 地平線にむかって駆けてみる アイヌネノアン アイヌエネネナ 風がわたしを追いぬいて 生きる勇気を投げてくれる この大地にむらを結ぶ 地平線にむかって歩いていく アイヌネノアン アイヌエネネナ 風とわたしと祖父(ちち)たちと 熱いいのちをうけついで この大地に歴史を刻)きざ)む *「人間らしい人間になれよ」という意味のアイヌ語です。

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北の大地から 永井和子詩⑩

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ32~33(静狩峠のクマザサー北海道・長万部町) 樹たちの声 オジロワシになって 空を翔んでみませんか かえで ぶなの木 だけかんば 緑の地図が見えますか 森の呼吸がわかりますか この大地が生まれた日から うたいつづけてきた樹たちの歌 あなたの心にひびきますか エゾヒグマになって 山を駈けてみませんか かしわ かつら木 ななかまど 錦のもようが見えますか 落葉の音がきこえますか この大地が生まれた日から うたいつづけてきた樹たちの声 奪われていく樹たちの声 あなたの心にとどきますか あなたの心 痛みますか

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北の大地から 永井和子詩⑨

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ28~29(小金湯のカツラ不動ー北海道・札幌市)  黄金色(こがねいろ)の雪 ひとりでは生きられないから あなたを愛したのよ この北の大地に 春が去り 夏が過ぎて 短いか秋 十勝の山に黄金色の雪が降る 前にしか進めないから 歩きつづけるのよ この北の大地に 陽が昇り 霧が流れ 広がる地平 十勝の山に黄金色の雪が降る 夢なしには歌えないから 旅をつづけるのよ この北の大地に 花が咲き 実を結び うけつぐ命 十勝の山に黄金色の雪が降る

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北の大地から 永井和子詩⑧

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子ページ24~25(豊平館=北海道・札幌市)    壊された風景 子どもだった頃 秘密の場所だった 白い西洋館 投げたテニスボールのように はずんだあの子の笑い声 とおりすぎた戦争に壊された板壁 つたかづらが残っていた 子どもだった頃 幼い恋だった 黄色い飾り窓 編んだおさげ髪がゆれて とぎれたあの子のさよなら とおりすぎた戦争に奪われた青春 つたかづらが茂っていた 子どもだった頃 たいせつな絵だった 古い西洋館 投げたボール ちいさな恋 消えたあの子の笑い声 とおりすぎた戦争に消された生命(いのち) つたかづらが赤かった

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北の大地から 永井和子詩⑦

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩永井和子。ページ22~23(昭和新山と白菜畠=北海道・伊達市)     土のうた こっぽり白い雪だべ 有珠山もくるまって見えるべ 白い煙をあげるのは昭和新山 胸の底までしみとおっていくべ 土の色 まっすぐな 百姓のの心 こっぽり青い空だべ 羊蹄山の峰が光ってるべ 白菜畑に陽光のさざなみ 腹のなかまでぬくもっていくべ この土 奪われて 百姓の涙 こっぽりまるい空だべ 目にしみるほど青いべ ほうれん草も麦も青くって 呼吸(いき)まで染まっていくべ この土 守らねば 百姓の怒り

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北の大地から 永井和子詩⑥

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子ページ18~19(日本海・冬の七里長浜(青森県・市浦村)   海の子守唄 海が青くなったよ さあ 網をつくろって 海が微笑(わら)ったよ さあ 銛の手入れして 海が青くなったよ さあ 舟を洗って 海が微笑ったよ さあ 舟を整えよう 海が青くなったよ さあ 戸を開け放って 海が微笑ったよ さあ 幸を招き入れよう 海が青くなったよ さあ いとしい妻よ 海が微笑ったよ さあ 子どもたちよ 海が青くなったよ さあ 舟を波うちぎわへ 海が微笑ったよ さあ 舟をこぎ出そう 海が青くなったよ さあ 春がかえってきた 海が微笑ったよ さ 春がかえってきた

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北の大地から 永井和子詩⑤

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ12-オンネトウと阿寒富士(北海道・足寄町=    水のうた キララキルル キラ サララサルル サラ ピチ パチ ピチ 命の水 銀の水 うまれてくるよ 柏の木にカラス一羽 キララキルル キラ サララサルル ピチ パチ ピチ 甘い水 銀の水 うたっているよ 楓林にノゴマの群 キララキルル キラ サララサル サラ ピチ パチ ピチ 金の水 銀の水 いつまでも 樺のかげからキタキツネが

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北の大地から 永井和子詩④

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ10~11ーエゾマツに交るモミジー(北海道・足寄町)   エゾ松とエゾシカ エゾ松の森をいくのは だれ あれはエゾシカ 耳を立てて 萌えでた新芽を摘みながら 春の森をかけぬける 遠くかすんでいる大雪の山やま 白樺のかげに立つのは だれ 若いエゾシカ 頭をかしげ やさしく囁やきかわしながら 夏の森をかけぬける 花があふれている大雪の山やま 粉雪の朝に死んだのは だれ 白いエゾシカ 弾丸(たま)にうたれ かわいい子ジカを呼びながら 青くはぎしりする大雪の山やま

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北の大地から 永井和子詩③

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ8~9、釧路湿原(北海道・釧路町)    釧路湿原 タンパララン タンパラン 赤い夕陽が落ちていく 釧路湿原 三日月 うねって光る釧路川 月に嘆いてタンパラン ヤチボウズが躍ります タンパララン タンパラン 乾いていくよ葭(よし)の波 釧路湿原 二十日月 ヤチハンノキの青い影 川が消えますタンパラン ヤチボウズが躍ります タンパララン タンパラン 赤い帽子の鶴がくる 釧路湿原 昔(むかし)月 とりやけもののこの世界 守っておくれよタンパラン ヤチボウズが躍ります

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北の大地から 永井和子詩②

「北の大地から」写真・さとうつねお、詩・永井和子。ページ2~3 十勝平野(北海道・鹿追町) 大地の唄 穴をうがち 大地を刻んで ひとは家を造った 石を積み  大地に逆らい ひとは暮しと都市(まち)を築いた 果てないひとの夢を おおらかにうけいれてくれた大地 まるい大地 みどりの地平線 空が広がり 風が流れていく やさしい暮らしとまちをつくろうよ 川を動かし 大地を変えて ひとは奪いつづけた 山を削り 大地を乾して ひとはたいせつなものを喪くした 果てないひとの欲を きびしくみつめてきた大地 まるい大地 みどりの地平線 空が広がり 風が流れていく すこやかな暮らしとまちをつくろうよ

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北の大地から 永井和子詩①

故あって、東京から北海道に移り住んでほどなくの頃と思われる。詩人の永井和子さんが雄大な「北の大地」の写真に添えた詩の数々がこれ。写真はさとうつねおさん。1990年10月10日発行とある。満州っ子にとっては「北の大地」といえばあの広大な中国東北部としか思い浮ばなかったが・・・。 ▼この写真・詩集の表紙  「永井和子さんの詩と、さとうつねおさんの写真は、もう6~7年前から『建築とまちづくり』誌上で合唱しているが、この北海道シリーズが最もよくハモっているようだ。これが一冊の本になるのはうれしい」と京都府立大学生活科学部の本多昭一教授が「あとがき」に書いている。  本ブログでは46頁にわたる本書を順次紹介していこうと思うが、なにせカラーであっと息をのむような雄大な光景の移り変り(二面に連なる描写もある)と添えられた珠玉の言葉をどうマッチさせるか先が思いやられるが、とにかくすすめてみよう。      <ミニ・プロフイール> ●ながいかづこ1934年 大阪市生まれ 1957年 慶応大学卒業 機関紙集・・・・・・「ロ号33番」「沖縄詩集」「約束」           「続沖縄詩集」「終わりから始まる歌」           「戦争のなかの馬たち・他」「旅の門」           「十二月のわらべ歌」 ほか多数 ●さとうつねお1934年 青森市生まれ 1958年 桑沢デザイン研究所卒業 1988年 写真展「火の見櫓の詩」「しだれ桜の宴」 1990年 「水」ガラス…

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